「毎日忙しくて、残業が続いている。ストレスもいっぱいだ」
「まわりが手帳を使っているから自分も買ってみたけれど、正直活用できていない……」
そんな人へ、今回は一流ビジネスパーソンが実践している手帳術をご紹介します。注目したのは、大手コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の、ふたりの経営者。彼らのように手帳をうまく使えば、あなたもきっと仕事の効率をアップできるはずですよ。
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。
プレジデントオンライン|オイシックス社長「集中力、思考力が高まる」手帳術
プレジデントオンライン|マルチタスクは「シングルモード」で最速処理
PHPオンライン衆知|マッキンゼーで学んだ「2冊のノート」の感情コントロール術
1. 予定は「テーマ」で分けて、日ごとに割り振る
忙しいビジネスパーソンの仕事は多岐にわたるもの。打ち合わせ、資料作成、情報収集……さまざまなタスクが発生するたび、とりあえず手帳のカレンダーに書き入れている人は多いでしょう。ですがそれでは、最大限に仕事を効率化できているとは言えません。
タスクは「テーマ」ごとに分類してみましょう。そのうえで、タスクをこなす日をテーマごとにまとめることをおすすめします。たとえばこのような感じです。
- A社との会議、社内ミーティングといった “打ち合わせ系” の予定は、10月3日にまとめる
- 会議資料づくり、報告書作成といった “資料作成系” の予定は、10月4日にまとめる
- 資料収集、口コミリサーチといった “情報収集系” の予定は、10月5日にまとめる
この方法を実践しているのは、マッキンゼー出身で、オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役社長の髙島宏平氏。次のように述べています。
「短いミーティングで次々指示や承認をした後、長時間のクリエーティブな会議をすると、ペースがつかみにくい。だからこの日は30分の会議を何個も入れる日、この日は2時間の会議をいくつか入れる日と、テーマごとに分けています」
髙島氏は「その日ごとにモードを分けることで、集中力、思考力を高める」効果を得ているのだそう。
(カギカッコ内含む引用元:プレジデントオンライン|オイシックス社長「集中力、思考力が高まる」手帳術 ※太字は編集部が施した)
これは、脳の性質の観点からも有用な方法です。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、脳の働きをふまえた効率的な仕事習慣として、「タスクは違っても、同じ作業をできるだけまとめてこなしてしまうこと」をすすめます。その理由は、種類の違う仕事にあれこれ手を出すと、脳に負荷がかかるため。
「作業の種類を切り替えるたびに脳はギアチェンジをしなければなりません。せっかくいいスピードが出ていたのに、ギアを変えると、立ち上がりは“助走の時間”が必要な分、どうしても遅くなります。これを1日に何度も繰り返すわけですから、仕事の効率が落ちてしまうのです」
(カギカッコ内含む引用元:プレジデントオンライン|マルチタスクは「シングルモード」で最速処理)
髙島氏が実践しているように似通ったテーマでタスクを分ければ、脳のギアチェンジの回数を減らせるため、仕事の効率を上げられるというわけです。仕事のメリハリもつけやすいでしょう。
予定を「テーマごと」に書いてみた
髙島氏の手帳術を、筆者も実践してみました。
髙島氏は、見開きのウィークリー手帳の空欄に1週間でやるべき業務を書き出し、終わった業務にはマルをつけて消しているとのこと。そこで筆者も、1週間分の予定が書けるフォーマットを用意し、タスク一覧を書き出す欄には印をつけられるようなチェックボックスを設けました。
そして以下のように、1週間分のタスクを洗い出してみました。
タスクをすべて書き出せたら、それぞれを1週間の予定として振り分けます。
髙島氏や古川氏のアドバイスのとおり、仕事内容や所要時間が似ている業務を同じ曜日にまとめることとしました。たとえば、次のような感じです。
- 月曜日:1時間の資料作成をまとめてやる日
- 木曜日:2時間の打ち合わせをまとめてやる日
筆者の場合、以下のようにうまく振り分けられました。
困ったのは、時間の目途が立ちにくい作業を何曜日に入れるかです。これについては、髙島氏の「しっかり考えるべき課題を土曜の欄に」書くというやり方をまねることに。たとえば、大きなプロジェクトの計画を立てるといった仕事は、ゆっくりと考え事ができる土曜日に入れるといいようです。(引用および参考:プレジデントオンライン|オイシックス社長「集中力、思考力が高まる」手帳術)
