「雰囲気のよい環境で、気持ちよく働きたい」
「いいチームづくりに貢献したいし、成果も挙げたい」
今回は、そんな願いを抱くビジネスパーソンに役立つ「SQ(Social Intelligence Quotient=社会的知能指数)」という能力についてご紹介します。
SQとは、対人能力や社交性を表す指数のこと。SQを伸ばす方法についても説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
チームの雰囲気をよくする人に備わる「SQ」とは
SQは、1920年頃から心理学者のエドワード・ソーンダイク氏によって使われ始めたもの。同氏は、この能力について「人々を管理する能力」と定義していました。その後、「EQ(Emotional Intelligence Quotient=感情の知能指数)」を広めた心理学者のダニエル・ゴールマン氏が、定義を修正。「対人関係において賢く行動できる能力」として再定義しました。
SQの高い人は、他者の気持ちに配慮するのがうまく、グループのなかで適切な発言や行動ができ、人当たりがいいだけでなく、チームの雰囲気をよくすることができます。
周りにとって「助かる人」であるだけでなく、自分のいるチームを成功へと導く力があり、結果的にその人自身も「成功する人」になるのです。さらに、社交性や対人能力に優れ、求心力があることから、リーダーにも向いています。
世界的ベストセラー『メンタルが強い人がやめた13の習慣』の著者で心理療法士のエイミー・モーリン氏によると、SQが高い人の特徴は以下のとおり。
- コミュニケーションスキルが高い:
誰とでも円滑に会話でき、相手に応じて適切な言葉を選び、配慮のある発言をし、ユーモアと誠実さがある。後日会ったときに、前回話したことを覚えていて、関係を深めやすい。
- 評判がいい:
自分が相手に与える印象を考慮するのが得意。複雑な人間関係のなかで、印象を悪くしないよう心がけつつも、自分の本心からかけ離れない程度にバランスをとることができる。
- 争わない:
ほかの人を嫌な気分にさせてまで自分の正しさを主張しても、意味がないとわかっている。偏見がなく、たとえ個人的には同意できなかったとしても、他者の意見を否定せず、しっかり聞く。
あなたに当てはまる点はありましたか? 「自分にはそんな能力・要素はない」と肩を落とした人もご安心ください。SQは鍛えることのできる能力です。その方法を以下で見ていきましょう。
SQを高める3つのテクニック
社会性や対人能力に自信がない人であっても、以下を実践すれば少しずつSQを積み上げていくことができます。
1. 周囲の人たちや、起きていることに注意を払う
SQの高い人は、ソーシャル・キュー(社会的合図)の読み取りが得意。ソーシャル・キューとは、相手の身振り手振りや目配せ、その環境にいる人たちの関係性といった、人の意図を読み取るためのヒントを指します。
前出のモーリン氏によると、このスキルを得るためには、自分の身近にいる人で「あの人は社会性が高いな」と感じる人を見習うとよいそう。どのように周囲の人たちを観察し、どのように人と関わっているのかをまねして、自分のものにしていきましょう。
2. EQ(心の知能指数)を高める
SQとEQは似てはいますが、少し違いがあります。SQは他者との関わりや社会性に関する能力を指すのに対し、EQとは自分の感情をコントロールしたり他者と共感したりする能力のこと。
モーリン氏によると、SQを高めるにはEQを高めることも必要だそう。自分の感情により気がつきやすくなれば、他者の感情に気づく能力も高まるからです。職場などの社会的な場所では、いらだちや怒りなどのネガティブな感情は必ず起きるもの。自分や他者のそうした感情に気がつき、コントロールできる人は、職場の雰囲気をよくするのに欠かせない人となるのです。
リンカーン大学のマティス・バル教授の研究によれば、フィクション小説に陶酔すると共感力が上がるそうです。自分が経験していない感情も知ることができ、EQを高めるのに役立ちますよ。
3.「アクティブ・リスニング」を実践する
コミュニケーション能力を高めるには、「アクティブ・リスニング」を実践することが有効です。これは「自分の注意はすべてあなたに向いていますよ」ということが伝わる傾聴の仕方。話を途中でさえぎったり、自分が次に言うことを考えたりするのではなく、相手の話に心から注意を向けるのです。
社会不安障害についての著作が多数ある作家のアーリン・クンチッチ氏によると、相手の話を意訳して、意図を理解したことを伝えるのも効果的。また、抑揚など言語外のことにも注意を払い、相手が本当に言いたいことのヒントを探すことも大切だそう。
相手に傾聴してもらえれば、話し手は自分が大切にされていると感じるもの。それこそが、よいコミュニケーションなのではないでしょうか。
「職場の雰囲気が悪い」を改善する方法を考えてみた
先述のとおり、SQを高めればチームの雰囲気をよくすることができます。そこで、
「メンバーがいつも無表情・不機嫌で、職場の雰囲気が悪い」
「同僚が協力的ではなく、自己中心的な行動をする」
このような、働きづらく居心地の悪い環境を改善するにはどんな働きかけをすればよいか、考えてみました。
前者は、雰囲気の悪い職場にただ流されたり、その場限りの取りつくろいをしたりする言動ばかり。反対に後者は、自発的でポジティブな振る舞いや、感情コントロールにより、周囲にいい影響を与えることができます。
「みんなのために自分だけがそこまで頑張る必要があるのだろうか」と感じるかもしれません。ですが、あなたのモチベーションは必ずしも「チームの成功」に結びついていなくてもいいのです。
前出のダニエル・ゴールマン氏は、「本当のリーダーシップとは、メンバーと意味のあるつながりを築くことだ」と述べています。「ひとりひとりとの意味のあるコミュニケーションにより、必要な協力が得られる」そう。
これは、リーダー以外にも言えること。職場にいるひとりひとりと心からつながれば、チーム内でよい影響力を発揮できるのです。それには「誰よりも明るく振る舞う」ことでもなく「誰よりも高い営業成績を出す」ことでもなく、SQを高める方法を実践することが大切。
同僚と心からつながりがあれば、手伝ってほしいときにお願いしやすくなったり、困っていることに気づいてもらいやすくなったりし、仕事はよりスムーズに進むはず。上司ともよい関係を築いていれば、あなたの能力が生かせるような仕事を割り振ってくれるかもしれません。単純に気持ちよく働けるようになるだけでなく、出世したい、成果を出したいなどの願いも、結局はSQの高さが助けてくれるのです。
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SQを高めるには、その方法を勉強するだけでなく、実践することが大切です。「あの人は社会性が高いな」と思える人と、思えない人。それぞれの行動を観察して、取り入れるべき要素を見極めて、実際の行動に反映させ、SQを高める努力を続けていきましょう。
(参考)
カオナビ|SQ(社会的指数)とは? 成功者はIQ(知能指数)が高い人ではない?
Very well mind|How to Increase Your Social Intelligence
NCBI|Human consciousness and its relationship to social neuroscience: A novel hypothesis
Frontiers in Psychology|Ethical Leadership, Leader-Member Exchange and Feedback Seeking: A Double-Moderated Mediation Model of Emotional Intelligence and Work-Unit Structure
PLOS ONE|How Does Fiction Reading Influence Empathy? An Experimental Investigation on the Role of Emotional Transportation
Very well mind|How to Practice Active Listening
Positive Psychology|Cultivating Social Intelligence: 3 Ways to Understand Others
Harvard Business Review|Social Intelligence and the Biology of Leadership
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。