多すぎる二酸化炭素は脳の敵。仕事の生産性を上げる、上手な “換気” のしかた。

仕事のパフォーマンスを上げようとしているが、なかなか良くならないとお悩みの方は、ぜひ、「換気」を見なおしてみてください。換気を良くするだけで、脳の働きがグンと上がりますよ。さっそく、ご説明しましょう。

CO2濃度の影響と、国が決めた基準

CO2濃度は、建築物において1000ppm以下(厚生労働省/建築物環境衛生管理基準)、教育施設は1500ppm以下(文部科学省/学校環境衛生基準)に保つよう、定められています。

ご存じのとおり、CO2は二酸化炭素のこと。私たち人間を含む動物の呼吸や、微生物による有機物の分解、火山活動、化石燃料(石油・石炭など)の燃焼によって発生します。CO2は温室効果ガスとして私たちの地球を取り囲み、快適な温度に保ってくれていますが、排出量が莫大なため地球温暖化の原因ともされています。

また、通常であれば有毒性はありませんが、濃度が3~4%(30,000~40,000ppm)を超えると頭痛・めまい・吐き気を起こし、7%(70,000ppm)を超えると意識を失うことも。そして、その状態が続くと死に至る場合もあるのです。室内において調理や暖房で火を使う場合、換気を忘れないよう呼びかけられているのは、このためですよね。

しかし、今回注目しているのは、有毒性のないレベルのCO2濃度。意識的に改善していかない限り、知らぬ間に仕事や勉強のパフォーマンスが左右されているかもしれないのです。

CO2濃度が低いとパフォーマンスが向上する

2017年、ハーバード大学公衆衛生大学院の助教授ジョゼフ G. アレン氏は、シラキュース大学、SUNYアップステート医科大学との共同研究で、「より良い空気を吸うと、意思決定パフォーマンスが著しく改善する」と明らかにしています。特に改善を示したのは、戦略的決定の分野と、問題解決能力を試す分野。これらはまさに、ビジネスパーソンに求められるスキルですよね。

なお、調査の場をラボからオフィスなどに移した際も、「グリーン認定(省エネでなおかつ換気率もいい)」を取得していた建物で働く人たちのほうが、認知機能テストで高得点を取ったとのこと。ジョゼフ G. アレン氏らが行ったのは2つの調査ですが、「この結果は30年にわたる科学実証と完全に一致する」と説明しています。ちなみに、彼らの推定では、換気率を2倍に高めることから得られる生産性効果は、1人当たり年間6500ドルだそうです。

こうした実験は、数年前にも行われました。

米エネルギー省の研究機関、ローレンス・バークレー国立研究所のウィリアム・フィスク氏は、2012年に、CO2濃度が脳の機能(意思決定)に与える影響についてニューヨーク州立大学と共同研究を行いました。22人の被験者に対し9項目の意思決定テストを行い比較したところ、CO2濃度が600ppmの環境に比べて、1000ppmで6項目が劣り、2500ppmの環境では7項目が大幅に劣ったそうです。

つまり、CO2濃度が低ければ低いほど、脳のパフォーマンスが向上するということなのです。

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仕事や勉強の場でのCO2濃度

脳の働きはCO2濃度によって大きく影響されますが、空調システムが充実していない空間も少なくありません。

照明や空調などを統合・遠隔制御するシステム「UCHIDA IoT Model」を展開する株式会社内田洋行、スマートビル事業推進部部長の山本哲之氏は、「会議でも議論が白熱して1時間くらい経てば、おそらく(CO2濃度は)1300ppmくらいになるでしょう」といいます。

また、「学校でも、冬にストーブを焚いて、締め切られた教室の中では、みるみるうちに(学校環境衛生)基準の1500ppmを超える」と説明しています。CO2濃度は、人が増えればすぐに上がってしまうのだとか……。

仕事や勉強の効率を上げるCO2対策

これまでを踏まえて、私たちが仕事や勉強のパフォーマンスを上げるために気をつけるべきなのは、以下のとおりです。

・密室に人が集まる会議やミーティングでは換気を強化する ・「頭がぼんやりする」「眠くなってきた」などパフォーマンスが低下したら換気を確認 ・休憩を小まめにとり外の空気を吸いつつ、オフィス(勉強部屋)の出入りを多くして空気が入れ替わりやすくする

有効な換気方法でパフォーマンス向上

また、有効な換気を行うために、室内空気の性質を把握しておきましょう。

● 換気は「入り口」と「出口」が必要

室内空気は入り口から出口への一方通行です。したがって、給気口がないまま換気扇を使用しても、換気できません。必ず、室内の空気を外に出す出口(換気扇など)のほかに、外気の入り口(給気口・窓解放)をつくりましょう。

● 空気の出入りは部屋の端と端が理想的

もしも換気扇の近くに給気口や窓がある場合、そこから遠い場所の淀んだ空気は動きません。つまり、例えば台所が換気されてもリビングは換気されないということ。

そのため、空気が出ていく換気扇から、外気を入れる給気口や窓が離れていることが理想なのです。空気が部屋全体を流れているか考慮して換気しましょう。

エアコンに換気機能はある? ない?

エアコン専門店の方は、よく「エアコンが換気するから換気扇は必要ないよね?」と聞かれるそうです。しかし、答えはNO。普通のエアコンは、室内の空気を冷やしたり暖めたりして、再び室内に戻しているだけなので換気機能はありません。

ただし、最近は換気機能がついたエアコンも多くなっています。エアコンによっては「換気」と「給気」いずれか片方の機能だけ、あるいは両方の機能を持っているなど様々なので、お店で確認してみてくださいね。

*** ジョゼフ G. アレン氏らの研究では、空気の質に加えて、快適な温度と湿度に保たれた環境も、良い影響を及ぼすと判明したそうです。ぜひ、心地よい環境で仕事や勉強に励んでください!

(参考) DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|オフィスの空気が淀んでいると仕事の生産性が低下する BUSINESS INSIDER JAPAN|なぜ、カフェでは仕事がはかどるのか? Wikipedia|二酸化炭素 東京都福祉保健局|13 有効な換気の方法は エアコンコム|エアコンを使っているときには換気扇を使っちゃダメなの? エアコンズ|エアコンの換気機能は空気清浄機のサポート程度? Usha Satish,1 Mark J. Mendell,2 Krishnamurthy Shekhar,1 Toshifumi Hotchi,2 Douglas Sullivan,2 Siegfried Streufert,1 and William J. Fisk2(2012),『Is CO2 an Indoor Pollutant? Direct Effects of Low-to-Moderate CO2 Concentrations on Human Decision-Making Performance』,Environmental Health Perspectives,Vol.120 pp.1671-1677

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