「3種類の思考」はこうして使い分ける。最善の決定、斬新なひらめきを可能にする思考術

影山徹哉先生インタビュー「直観・論理的思考・無意識思考の使い分け方」01

経営脳科学者であり、京都芸術大学客員教授も務める影山徹哉(かげやま・てつや)先生は、「思考には3つの種類がある」と言います。「直観」、「論理的思考」、そして先生が提唱する「無意識思考」です。

先生によれば、「3つの思考を使い分けることが、ビジネスパーソンには大切」なのだそう。どういう場面でどの思考を使うべきなのでしょうか。それぞれの思考を行なうべき場面と、そうするためのコツを教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

「些細な仕事」は直観でどんどん進める

「無意識思考」には、じつにさまざまな有用性があります(『考えないほうがうまくいく。「無意識思考」研究の第一人者が説く “最強の思考法” 3つの極意』参照)。そうはいっても、ありとあらゆることを無意識思考で行なえばいいというわけではありません。3つの思考にはそれぞれに得意とする分野があるからです。場面に応じて言葉遣いを変えるように、行なう仕事に応じて使う思考を変えることが大切です。

まず1つめの思考である直観は、「些細な仕事」をする際に用いることがおすすめ。メールをするのかしないのか、電話をするのかしないのか、そういった些細なことに関しては直観でどんどん進めていっていいでしょう。じっくり考える論理的思考や、それこそ論理的思考よりも時間が必要な無意識思考で考えていては、仕事はいつまでたっても進みません。直観でパッパッと進めていき、もし間違ったら修正する。そういうふうに考えてください。

2つめの思考は、論理的思考です。これは、さまざまな情報をインプットしてじっくり考える思考です。この論理的思考が得意とするのは、数字を扱うような仕事なので、経理業務などがその代表格となるでしょうか。

もしそこで直観で進めてしまうと、大きなミスを犯してしまうことになりかねません。かといって、無意識思考によってひらめきを待つというような仕事内容でもない。そこで、論理的思考が力を発揮するのです。とはいっても、これらの業務のほとんどは、今後はAIにとって代わられるものだとは思います。

影山徹哉先生インタビュー「直観・論理的思考・無意識思考の使い分け方」02

重要な意思決定には時間をかけて無意識思考を使う

3つめの無意識思考は、新たなビジネスプランの作成や経営における重要な意思決定の場面で力を発揮します。それこそ、そういう場面で直観だけに頼って判断を間違ってしまえば会社に大きな損失を与えることにもなりかねない。でも、ありきたりのアイデアしか生むことができない論理的思考では、大きな成果を挙げることも難しいでしょう。重要な意思決定をしたいときは、無意識思考によってゆっくりと答えが導かれるのを待つことが得策です。

このとき重要となるのは、「無意識思考を邪魔しない」ということ。特に真面目なビジネスパーソンほど、論理的思考に頼りがちな傾向にあります。考えるべきことがあったとして、いつでもそのことを考えていては、無意識思考は働きません。少し気持ちに余裕をもち、散歩や音楽鑑賞など自分にとって気晴らしになるようなことに注意を向け、無意識思考が働けるような状況をつくってあげましょう。

そうはいっても、もちろん無から有は生まれませんから、情報のインプットも大切です。アイデアを生む、あるいは意思決定をするために必要な情報はしっかりとインプットしたうえで、そのあとは無意識思考に任せましょう。

そして、無意識思考には時間がかかることを知っておくことも重要なポイントです。時間がかかることを許容するのです。この考え方は、会議の進め方にも生かせるものだと思います。企画会議といったなんらかの決定をする会議では、その場で決定をしようとするがゆえに、会議が長引くこともよくあるでしょう。でも、そんな会議でよい結論に至ることはそう多くないのではありませんか?

そこで、会議の仕方を変えてみてはどうでしょうか。たとえば、午前の会議は必要な情報の整理やインプットに使う。そして、ランチ休憩をしたあとの後半の会議でアイデアをもち寄るという具合です。なるべく多くの無意識思考をする時間を脳に与えてあげるわけです。そういう意味では、当日ではなく後日に後半の会議を設定するほうが、さらにいいアイデアが出席者から出てくると思います。

影山徹哉先生インタビュー「直観・論理的思考・無意識思考の使い分け方」03

楽なうえによりよい答えを導いてくれる、いいことずくめの無意識思考

以上のようなことを、これまで私は多くの経営者やビジネスパーソンに対して提案してきました。そのなかには、もちろん無意識思考の素晴らしさを感じられる人もいればそうではない人もいます。というのも、直観や論理的思考にも言えることですが、無意識思考については得手不得手があるからです。

多く寄せられる悩みが、「無意識思考をしているつもりなのに、本当にできているのか実感がない」というものです。その声を受けて、無意識思考ができているかどうかを計測するためのプログラムを作成しました。これはウェブ上で公開されているものですから、もしみなさんが同じような悩みをもつことがあれば、ぜひ下記のURLにアクセスしてみてください。
https://the-office-kageyama.com/online_program/

最後にみなさんにお伝えしたいのは、無意識思考を使うと本当に楽だということ。同僚の研究者がどんな実験デザインや研究プランにしようかとじっくり考えて頭を悩ませているかたわらで、私はといえば必要な情報をインプットしたら飲みに行ってしまう……(笑)。そうしているあいだに、いいアイデアがぽんと浮かぶのです。

多少の時間はかかるものの、楽だしよりよい答えを導いてくれる――。まさにいいことずくめであり、使わない手はないのが無意識思考です。このことは、私の実体験から保証できます。ぜひみなさんにもそのメリットを実感してほしいですね。

影山徹哉先生インタビュー「直観・論理的思考・無意識思考の使い分け方」04

【影山徹哉先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
意思決定は「論理 or 直観」どちらが優れているのか? 経営脳科学者の意外な答え
考えないほうがうまくいく。「無意識思考」研究の第一人者が説く “最強の思考法” 3つの極意

【プロフィール】
影山徹哉(かげやま・てつや)
1982年9月19日、福島県生まれ。京都芸術大学客員教授。経営脳科学者。博士(医学)。東北大学経済学部、同大学院経済学研究科博士課程前期修了。米国パデュー大学留学後、中小企業支援機関に経営コンサルタントとして勤務中に、福島市にて東日本大震災に被災。身近な人も含め、多くの死を目のあたりにしたことで、人生観が劇的に変化。後悔のない生き方をしたいと、以前より興味のあった脳科学研究を志す。その後、東北大学大学院医学系研究科博士課程(脳科学専攻)に進学し、脳機能イメージング研究の第一人者・川島隆太教授、杉浦元亮教授に指導を受ける。博士課程在学時には、東北大学学際高等研究教育院の博士研究教育院生に選抜され、文系、理系の枠を超えた世界最先端の文理融合研究に携わった。東北大学加齢医学研究所人間脳科学研究分野研究員を経て、現職。専門領域は、脳科学、コーチング心理学、経営心理学。大学教員を務める傍ら、高校生向けの講義、一般向けの各種講演、個人コーチング、法人向けコンサルティングを行うなど幅広く活動している。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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