皆さんは部下や後輩など目下の人に何か指導をするとき、言葉遣いに気を付けていますか?
人間はモチベーション次第でスーパーマンにも怠け者にもなれる生き物です。そんな人間にとって、上司や目上の人からの叱咤激励は彼らのモチベーションを左右する重要な要素であることは言うまでもないでしょう。
今回は、テレビドラマなどで話題の「ペップトーク」を取り上げ、叱咤激励を効果的に行う方法についてご紹介したいと思います。
ペップトークとは
「ペップ(Pep)」は英語で、「元気、活気、活力」という意味があります。ペップトークとは、もともとアメリカでスポーツの試合前に監督やコーチが選手を励ますために行っている短い激励のことを指しました。そこから転じ、スポーツ現場や家庭、職場、教育現場などで用いられる、シンプルでポジティブな言葉を使ったコミュニケーションことを表すようになったのです。
ペップトークには2つの大きな考え方があり、これを意識して自分の言葉を見つめ直すことで、周りの人のやる気をみなぎらせ、本来持っている力をひき出すことができると言います。次の章からは、その2つの考え方について具体的に見ていきましょう。
ペップトークとプッペトーク
もし、あなたが学校や会社に遅刻して先生や上司から注意されるとき、どちらの言葉のほうが効果的でしょうか。
・「明日から遅刻しないでね」 ・「明日からは時間に余裕を持ってきてね」
おそらく、下の言葉の方が効果がありそうだと思う人が大半なのではないかと思います。これこそが、ペップトークの基本的な考え方のひとつです。つまり、人間は行動を指示されるとき、否定的な表現よりもダイレクトな表現のほうがよりやる気を持つようになるのです。
ペップトークがダイレクト、ポジティブな表現に対し、否定的な表現はプッペトークと呼ばれます。上の例だと、プッペトークである「遅刻しないでね」という言葉には「遅刻」というネガティブな表現が含まれています。これによって否が応でも「遅刻」を意識してしまい、どうしても遅刻が増えてしまうのだとか。逆にペップトークである「時間に余裕をもって来てね」という言葉には相手にしてほしい行動がそのまま表されているので、相手もその通りに従ってくれやすいのです。
ペップトークの基本は否定的な表現を避け、直接的でポジティブな表現にすることですが、他にも要素があります。簡単にまとめると、以下の4つです。
・短い言葉を使う ・わかりやすい言葉を使う ・相手が一番言ってほしい言葉を使う ・相手の心に火をつける本気の関わり
「短く分かりやすく」は、相手に自分の言いたいことを伝えるためにとても大切なことです。また、相手にやる気になってもらうということを考えると、相手が言ってほしい、相手のためになる言葉を選ぶことも重要です。さらに、「相手を本気にさせるためにはまず自分から」ということで、周りの人と真正面を向いて関わることも、要素として欠かせないでしょう。
4つのフレーム
ペップトークには、下記4つのフレームからなるとても重要なロジックが存在し、大体のペップトークはこのフレームに従ってできています。
(1)事実を受け入れる (2)捉え方変換 (3)してほしい言い方でアクションを伝える (4)背中のひと推し
例えば、業績の落ちている部署の部長は、4つのフレームに従って下記のような言葉を部下にかけることができるでしょう。
(1)いま、会社の売り上げは前年比マイナス10%になっている(受容) (2)これは、今までのやり方を見直し、業務をシンプル化するチャンスである(承認) (3)これまで以上に業務の無駄に目を光らせ、見つけたら報告・改善していこう(行動) (4)俺たちならできる。一緒に頑張っていこう!(激励)
(1)で現状を受け止め、(2)で状況をプラスの表現に捉え直し、(3)でやってほしい行動を明確に伝え、最後に(4)で相手を奮い立たせられるような言葉でしめる。以上の4つを組み立てるだけで、相手のやる気を引き出したり、相手を元気づけたりすることができるのです。
しかも、このフレームを使えば1分くらいの話でまとめられるため、相手も話を充分に理解してくれます。まさに、一石二鳥なのです。
*** ペップトークはとても簡単で、それでいて効果の表れやすい、非常に実践的な会話法です。これを使うことができれば、周りの人たちはあなたのおかげで能力を引き出すことができ、あなたも優れたモチベーターとして評価されるでしょう。ぜひこの記事をきっかけに、ペップトークを身に付けてみてはいかがでしょうか。
(参考) 一般財団法人日本ペップトーク普及協会|ペップトークとは 美女読書|「ペップトーク」本の決定版!人を励ます言葉の技術5つのポイント! GQ JAPAN|人をやる気にさせる「ペップトーク」の4つのポイント ペップトーク|魂に火をつける講演家 浦上大輔