「何か大きな成果を出したい」「この目標は絶対に成功させたい」と思っているなら、明確な信念を持ち、それをぶらすことなく突き進んでいくことで、目標達成に近づけるかもしれません。どの分野でも一流の業績を残した成功者は明確なビジョンを描いています。
困難は目標への通過点
1981年に孫正義氏は福岡の小さな町で、二人のアルバイトと共に会社をスタートしました。設立当初から電話関連の仕事をしていたのではありません。最初はポケットコンピューターやゲーム関連の事業を行っていました。この分野から始めた理由は、孫社長は「大学在学中に1日のうちの5分間を発明の時間に充てる」という日課を定め、それらのうちで特許をとれたもの等を製品化していったからです。 まだ十分な設備が整っていない中で、孫社長はミカン箱の上に立って次のように鼓舞しました。
「30年後には1兆、2兆という数の単位で仕事をする規模の会社になる」
(引用元:「働く君たちへ」孫正義)
なぜそのような現状とかけ離れた発言ができたかというと、今後コンピューター業界が成長するという確信があったことに加えて、
「デジタル情報革命で人々の生活を幸せにする」
(引用元: 同上)
という強い信念があったからに他なりません。
電話事業に乗り出してしばらく後、孫社長はもっとつながりやすい電波環境を実現させるために基地局数を増やしたいと考えました。当時でも既に国内の98%のユーザーが利用できる電波環境を実現していたため、たった2%のユーザーのために新たに基地局を増やすのは経営的に見て採算が合わない、と当然ながら周囲の役員の大反対にあいます。 しかし、孫社長は「電話は全ての人がつながらなければ話にならない」と反対を押し切り、基地局数を2倍にすることで99%のカバー率に引き上げ、残りの1%に対しても個々に対応し、ユーザーの満足に貢献しました。 これは人々の幸せを第一に考えた、強固な信念があったからこそできた行動といえるでしょう。
このように、ビジョンが明確であれば、難題にぶつかっても一貫した行動がとれるようになります。
現状と理想との距離に気づく
株式会社ローソンの前社長である新浪剛史さんはハーバード大学でMBA(経営学修士)を取得し、帰国後に食品関連の企業で売り上げを10倍に伸ばしました。その後、株式会社ローソンの社長に抜擢されました。当時は社長がすべてを決めるべきと考えており、極端なトップダウンの経営を行いました。 しかし、その結果、多くの社員からの信頼を失い、大きな挫折を経験するのです。そこで新たなやり方を模索する中で、次のような考え方に切り替えました。
社員が考える企業を創る。考えるのは社員、自分は熱い言葉で社員を鼓舞する。
(引用元「プロフェッショナル, 仕事の流儀」)
コンビニ業界は、競合店舗の増加によって売り上げが落ち込み始めています。新浪社長はこのままでは目標としている状態(ビジョン)を実現するのは難しいと痛感していました。しかし危機感をいだいて抱いているのは経営陣のみで、全社員に意識改革を行う必要があると感じました。 そのためにフランチャイズ店舗のオーナーと異例ともいえる直接の話し合いの場を設け、意思疎通を図ることで会社の雰囲気を変えていきました。単なるトップからの命令ではなく、危機意識を共有するこtで、各オーナーが自ら動くような環境を整えていったのです。結果としてさらなる店舗数の増加や、売り上げの増加に結び付いています。
ビジョンが明確であることによって目標到達点と現在地との距離を把握でき、素早い行動ができるようになります。
*** いかがでしたか。 上記の例のように、明確なビジョンが行動の指針となり、日常の意思決定を助けてくれます。なにか成し遂げたいことがあると思っている事がある方は、ビジョンの重要性をよく認識し、成功者の体験と自らの行動を照らし合わせてみてください。 実現の可能性がグッと高まるかもしれません。 引用文献
孫正義 働く君たちへ: 「腹の底からの思い」を語ろう|孫正義 著|三笠書房 2012年刊
「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK