最近勉強への意欲が低下気味。特別な準備のいらない簡単な工夫で、いつもの勉強をもうちょっと楽しいものにできないだろうか――
そうお考えならば、いい方法がありますよ。手元にある鉛筆と消しゴムとボールペンを使うだけの、ゲーム感覚のミニテストです。スクラッチカードを削るような、ちょっとしたワクワク感があるので、大人でも楽しく勉強できるはず。
以前使っていたけれどいまではすっかり出番がなくなった、部屋の隅に眠る大量の鉛筆と消しゴムを、再び有効活用することも可能ですよ。さっそく説明しましょう。
選ばれにくくなった鉛筆と消しゴム
パソコンやスマートフォンが当たり前になったいまの時代、手で紙に文字を書く機会はどんどん減ってきています。そんななか、手書きの有効性を示すエビデンスを見聞きしたことがある方は多いのではないでしょうか。
たとえば東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 教授の、酒井邦嘉氏らグループは、タブレットやスマートフォンよりも手帳を使ったほうが、記憶を引き出す際の脳活動が高くなっていたことを確認したそうです(参考元:東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部|紙のノートの脳科学的効用)。
しかし、こうした報告を受けて人々が手にするのは紙と鉛筆ではなく、紙とボールペンのほうかもしれません。
なぜならば、一般的な鉛筆の場合は削る手間があり、消しゴムで消せばカスを片づける必要があり、書いたところがこすれて手が汚れたり、書いた文字が光って、もしくは薄くて読みにくかったり、芯が折れたりすることがあるからです。
ちなみに、鉛筆や色鉛筆の生産がピークだった1966年には、約13億8,542万本も生産されていたそうですが、2021年には1億9,069万本と、約7分の1の生産量になってしまったとのこと。(参考元:朝日新聞デジタル|鉛筆の生産、ピーク時の7分の1 だけど見直される良さとは)
鉛筆と消しゴムを使ったゲーミフィケーション
しかし、ただ “書いて、間違ったら消す” だけが鉛筆と消しゴムの使い道だとは言いきれません。意外にも、隠れているものを明らかにするために消す使い道もあるからです。
それを教えてくれたのは、住まいと住生活・手づくり関連の総合専門小売業、株式会社ハンズが提供する「ヒントマガジン」内の記事でした。鉛筆で塗りつぶされたところを、消しゴムで消すと、楽しいイラストが現れるというアイデアが、子どもたちを楽しませていたのです(参考元:ハンズネットストア|ヒントマガジン|わたしたちは、消しゴムのことをみくびっていたのかもしれない)。
これを目にした際に筆者の頭に思い浮かんだのは、ゲームの要素をゲーム以外の活動に取り入れることを意味する、ゲーミフィケーションという言葉でした。ゲーミフィケーションを取り入れた学習コンテンツの開発や調査研究に取り組む、東京大学大学院 情報学環 准教授の藤本徹氏によれば、
「ちょっとおもしろそうだからやってみよう!」というように、学習を楽しく継続するきっかけを生み出すための工夫として、ゲーミフィケーションを活用することができます。
とのこと。普段の学習に取り入れるには「ちょっとだけゲームに観点を寄せてみる」と、どう工夫すればいいか気づけるそうです。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:MeLab|【第1回】 世界で注目されている「ゲーミフィケーション」とは一体!?)
これらを受け筆者が発想したのは、鉛筆と消しゴムを使う、ゲーム感覚の想起テストでした。
鉛筆と消しゴムで「ゲーム感覚の想起テスト」をやってみた
この想起テストのやり方は非常に簡単です。 まず、ボールペンとノートを使って普通に勉強して、
(ノートの中身参考元:佐賀大学 海洋エネルギー研究所|海洋温度差エネルギー)
しばらくしてから、ところどころを鉛筆で塗りつぶして、
また少し経ってから、簡単な想起テストを行ないます。
塗りつぶしたところを頭のなかで思い出してから、消しゴムで消して、答え合わせをする――といった具合です。
そうすると、徐々に答えが現れてくる瞬間、「当たった!」「あー、なんだ、そうだったのかー」とゲーム感覚を味わうことができるわけです。
ちなみに、鉛筆は2Bを使い、消しゴムは黒い消しゴムを使いました。これだけ消すと消しゴムの汚れが気になりそうなものですが、黒い消しゴムを使ったので問題ありませんでした。快適に行なえたので、いずれも最善の選択であったと思われます。
鉛筆&消しゴムで想起テストをやってみた感想
最初、この想起テストを考えたときは「きっと消しゴムで消す瞬間にワクワクするだろう」と考えていましたが、実際には、黒く塗りつぶすときからワクワクしていました。
頭では文字を塗りつぶしているとわかっているのですが、塗り絵に近い動作であるせいでしょうか。理由は想像するしかありませんが、不思議とワクワクしましたよ。
また、書いて、塗りつぶして、消す動作をひととおり行なうと、何度も感覚刺激を受けながら情報に接するためか、覚えやすくなるような気もしました。
楽しく学べそうなので、これからはあえて鉛筆と消しゴムを切らさないようにして、続けてみようと思います。
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鉛筆と消しゴムは、書くもの、そして間違った箇所を消すもの、それだけのものではありませんでした。低コストで簡単にすぐできる、ゲーミフィケーションツールでもあったのです。
最近学びを楽しめていないなぁと感じている方にも、鉛筆と消しゴムの処理に困っている方にも絶対おすすめですよ!
東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部|紙のノートの脳科学的効用
朝日新聞デジタル|鉛筆の生産、ピーク時の7分の1 だけど見直される良さとは
ハンズネットストア|ヒントマガジン|わたしたちは、消しゴムのことをみくびっていたのかもしれない
MeLab|【第1回】 世界で注目されている「ゲーミフィケーション」とは一体!?
(ノートの中身参考)
佐賀大学 海洋エネルギー研究所|海洋温度差エネルギー
STUDY HACKER 編集部
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