中国古典『菜根譚』から『嫌われる勇気』まで――成功者を成功者たらしめた愛読書たち。

一流の成功者たちの愛読書01

どんな人であれ、心のどこかで「一流になって成功を手に入れたい」と夢見ていることと思います。

そこで今回は、実際に成功者となった人々の「愛読書」に注目してみました。いったいどんな本を読んで知識をつけてきたのかその類まれな感性はどんな本から手に入れたものなのか。少なからず私たちの成長のヒントになることでしょう。

成功者を成功者たらしめた本とは……?

【1】脳科学者・茂木健一郎氏の愛読書は『ナニワ金融道』

「本」といいつつ、いきなり漫画が登場します。漫画家・青木雄二氏の代表作である『ナニワ金融道』を何度も読み返してきたと語るのは、脳科学者として数々の著書があり、テレビなどにも多数出演している茂木健一郎氏です。

ナニワ金融道 1

ナニワ金融道 1

  • 作者:青木 雄二
  • CoMax
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人間くささをここまで深くえぐり出した作品はそう多くはないはずです。人間の欲や情が金と結びついたとき、建前ではない本音の部分が引きずり出される。作者の青木雄二さんに脱帽です。

(引用元:プレジデント・オンライン|茂木健一郎がナニワ金融道を読み返すワケ

「漫画が役に立つの?」と疑問を抱く人もいるでしょう。しかし、人間の欲望や汚い部分が描かれているこの漫画から、茂木氏は、どんなにテクノロジーが発展しても、人間を本当に理解しているのは人間だということを学んだといいます。

ナニワ金融道は、商業都市大阪を舞台に、主人公の営業マン灰原達之と、それを取り巻く金融業界の表と裏の人間模様を描いた社会派漫画です。社会の裏側や闇についての描写が多く、そんな世界の人々の生き様やポリシーが随所に描かれています。

この漫画に数ある名ゼリフのひとつに、「地上げ屋にとってただひとつの武器は「誠心誠意」や どんな状況でも当てはまることやけどな」というものがあります。地上げ屋というあくどいイメージの職業においても、結局は素直にお願いをするのが一番使える武器だと、登場人物である地上げ屋のキャラクターはいうのです。

「ビジネスにおいて、隠された人間の欲望や人間くささを理解するのはとても重要なこと」だと、茂木氏は述べています。相手は何を望んでいるのか、いったい何を考えているのか。ビジネスは人間の間で成り立つものであるがゆえ、人間を知るという部分にビジネスの本質があります。それを『ナニワ金融道』は教えてくれるのかもしれませんね。

【2】松下幸之助氏や田中角栄氏らの愛読書は『菜根譚』

菜根譚』(さいこんたん)は中国の古典で、日本語訳もされている思想書です。人や自然などに関する教えを説く内容となっています。松下電器産業(現:パナソニック)の創業者である松下幸之助氏をはじめ、田中角栄氏野村克也氏などといった多くの成功者たちはこぞって、この本を愛読書に挙げています

菜根譚 (岩波文庫)

菜根譚 (岩波文庫)

  • 作者:洪自誠,今井 宇三郎
  • 岩波書店
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この本が成功につながる理由は、どこにあるのでしょうか。中国古典に精通する第一人者として有名な、著述家の守屋洋氏は、その要因を次のように解説しています。

実は『菜根譚』には、ほかの古典にはない大きな魅力があるのです。

それは、儒教と道教と仏教、この3つの教えの上に立って、人生の知恵、処世の道を説いていることです。こういう本はほかにありません。

(引用元:東洋経済オンライン|名経営者がこぞって読む「菜根譚」の秘密

人の上に立ち成功するためには、誰よりも人間関係というものを理解しなければいけません。そして、まさにこの本から、人との関わり方を学ぶことができるのです。

たとえば、「水清ければ魚すまず」ということわざ。「正義を貫き何事にも厳しい目を向ける完璧主義は、組織をまとめることができない」と、この本では説いています。いかなる失敗も許さず、常に高すぎる水準を周囲に要求していては、人はやがて離れていってしまいます。時には寛容さが必要な場面もあるのです

またこの本は、自己啓発の面でもいくつもの教えを説いています。たとえば、「いかなる失敗や不運であっても、反省をきちんとする人にとっては、そのすべての経験が自らを向上させる栄養である」という教えがあります。前述の「水清ければ~~」の教えのように、時には寛容さも必要ですが、すべてをなかったことにするのではなく、次につながる経験として活かすことが大切なのです

『菜根譚』には、厳しい世界での人との関わり方や、それを踏まえたうえでの成功の秘訣が書かれています。儒教・道教・仏教という3つの宗教を踏まえて、一流としての正しい価値観を学べる本は、ほかにはありません。

【3】ユーグレナ代表取締役・出雲充氏の愛読書は『嫌われる勇気』

雲の上の成功者でも、古い書物ばかりを読んでいるわけではありません。3つめの愛読書として取り上げる『嫌われる勇気』は、株式会社バトンズ代表で数多くのベストセラーを手がけている古賀史健氏と心理学者の岸見一郎氏による、2013年に出版された書籍です。

アドラー心理学に基づいた自己啓発本であるこの本は、2018年にビジネス総合誌『プレジデント』で行なわれた「ビジネス本総選挙」において、堂々の第5位にランクインしました。

嫌われる勇気

バイオベンチャー企業株式会社ユーグレナ代表取締役の出雲充氏も、この本を愛読書とする成功者のひとりです。出雲氏は、アドラーの「たとえ嫌われても他人に左右されず、自分の信念を貫け」という言葉に、強く背中を押されたといいます。

ミドリムシの研究に励みユーグレナ社を立ち上げた若き日の出雲氏は、バングラディシュの食糧難にその力を注いでいました。しかし、当時の投資家たちから、もっと別の事業に投資するべきだと非難されたのだそう。そんな反対の声に、出雲氏はアドラーの教えを思い出し、「反対するなら投資をしなくていい」と宣言したのだといいます。

するとその15年後、「貧困や飢餓の根絶」「再生可能エネルギーの利用」などを含むSDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されました。それにより、市場のみならず世界経済の風向きが変わり、出雲氏のバングラデシュでの活動は評価されるようになり、ユーグレナ社の株価も上昇しました。

もし『嫌われる勇気』を読んでいなかったら、圧力に屈していたかもしれない」と出雲氏は振り返ります。この本を通して、嫌われてでも押し通すべき信念とは何なのかを学ぶことができるのです。

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一流の成功者たちの愛読書を3冊紹介しました。「学ぶはまねる」ともいいますが、彼ら一流たちをまねして、彼らの愛読書に目を通してみるのが、成功への第一歩になるかもしれませんよ。

(参考)
青木雄二 (1990-1996) ,『ナニワ金融道』, 講談社.
プレジデント・オンライン|茂木健一郎がナニワ金融道を読み返すワケ
洪自誠 著, 今井宇三郎 訳 (1975),『菜根譚』, 岩波文庫.
東洋経済オンライン|名経営者がこぞって読む「菜根譚」の秘密
岸見一郎・古賀史健 (2013),『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』, ダイヤモンド社.
プレジデント・オンライン|『嫌われる勇気』を経営者が愛読する理由

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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