絶対にやってはいけない “アメとムチ” の使い方。「○○を我慢できたらご褒美」はなぜNGなのか?

モチベーション維持にアメとムチを効果的に使う方法01

仕事や勉強のやる気を上げるために、いわゆる「アメとムチ」を使っている人も多いのではないでしょうか。

ここでいうアメ(報酬)とは「今週の仕事を乗り越えたら焼肉を食べに行こう」というもの、ムチ(罰)とは「上司に叱られたくないから頑張らなきゃ」というものですね。目標を達成するとこんなご褒美がある、あるいは失敗するとこんな罰がある、というルールをあらかじめ決めておき、それらをモチベーションとしてやる気を引き出すという方法は、心理学的にも有効であるとされています。

ただし、アメとムチには “誤った使い方” があるのをご存知でしょうか。使い方を間違えると、場合によっては、動機づけの効果を発揮できなかったり、むしろ逆効果になってしまう恐れがあるのです。以下で詳しく解説していきましょう。 

新たな目標を立てる場合に「ムチ」はNG

まずは、「運動の習慣をつけたい」「資格試験の勉強を始めたい」「日記を書くことを習慣づけたい」など、新たな目標や習慣をプラスする場合について。このようなとき、以下のような「ムチ」型のモチベーションを使うのはNGです

× 筋トレを1日サボったら、小遣いを1000円減らす
× 勉強をサボったら、晩酌を抜きにする

もしあなたが、このような「新たな習慣をサボったらムチ」というやり方をしているのなら、なかなかうまくモチベーションは上がらないはずです。

メンタリストのDaiGo氏が紹介する実験では、ニューヨーク州立病院の職員に “手洗い” の習慣をつけさせようとして、まず「手を洗わなければ感染症になりますよ」というムチ型のアプローチをとりました。しかし、ほとんど改善は見られませんでした

そこで方法を変え、手を洗うと電光掲示板で「Good Job!」という文字が出る仕組みを取り入れてみました。すると、手洗いをする職員の数は2倍以上になったのだそうです。新しい習慣を始める場合には、こうした、ほんのちょっとしたご褒美だけでも大きな効果があるのです。

モチベーション維持にアメとムチを効果的に使う方法02

では、達成できたご褒美としてはどのようなものを用意すればいいのでしょうか。習慣コンサルタントの古川武士氏の分類を参考に、以下の3種類を紹介します。

【1. ご褒美系】
達成のご褒美に好きなことや楽しいことを用意しておくという、シンプルな方法です。
(例:好きな映画を観る、少し高級なホテルバイキングに行く、ビールを飲む、など)

【2. ほめられ系】
モノではなく、他者からのほめ言葉をご褒美にする方法です。
(例:家族に励ましの言葉をいってもらう、周囲に自分の変化を評価してもらう、など)

【3. 理想モデル系】
達成したあとの自己イメージを想像し、その理想の未来に対するワクワク感をご褒美にする方法です。
(例:憧れのマイホームの写真を貼る、憧れの人物の写真を貼っておく、など)

モチベーション維持にアメとムチを効果的に使う方法03

悪い習慣をやめる場合に「アメ」はNG

反対に、「間食をやめたい」「ゲームをやる時間を減らしたい」というように、今までの習慣から何かを減らしたいときには、「アメ」型のモチベーションはNGです

× 間食を我慢できたら、週末に映画を観に行く
× ゲームを我慢できたら、恋人にほめてもらう

DaiGo氏によると、上記のような「我慢できたらご褒美」という「アメ」型のモチベーションでは、悪習慣を断ち切る効果は薄くなってしまうのだそうです。

ワシントン大学は、ある単純な問題を被験者に解いてもらうという実験をしました。被験者は2グループに分け、正解/不正解に応じてそれぞれ以下の2通りのルールを課します。

「アメ」グループ:正解するたびに5~25セントもらえる。
「ムチ」グループ:間違えるたびに5~25セント没収される。

つまり、一方のグループは正解するたびに報酬が、もう一方のグループは間違えるたびに罰が与えられる決まりにしたのです。その結果、罰を与えられるグループのほうが、間違えないよう努力する傾向がなんと3倍も高くなったのだそうです。

モチベーション維持にアメとムチを効果的に使う方法04

では、自分に対してムチを打つ方法としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか? 古川氏の分類から2種類ご紹介します。

【1. 罰ゲーム系】
悪習慣のブレーキとして、罰ゲームを設定しておく基本的な方法です。
(例:間食をしたら小遣いを減らす、ゲームをしたら腕立て伏せを30回やる、など)

【2. みんなに宣言系】
「○○をやめる」とみんなに宣言することで、達成できなかった場合の恥ずかしさをムチとする方法です。
(例:「間食をやめる」と友人に宣言する、「ゲームをやらない」と妻に宣言する、など)

モチベーション維持にアメとムチを効果的に使う方法05

補足:「アメとムチ」を使ってはいけない場合があった!

しかしなかには、アメとムチを使うことで、かえってやる気が下がってしまう場合があります。それは、「動機づけなどしなくても、はじめからやる気に満ちている」ようなケースです。たとえば、英語の勉強が大好きだとか、仕事を楽しいと感じられているといった場合がこれにあたります。

玉川大学脳科学研究所の松元健二教授によると、このような、すでに充分モチベーションが感じられている事柄に対してアメとムチの動機づけを行なうと、目的が「楽しむこと」から「報酬/罰」にすり替わり、楽しいと感じられなくなってしまうことがあるのだそうです。これをアンダーマイニング効果といいます。

たとえば、もともと絵を描くのが好きな人が「1枚描いたら100円あげるよ」といわれると、しだいにお金を稼ぐことが目的になってしまい、絵を描くのがそれほど楽しくなくなってしまう、というのがアンダーマイニング効果の一例です。

したがって、アメとムチは「やらなければならないのに、どうしてもやる気が起こらない行動」を始める、あくまで最初の一歩として活用するようにしましょう。
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アメとムチの使い分け方や、具体的な実践方法について解説しました。資格試験などの勉強を始めたり、新たな習慣を身につけたりしようと考えている方は、ぜひ活用してみてくださいね。

(参考)
Mentalist DaiGo Official Blog|やる気を3倍アップするアメとムチの心理学
プレジデント・オンライン|12の鉄板スイッチ!「継続」にはアメかムチか
玉川大学 玉川学園|玉川大学 読売新聞社立川支局 共催 連続市民講座第4回「人間のやる気を脳科学で解明〜自由と平等の大切さ〜」

【ライタープロフィール】
佐藤舜
中央大学文学部出身。専攻は哲学で、心や精神文化に関わる分野を研究。趣味は映画、読書、ラジオ。人生ナンバーワンの映画は『セッション』、本は『暇と退屈の倫理学』。好きな芸人はハライチ、有吉弘行、伊集院光、ダウンタウン。

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