「覚えたい」と意識しすぎるのは逆効果!? 記憶力を強化する3つのワザ。

なかなか覚えられない……。せっかく覚えたのに思いだせない……。そんなふうに自分の記憶力に対して自信をなくしている方に、『脳が認める外国語勉強法』の著者であるガブリエル・ワイナー氏からのアドバイスと、最新の研究から得た耳寄りな情報をご紹介します。記憶力アップには、必死に覚えようとすることよりも、「忘れない意識」と「思いだそうとする行為」が必要かもしれません

脳には大量の情報が流れ込んでいる

わたしたちには目、耳、鼻、舌、皮膚などの感覚器があります。順天堂大学医学部教授の坂井建雄氏によれば、その感覚器からの情報を受け取り、処理するために中枢神経系の前方部が膨らみ、「脳」が生まれたのだとか。そして、その感覚器が受け取る情報は、以前の研究により毎秒1,100万ビット以上だと考えられています。パソコンの64ビット・32ビットという数値を考えると、これはあまりにもケタ違い。

もちろん、その中で意識できることは“ほんのわずか”ですが、わたしたちの脳に莫大な量の情報が流れ込んでいるのは確かです。そう聞くと……、その状況で何かを覚えるという行為自体が無謀に思えますね……。でも、ある特定の「意識」と「習慣」で記憶力は強化できそうです。

忘れないようにする意識

ドイツのルール大学ボーフムと大学病院の研究者らは、外科治療計画のため脳に電極を埋め込んでいた患者の脳活動を測定しました。すると、人が何かを忘れようとするとき、脳の「前頭前野」によって「海馬」の活動が制御されると示されたそうです。(2018年9月6日にCurrent Biology誌オンライン版にて公開)

この研究は、人間が自発的に何かを忘れたいときに、脳内でどのようなことが起こるか分析するために行われました。脳に電極を埋め込んだ22人の参加者に対したくさんの単語を提示して、覚えておいたり、忘れたりするよう頼んだそう。しかし、注目したいのは研究の目的そのものではなく、その中で示されたことです。

それは、参加者が、覚えるべき言葉よりも、「忘れないようにした言葉」のほうが、より覚えられていたということ。海馬は脳の記憶に関わる場所であり、前頭前野は意識の中枢ともいわれています。忘れようとする意識で脳が変化するように、「忘れない意識」によってもある一定の状況が生まれるというわけです。

「思いだそうとする行為」の繰り返し効果

また、『脳が認める外国語勉強法』の著者であるガブリエル・ワイナー氏によると、いまにも思いだせそうな瞬間は記憶にとって最適なのだそう。その理由は、「うーん、もう少し、ここまで出かかっているのに……」と、必死で思いだしたいワードを頭の中で検索し始めると、脳の扁桃体が“生死にかかわる事態が起きた”と勘違いするからなのだとか。

扁桃体は、感情の動きにともなう出来事に関連付けられる記憶において、主要な役割をもつ脳の領域。探している単語が見つかった暁には、生死にかかわる緊張から解放されるわけですから、強烈な記憶として残るということです。

筆者も実際にできるだけ忘れた言葉をすぐにネット検索せず、自力で思いだすようにしていますが、それで思いだしたワードはほぼ忘れません。

ちなみに、そこで生じる「何度も脳に命の危険を経験させてストレスにならないのか?」という疑問に対してガブリエル・ワイナー氏は、「おもしろいと感じるものにすればいい」と述べ、「忘れる直前に思いだそうとすれば刺激的な挑戦になるので、思いだす行為をおもしろくする」と続けています。

記憶力を強化するためのワザ

これまでのことを踏まえると、記憶力を強化するためのワザは次のとおり。

1.新しい情報をインプットした際、「これは忘れていい」「これだけは絶対に忘れない」を区別して意識する

実際にやってみると、不思議なことに「覚えたい!」という意識よりも、「忘れたくない!」という切実な思いをもつほうが本当に忘れにくくなります。前項の実験から推測すると、“前頭前野が海馬の活動を邪魔しないために覚えられる”と考えられますが、「忘れたくない!」という強い意識が、扁桃体に“生死にかかわる事態が起きた”と勘違いさせている可能性も想定できますね。

2.思いだせないワードをネット検索せず、自分の力で思いだす習慣をつける(急を要しない場合)

「まさにそこまで出かかっているのに、どうしても思い出せない!」というとき、頭文字が分かると思いだせる可能性が高くなります。したがって、「あいうえお」から「わをん」までの五十音を、思いだしたいワードのイメージに並べながら頭の中で検索すると思いだしやすくなりますよ。

3.「先日読んだ本の内容、なんだかもう忘れそう」というタイミングで、内容を思いだそうと頭をめぐらせる

最近、あるいは過去に読んだ本や参考書などの内容をすぐに想起できないときは「チャンス」と思い、自分の頭の中でサーチを開始してみましょう。

なお、2と3において、その間は周囲に注意を払いにくくなるので、安全面から自宅における入浴時や就寝直前などに行うのがおすすめです。

*** 「絶対に忘れない!」「思いだしたい!」と人間の本能に訴えることで記憶力アップが期待できそうです。ぜひお試しください。

(参考) Ruhr-Universität Bochum|Newsportal|So vergisst das Gehirn mit Absicht Medical News | Medical Articles|Study analyzes what happens in the brain when humans forget something on purpose ダイヤモンド・オンライン|脳が認める外国語勉強法|○○を経験すれば記憶力が倍になる 松尾形成外科・眼瞼クリニック Matsuo Oculoplastic Surgery Clinic|まぶたを開ける目的 Wikipedia|扁桃体 坂井建雄著(2012),『面白くて眠れなくなる人体』,PHP研究所. トール ノーレットランダーシュ著,柴田裕之訳(2002),『ユーザーイリュージョン―意識という幻想』,紀伊國屋書店.

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