「誠実に取り組んでいるのに、成果が出ない……」
「適当に見える同僚のほうが、実績を積んでいる……」
「なんだか損をしている気分だ……」
一見「楽してそう」に見えるのに、順調に仕事を進めていく。そんな人、みなさんのまわりにいませんか? 肩の力を抜いて働いている人ほど、仕事を円滑に動かしていくための重要なポイントを押さえているものなのです。
今回は、一見適当なのになぜかうまくいく人がやっていることを3つご紹介しましょう。
【1】優先順位を決めている
手抜かりがないよう、細かな業務にも丁寧にあたる――まじめな人ほど、細部にまできちんと向き合う傾向があるかもしれません。しかし、少し立ち止まって業務を見直してみてください。優先度の低い作業に時間をかけていませんか?
一見適当に見える人ほど、業務の全体像をとらえ、「手を抜いてもいい作業」と「注力すべき重要な作業」を分けています。つまり、うまく力配分ができるよう「仕事の優先順位」を先に決めているのです。
「パレートの法則」をご存じでしょうか。経済学者V・パレートが提唱した法則で、多くの社会現象においては「重要な20%から、全体の結果の80%が生み出されている」というものです。これを仕事に置き換えてみれば、重要な2割の業務に注力すれば、成果の8割が得られることになります。
注力すべき仕事をたった2割にまで絞るのは、少し抵抗があるかもしれません。しかし、少なくとも「優先度の低い業務」はあるはずです。たとえばプレゼンの資料作成であれば、調査から裏づけられた内容をしっかり練ることが重要なのであり、見栄えをよくするデザインや導入部分などの重要性は低いもの。そうした細部にかける時間は減らしてもかまわないのです。
パレートの法則の活用を説く組織コンサルタントの堀公俊氏は、「どうでもいいことは、どうにかなる」と断言しています。仕事を円滑に進めるには、100%を目指さないことが大切なのです。
【2】うまく人を巻き込んでいる
責任感が強い人ほど、他人を頼ることに抵抗を感じやすいもの。しかし、ひとりで仕事を抱え込みすぎてしまうと、心身ともに疲弊し業務も滞ってしまいます。ジーエルアカデミア代表取締役で『「すぐやる」思考法』の著者である塚本亮氏は、以下のように述べています。
うまく段取りを考えられる人は、自分で抱え込むのは効率が悪いと考えているので、周囲を味方につけて物事を進めることができます。
(引用元:PRESIDENT WOMAN|なぜか「いつも誰かに助けてもらえる人」に共通する3つの行動)
つまり、いい意味で適当に仕事をこなす人ほど、周囲の協力を得ながら業務を進めているということ。裏を返せば、「助けられ上手」だとも言えます。周囲をうまく巻き込む環境をつくり出すのがうまいのです。
ではどうすれば周囲の人を巻き込むことができるのでしょう。アメリカの作家であるデール・カーネギーが残した『人を動かす』という著書には、「人に動いてほしかったら、相手に重要感を与えなさい」という言葉があります。カーネギーいわく、多くの人は、自分が重要視されていると感じると自発的に行動したくなるのだそう。
ですから、「あなたは重要な人です」というメッセージを発するために、積極的に相手のアドバイスを求めたり、協力に対する感謝の気持ちを素直に伝えたりしてみましょう。相手を尊重する姿勢をとり、協力を得やすい環境をつくっていければ、ひとりで仕事を抱え込まなくても、周囲を巻き込みながらスムーズに仕事を進めていくことができるでしょう。
【3】やる気よりも習慣で動く
「まだやる気があるから」と、定時を過ぎても仕事を続ける……。このように、やる気や感情、気分を頼りに仕事をすることはありませんか? 時にはそうすることも悪くはありませんが、どうしても気分は上下してしまうもの。仕事のパフォーマンスもそれに左右されかねません。
起業家で、マンガ情報サービスを手がけるアル株式会社代表取締役である古川健介(けんすう)氏は、仕事を生産的にこなすコツとして「頑張らない」ことを挙げます。無理に気合いを入れ、がむしゃらに長時間働く必要はないと古川氏。「やる気に頼らない」ことを「無感情」と表現し、こう語ります。
無感情にやり始めたら、その後はそのやり始めたことに対して自然とやる気が出てくるので、多くの場合その行動を完遂できるようになります。そうすると、テンションを上げる必要もモチベーションを高める必要もなくなっていくというわけです。
(引用元:現代ビジネス|頑張らない、自分の頭で考えないのが「真に生産性の高い働き方」だ)
そして、やる気に頼るかわりに「仕事をし始めること」を習慣にするとよいと述べています。
モチベーションに頼らず、まず先に行動に移す――こうした姿勢は、脳科学的な見地から考えても、理にかなったものです。東京大学教授で脳研究者である池谷裕二氏は、「科学的には『やる気』という概念は存在しない」と断言しています。ではなぜ、「やる気」という言葉が生まれたのでしょう。池谷氏いわく、本来「やる気」という感情は、アクションを起こすと必然的についてくるものだったのだとか。人間の言葉が発達したため、行動の結果に過ぎないものを「やる気」とあとから名づけたのです。
池谷氏は、私たち人間の感情や気分の起点となるものは、脳ではなく身体だと述べています。たとえば、ガッツポーズをすれば、自然と気力がみなぎりますよね。それと同様に仕事も、手を動かしていくうちに、やる気があとから追いついてくるのです。
一見「やる気がない」ように見える人は、変動性のある気分を頼りにするよりも、業務に取りかかること自体を習慣としてとらえ、一定のパフォーマンスを維持して生産性を高めているのですね。
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「適当であること」は、考えを変えてみれば「ムダを省いて効率的に仕事をすること」だと言えます。もし、頑張りすぎてうまくいかない……と感じているのなら、「一見適当に見える人」のやり方を参考に肩の力を抜いてみてくださいね。
(参考)
NIKKEI STYLE|何事も重要な20%を優先し考えよ 仕事効率化の法則
PRESIDENT WOMAN|なぜか「いつも誰かに助けてもらえる人」に共通する3つの行動
リクナビNEXTジャーナル|「人を動かす」のが苦手な人こそ試すべき“特効薬”とは?
現代ビジネス|頑張らない、自分の頭で考えないのが「真に生産性の高い働き方」だ
新R25|「簡単にやる気を出す方法を教えてください!」→脳研究者「やる気なんて存在しない」
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。