我慢しすぎると “怒りのターゲット” にされやすい。「手書き習慣」でロジカルに言い返せる人になろう。

パワハラを我慢01

「上司がキレやすく、ストレスだ……」
「毎日理不尽なことで怒られて、もう耐えられない……」
「自分を否定するようなことを言われて傷ついた……」
このように、職場で「やたらと怒る人」に悩まされている人も多いのではないでしょうか?

「むやみに言い返して相手を敵に回したくない」「波風を立てたくない」と思ってしまうのは当然のこと。でも、黙って我慢するのは正解なのでしょうか? 

今回は、怒る人たちへの対処方法についてご紹介します。快適な毎日を送るためにも、ぜひ参考にしてみてください。

職場の人間関係で「我慢」することの危険性

「怒る人」は、どこの職場にもきっと存在するのだから、我慢するしかない……。そう思っている人は多いことでしょう。調和を重んじる傾向のある日本人は特に、つらいことを「我慢する」方向に走りがち。しかし、人間関係のストレスを「我慢」だけで対処すると、大きなデメリットが生じます。

長年、自衛隊メンタル教官を務め、現在は「予約の取れない人気カウンセラー」として活躍する下園壮太氏によると、我慢は仕事やその人のパーソナリティーにまで悪影響を与えてしまうそう。

我慢をすることは、エネルギーを激しく消費し、疲労を増加させます。そして「なんで私ばっかりこんな目に……」と被害者意識が強くなり、警戒心も高まることに。さらに、我慢を通して自分の感性を否定することになり、自信が低下しまうのだとか。

そんな状態でいては、仕事のパフォーマンスが下がり、職場の人間関係まで悪化してしまうであろうことは簡単に想像できますよね。他人の怒りによって、自分を犠牲にしないためには、どうすればよいのでしょうか? 

パワハラを我慢02

「怒る人」に我慢していると、余計にターゲットにされる

前述した通り、特に日本のビジネスパーソンの中には、我慢することが習慣になっている人が多くいます。我慢ばかりして自分を犠牲にしないためには、「言い返すこと」「自分も怒ること」が大切です。

「そんなこと、できるならとっくにやっている!」「相手に恨まれたり、余計に当たりが強くなったりするんじゃないか」と思うかもしれませんが、そう思う人ほど「怒る人」からターゲットにされやすいのです。

脳科学者の中野信子氏は、著書『キレる!』の中で、攻撃してきた相手に上手に怒り返せない人は「いいカモ」であり「搾取される」人であると説明しています。

真面目で愚直な人には無理難題を押し付ける上司が、必ず何か言い返してくるような面倒な部下には、あまり無理なことは言わなくなるということがあるのではないでしょうか。黙って自分の要求を受け入れるタイプかどうか、相手を選んでいるのです。

(引用元:中野信子(2019),『キレる!』,小学館新書.)

怒らずに我慢するという行為は、美徳にも感じられますが、その美しく見える行為こそが搾取される原因になっている場合もあるのですね。中野氏は、何か不条理なことを押し付けられそうになったり、怒鳴られたりしたときは、自分の立場を守るために、はっきりと言い返す必要があると述べています。

たとえば、「前からお伝えしていた通り、今日は◯時までに上がる必要があるので、そのタスクは今日中には対応できません」と、必要に応じて自分の状況をきっぱり伝えたり、「怒鳴らないでください」とはっきり言ったりすることで、相手に「こいつは支配するのが難しそうだ」「ターゲットにするには厄介」と思わせられるのです。

パワハラを我慢03

上手に言い返すためには「自分を大事にする」習慣をつける

自分を大事にするということは、体をいたわる以外にも、「怒る人」たちに適切に言い返して「自分の心を守る」ということも含まれます。それができるようになるためには、思考力を鍛えておく必要があります。

心理学者・臨床心理士の植木理恵氏によると、思考力が低く、物事を深く考えられないと、さまざまな弊害が出てくるそう。

たとえば、上司から「お前は何をやってもダメなやつだ!」と理不尽に怒鳴られたとします。その際、思考の浅い人は「こんなことを言われるなんて、自分は無能に違いない」「自分は本当にダメな人間なんだ」などと短絡的な考えをし、ストレスをためるだけで終わってしまうでしょう。

しかし、深く考えられる人は「なぜこのような発言をするのだろう?」「この人は自分には何を言っても許されると思っているのだろうか?」「この人の真意を確認しよう」「暴言を阻止しなければ」と思考の層を重ね、改善へ向かうことができるのです。

黙って泣き寝入りすることなく、「それはどういう意味ですか?」「もう少し落ち着いて話していただけますか?」などときちんと切り返す習慣をつけましょう。慣れないうちは難しいかもしれませんが、言い返さずにただ傷ついたままにしておくことは、ストレスの原因になりかねません。「なぜ傷ついたのか」「どうすれば傷つかずにすむだろうか」ときちんと考えることが大切です。

では、思考力を上げるには、どうすればよいのでしょうか。東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太氏によると、手書きで文章を書くという作業が、思考や創造性を担う脳の前頭前野を活性化させてくれるそうです。その部分が活性化すると、感情が抑制されるため、客観的になれるのだとか。

忙しいときこそ時間をつくって、今抱えている疑問心の引っ掛かりを紙に書き出してみましょう。「自分さえ我慢すれば丸く収まると思っていないだろうか?」「傷ついていないフリをしているけれど、本当は心にしこりができているのではないか?」など自分自身に問いかけてみるのです。

書いたメモを眺めることで、問題を客観視できるようになり、思考の浅さからくる短絡的なマイナス思考に陥らずにすみます。メンタルを強くしておくことで、次に理不尽に怒られたとき、うまく切り返せる余裕がでてくるでしょう。

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「怒る人」は、言い返さない人を選んで攻撃している場合が多いもの。ターゲットにならないためにも、自分自身を守る術を身につけましょう。

(参考)
AERA|人間関係で“我慢”はNG 脱するポイントを元自衛隊メンタル教官が解説
中野信子(2019),『キレる!』,小学館新書.
プレジデントオンライン|緊急チェック!「あなたの思考は、深いか浅いか」
東洋経済オンライン|スマホが脳の発達に与える無視できない影響
e.x.press|NICT、ヒトの協力行動における前頭前野の機能を解明

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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