そこで筆者も、検討事項は土曜日に処理することにしました。
こうして、自分だけの効率的な仕事スケジュールが完成しました。これなら、1日のなかでモードをいちいち切り替えずにすむので、仕事がはかどりやすいように感じます。残業しがちで悩む人や、効率よく仕事を進めたい人には特におすすめですよ。
2. ストレスマネジメントのために、手帳を2冊持つ
「仕事のストレスが大きい。なんとかしたい……」と感じる人もいるでしょう。じつは手帳は、ストレスをマネジメントする手助けにもなってくれます。
マッキンゼー出身でセンジュヒューマンデザインワークス代表取締役の大嶋祥誉氏は、マッキンゼーの職場を振り返ってこう述べています。
好き嫌いの激しい人に比べて、自分の感情を上手にコントロールしながら、誰とでも比較的良い関係を築くことができる人のほうが、クライアントから好かれていました
(引用元:PHPオンライン衆知|マッキンゼーで学んだ「2冊のノート」の感情コントロール術)
たしかに、好きな仕事しかしない人や好きな相手としか関わらない人とは、一緒に仕事をしたいとは思えないですよね。一方、自分の感情をコントロールできて、分け隔てない態度のビジネスパーソンは魅力的に見えるものです。
そんな、“自分の感情のコントロール法” として、大嶋氏は2冊のノートを使い分ける方法を提案しています。
1冊は感情を書きなぐる「クリアリング・ノート」、もう1冊は出来事をベースに感情を掘り下げる「ロジカル分析ノート」です。
大嶋氏によれば、ノートを使うメリットは「感情と事実を分離」できることだそう。
「『なんとなく不安』『なんとなくイライラする』といった自分の感情を客観視し、コントロールできれば、事実にだけフォーカスできます。
(カギカッコ内および枠内引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
イライラしたり落ち込んだりして、目の前のことに集中できなくなってしまった……。そんなとき、手帳やノートを使って感情を整理すれば、解決策を見いだしやすくなるわけです。ネガティブな感情を引きずらずにすみ、メンタルもパフォーマンスも安定するでしょう。
「クリアリング・ノート」と「ロジカル分析ノート」を試してみた
では、具体的にどうやって感情をコントロールするのか、筆者の実践とともに、やり方をご紹介しましょう。(以下、手順についての参考元:同上)
まず、「クリアリング・ノート」には感情を書きなぐります。これにより、「自分の感情を客観的に『認める』こと」ができるのだとか。
ノートの種類は問わないということなので、筆者は普段使っているカスタム手帳を使いました。手順は、次のとおりです。
- 左ページにネガティブな感情を書き出す
- 書くことがなくなったらノートをいったん閉じて、気持ちが落ち着いてから再び開く
- 右ページに「賢者」になりきって自分へのアドバイスを書く
個人的には、左のページに感情を書き出しただけでも気持ちがかなり落ち着きました。そして右のページに “自分ではない人” としてアドバイスを書くと、より客観的に感情を認めやすくなり、解決策も考えやすかったです。書き終えたあとは、すっきりした気持ちになれました。
続いて「ロジカル分析ノート」も実践。大嶋氏によると、こちらは「感情を感情のまま処理するのではなく、解決すべき問題に変換して処理する方法」だそう。
手順は、以下のとおりです。
- 左ページに事実や問題をひとつ書く
- その下に、自分が感じたことを書く
- 「なぜそう感じたのか」を自問自答して、感情を掘り下げる
- 右ページに問題の解決法を書く
筆者がルーズリーフに書き出したのがこちらです。
ロジカル分析ノートでは、クリアリング・ノートに比べて「自分がどのような問題に対してネガティブな感情を抱いているのか」をより明らかにできた気がします。その結果、ネガティブな感情のもとになっている問題を解決するために、うまく考えを巡らせることができました。
クリアリング・ノートは、ストレスがたまっているときや自分の感情を整理したいときにおすすめの方法。ロジカル分析ノートよりも短時間でできるため、ストレスをサクッと手放したいときに向いていると感じました。
一方、ロジカル分析ノートは、「仕事で失敗した」「プレゼンが不安」など、ストレスの根本にアプローチして問題を解決したいときに適していると感じます。2冊を使い分けて、感情をコントロールしてみてくださいね。
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仕事をもっとスムーズに進めたい。仕事のストレスをどうにかしたい。そんな方は、マッキンゼー出身者が実践する方法を参考に、手帳を最大限に活用してみてください。きっと、仕事の効率を上げることができるはずですよ。