私たちの人生に、不安な気持ちはつきものです。特に、日々多くのことを抱えている社会人ならなおさら。今取り組んでいる仕事が上手くいくかどうか職場で不安感を募らせたかと思えば、家では自分の人生設計に頭を悩ませる……。本当に、毎日は不安になることであふれていますよね。今回は、不安な気持ちとの向き合い方や、不安を取り除く方法を、心理学的な視点からご紹介します。
不安を解消する方法は「不安な気持ちを解消する5つの方法。ストレス・イライラ・焦りを手放そう」でも詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
不安をため込んでしまう人の考え方の特徴
不安な気持ちは誰の心にも表れます。不安になるのは現代社会において仕方ありません。不確定要素の多い現代で、不安な気持ちが生じることはいたって普通のことです。
重要なのは、生まれた不安を取り除けるかどうか。そして、不安をため込んでしまう人の考え方には、ある特徴があります。不安にとらわれがちな人の特徴とは、不安なことについてくよくよと考えつづけてしまうということ。
皆さんは不安な気持ちが生じてしまったとき、不安感や不安の原因について長々と考えつづけてしまってはいませんか? 不安について考えつづけてしまうのは、不安を引きずりがちな人のよくない特徴です。
人間は、世界を自己投影によって認識しているといわれています。気分がよいときは世界が明るく期待に満ちているように見える一方、気分がよくないときは世界が暗く見えてしまうもの。不安なことばかりをずっと考えていると、見えている世界も暗く不安なものとなってしまい、不安を取り除けず、負の連鎖が発生するのです。
では、不安な気持ちを取り除くためにはどうしたらよいのでしょうか。やることは意外と簡単です。
- 不安な気持ちを正しく把握する
- 不安な気持ちから距離を取る
「把握する」「距離を置く」という2つのステップで、不安を和らげる、あるいは取り除くことができます。具体的なやり方をご説明します。
不安な気持ちを正しく把握する
ちょっとしたことがきっかけで漠然とした不安に襲われることはありませんか? 「よくわからないけれど、やたらと不安な気持ちにさいなまれる」というときの対処法が、「不安な気持ちを正しく把握する」こと。不安な気持ちを把握する具体的な方法を2つ紹介します。
不安を把握する方法1:不安な気持ちを言語化する
友人に悩みを打ち明けたところ、話し終える頃には気分が楽になっていた、という経験はありませんか? 不安や悩みを言語化することには、心的ストレスを和らげる効果があります。さらに、不安を言語化することは身体の免疫機能を高める効果もあるのだそう。不安を感じた際は、文字として書き出してみたり友人に話したりすることで、不安を言語化してみましょう。
あなたが不安を感じやすい性格なら、毎日日記をつけ不安に思ったことを書き出すことで、日々を快適に過ごせるかもしれません。10分程度でよいので、一日のうちのどこかで時間を取り、日記を書いてみましょう。毎日少しずつ不安を吐き出していけば、不安をため込むことがなくなります。
不安を把握する方法2:フォーカシング
フォーカシングとは、臨床心理学者のユージン・ジェンドリンにより明らかにされた心理療法です。フォーカシングは、不安な気持ちにあえてフォーカスすることで不安を和らげるというもの。手順は以下の通りです。
- 感じている不安な気持ちを心の中で思い浮かべ、不安の位置する場所や大きさをイメージする
- イメージした大きさを元に「身体の〇〇の部分に直径〇〇cmぐらいの不安の塊があるんだな。」と、心の中で何度もつぶやく
- 次第に不安な気持ちの大きさが縮んでくる。縮んだことを感じたら、さらに1.~2.を繰り返す
- 不安な気持ちを感じなくなるまで 1.~3.を繰り返す
本当に不安がなくなるのか信じがたいかもしれませんが、フォーカシングは立派な心理療法。感情というものは、「感じ尽くす」ことで自然と薄れるもの。感情の特徴を利用し、あえて不安な気持ちにフォーカスして不安を感じなくさせるのが、フォーカシングなのです。上で紹介した「言語化」も、一種のフォーカシングかもしれませんね。
不安な気持ちから距離を取る
最後にご紹介するのが、「不安な気持ちを遠ざける」という方法です。不安感と距離を取ることができれば、自己投影によって世界が暗く見えてしまうことがなくなり、心に落ち着きを取り戻すことができます。
不安な気持ちを遠ざける具体的なやり方とは、マインドフルネス瞑想です。マインドフルネスとは、一言でいうと「今、ここで起こっていることに適切に気づく」という概念。自分の感覚に集中し、浮かんでくるあらゆる感情を排することで、不安な気持ちを遠ざけることを目的とします。手順は以下の通りです。
(1)背筋を伸ばしてイスに腰掛ける。または座布団に胡坐をかいて背筋を伸ばす。手のひらを上向きに重ねて体の前にそっと自然に置く。
(2)目を閉じて、ゆったりと深い呼吸をする(大きく呼吸する必要はない)。
(3)鼻先を一点を意識して、空気が入ったり出たりするのを感じながら呼吸を続ける
(4)さまざまな思考が浮かんできたら、そのたびに鼻先に意識を戻す。座禅のように「無になろう」と頑張る必要はなく、思考が浮かんだら、「あ、~~について考えた」と気づいて、鼻先に再度意識を戻せばOK。
(5)強い思考が浮かんで鼻先に意識を戻すのが難しくなったときには、空気が入ったお腹が膨らみ、空気が出て行くときにへこむ感じを意識する。
(6)これを5分から10分程度繰り返す(時間が許す限りやってもOK)。
(引用元:サライ.jp|不安や緊張がスルッとほぐれる!簡単マインドフルネス瞑想の6つのポイント)
マインドフルネスを行って一時的にあらゆる感情から距離を取ることができれば、不安な気持ちが少しは楽になるはずです。マインドフルネスを一日に数回行えば、不安や心配を感じることが少なくなり、以前よりもリラックスできるようになるでしょう。
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ずっと不安を抱え込んでいると、心はおろか体までもむしばまれてしまう恐れがあります。心身のバランスを崩さないよう、本記事で紹介した、不安との向き合い方・取り除き方を実行し、実生活に活かしていただければ幸いです。
(参考)
協会けんぽ健康サポート|ストレスは、心と体に影響を及ぼす
タウンワークマガジン|漠然とした将来への不安とどう折り合いをつける?(名越康文)
サライ.jp|不安や緊張がスルッとほぐれる!簡単マインドフルネス瞑想の6つのポイント
Naoya Inoue Official Site|不安感を解消する方法!心のプロが実践する不安を取り除く対処法【実践編】
アゴラ|心配事、不安、悩みは、文字化して解消しよう!
Harvard Business Review|毎日10分の日記をつければ、人は成長する