「本音を引き出せる人」と「全然答えてもらえない人」は何が違うのか?

哲学的対話術01

みなさんは、対話や議論の場で、相手からうまく意見を引き出せているでしょうか? 視野を広げ、発想を豊かにするのに有効なもののひとつが哲学です。議論がぐっと活発になる、哲学質問術をご紹介しましょう。 

たいていの質問は「誘導尋問」

たとえば、同僚に「職場についてどう思っているのか」を聞くとしましょう。しかし、このままでは、ぼんやりしていて答えづらい質問ですよね。そこで、「いまの職場は快適だと思いますか?」と質問を変えてみます。

でも、この聞き方では、相手は「はい」か「いいえ」の二択でしか答えられません。あるいは、さらに具体的に「職場をもっと快適にするにはどうしたらいいと思いますか?」と聞くとして、相手が現状に不満をもっていなかった場合、本当に相手の意見を聞けていることになるでしょうか。

たいていの質問は、無意識のうちに「こう答えてほしい」という願望の入った誘導尋問になりがちなのです。では、どうすればいいのでしょうか。

哲学的対話術02

哲学質問術とは

この誘導尋問を崩してくれるのが「哲学」です。

最も重要なのは、「思い込みを捨てること」。哲学は、「私は私だと思い込んでいるけれど、そもそも私って何?」「当たり前のように “幸せ” と言うけれど、そもそも幸せって何?」というように、思い込みや当たり前を疑うところから出発します。

先ほどの質問例では、「みんな職場に不満を持っているだろう」「相手もいまの職場を快適でないと思っているだろう」という思い込みが透けて見えています。

哲学を活かした質問術では、これらを取っ払って「職場について相手が思っていることをなんでも聞く」という姿勢が必要になります。

哲学的対話術04

二択を脱却する

まず、「AかBか」しか答えられない質問を崩していきましょう。二項対立を崩す哲学の考え方に「脱構築」があります。

「男」と「女」を例として考えてみましょう。それぞれ一般的に言われがちな特徴を挙げると、「男は女と比べて力が強い」「女は男と比べて上品」などがあります。しかし、なかには力の強い女性もいますし、立ち居振る舞いが上品な男性もいます。このように、一方の特徴がもう一方にも含まれることを指摘し、対立しているように見えるふたつが、じつは分離不可能だという気づきを得るのが脱構築です。

この考え方を活かすと、「AかBか」の質問に隠れている思い込みを発見できます。二択の質問をしたいときには、そのまま質問するのではなく、質問相手と対話しながら脱構築の手順を辿ってみましょう。

  1. 「A」と「B」それぞれの特徴を挙げる
  2. 「A」の特徴が「B」にも、「B」の特徴が「A」にもないか考える
  3. 「A」でも「B」でもない新たな選択肢が見えてくる

脱構築で、「職場の環境は開放的なほうがいいか、閉鎖的なほうがいいか」という問いを崩してみましょう。

まず、「開放的だと話しやすい」「閉鎖的だと気詰まりだ」などの特徴を挙げます。次に、挙げた特徴を吟味すると「閉鎖的だと人と人との距離が近くて話しやすい」「開放的だとまわりの目が気になる」などと言えますね。すると、選択肢は「開放的」と「閉鎖的」だけではないことがわかります。

ここから状況に応じて、「集中できる個人デスクとオープンスペースを組み合わせたオフィス」「チームがひとつのデスクを共有する距離感の近いオフィス」などの新しいアイデアが生まれてくるのです。

哲学的対話術03

「こう答えてほしい」をなくす

では、「相手はこう思っているだろう」という思い込みを捨てる質問はどうでしょう。

コンサルティングを手がける哲学者の吉田幸司氏は、著書『「課題発見」の究極ツール 哲学シンキング 「1つの問い」が「100の成果に直結する」』(マガジンハウス)で、哲学を活かした質問術を紹介しています。吉田氏の質問術は、「こう答えてほしい」という「シナリオ」を捨てるのに役立ちます。以下でご紹介しましょう。

1. 問いをつくってもらう

「問う側だけで質問をつくる」ところから、視点の狭まりが始まっています。「職場について私に質問してみてください」「職場について、議論できることを思いつくだけ挙げてください」のように、問いをつくってもらうことで、相手自身の視点を浮き彫りにできます。

2. 極端な例を出す

自分も相手も、思い込みにとらわれているかもしれません。答えが想定できない極端な例を出して、思考をゆさぶりましょう。

「もし、デスクが全部消えたら?」「もし、部署が自分ひとりになったら?」などのような、突飛な問いをきっかけに、視点をがらりと変えてみてください。

3. 聞きたかった問いは途中で挟む

もし、本当に職場の快適さを聞きたかったら、1や2のようなやり取りを挟んだうえで、たくさんの質問のひとつとして尋ねましょう。単体で聞くと誘導尋問になってしまいますが、ほかの質問に紛れ込ませることで、バイアスなく本音を聞き出すことができます。

吉田氏は、「問いにはコンテクストがある」と言います。同じ「いまの職場は快適だと思いますか?」という質問でも、「もし、〜なら?」などのほかの方向からの質問や、さらには脱構築などを経たうえでの「いまの職場は快適だと思いますか?」なら、答えはシナリオ通りにはなりません。あえて回り道をすることで、答えのバリエーションが大きく膨らむのです。

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哲学と言うと、一見とっつきづらく思えますが、大事なのは「思い込みを捨てること」これだけです。哲学を活かした問いかけで、停滞していた議論を活発にしてみましょう。

(参考)
吉田幸司(2020),『「課題発見」の究極ツール 哲学シンキング 「1つの問い」が「100の成果に直結する」』, マガジンハウス.
webちくま|はじめての哲学的思考 苫野一徳|第1回 哲学ってなんだ?
webちくま|はじめての哲学的思考 苫野一徳|第6回 「問い方のマジック」にひっかからない
Wikipedia|脱構築
BRAVE ANSWER|ポストモダンの代表、デリダとは?脱構築とは?

【ライタープロフィール】
梁木 みのり
早稲田大学文化構想学部在籍。福岡県筑紫女学園高校出身。高校時代から文芸部に所属し、小説を書いている。現在大学では、文芸・ジャーナリズム論系に進むためテクスト論を中心に日々勉強中。

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