「サンクコスト効果」とは? 「もったいない」で悩まない方法教えます

「サンクコスト」をご存知ですか? 日本人特有の美学だといわれてきた「もったいない」とも関係している概念です。しかし、「もったいない」思考に捕らわれすぎると損をしてしまうことも。

「賞味期限切れの食品をどうしても捨てられず、食べたらけっきょく腹を壊した」「せっかく本を買ったのに、読んでみたらつまらなかった。でもお金を払ったのだから、最後まで読まないと損だな」という経験、皆さんにもありませんか? それらの行動が非合理的なものだったことは、なんとなく分かっていたはず。

このような人間の行動は「サンクコスト」という言葉で説明することができます。今回は、サンクコストとは何か、そしてサンクコストに捕らわれずに意思決定できる方法をお教えしましょう。

サンクコストとは

サンクコスト(sunk cost、埋没費用)とは、投資や消費によって失われた金銭・時間・労力のうち、どのような行動をとっても回収できないものを意味します。たとえば、「新商品の開発に1億円を投資し、もう少しでローンチできそうなのに、このままでは発売しても必ず赤字になることが判明した」という状況を想像してみてください。この場合は1億円がサンクコストです。

サンクコストは皆さんの日常生活にも潜んでいます。たとえば、「5,000円で専門書を買ったけれど、少し読んでみたところ、面白くもなければ役に立つわけでもないことに気づいた」というとき。似たような経験は誰しもしているのではないでしょうか? この場合は5,000円がサンクコストです。

このサンクコストという概念は、人間の心理に大きな影響を及ぼしているため、行動経済学や心理学の研究対象となっています。サンクコストとは何か、次項で詳しく説明しましょう。

サンクコストの効果

サンクコストの効果は、日常生活でたびたび感じられるはずです。私たちが何かを決める(意思決定する)とき、サンクコストについて考えることがよくあります。たとえば、上で例として挙げた「5,000円で買った本」。「つまらないけれど、このまま読み進めるか、それとも興味のありそうな友人に譲るか、売るか……。どうしようかな。5,000円も払ったしなあ」という具合です。このように、サンクコストが意思決定に影響することを「サンクコスト効果」と呼びます

そして、「読むのに時間がかかりそうだし退屈だけれど、5,000円も払ったのだから手放すのはもったいない。元を取らなければ……」と、サンクコストに固執しすぎてしまうのは「サンクコストの呪縛」あるいは「サンクコストの呪い」です。退屈な上に役にも立たないと分かっているのに、なぜ読みつづけようとするのでしょうか? 読了までの数時間、あるいは数日という貴重な時間を、もっと有意義なことに使えるのではないでしょうか? その本を読んでも読まなくても、支払った5,000円が返ってこないことは明らかですし、どうやらその本は自分にとって5,000円分の価値はなさそうなのです。

このように、「サンクコストバイアス」によって人間は非合理的な判断に走ってしまうことがあります。そのため、「意思決定をするときにはサンクコストを無視するべきだ」というのが定説なのです。

サンクコストの呪縛に関する有名な例があります。2003年に運行を終了した超音速旅客機「コンコルド」です。これは英国とフランスが共同開発していた最新鋭の機体で、両政府から莫大な開発費が投入されました。しかし、一度に運べる旅客が少なく運賃が高いこと、燃料費が高騰したこと、就航路線が僅かだったことなどが重なり、採算性が悪かったそうです。

コンコルドの開発・運行を途中でやめられなかったことには、「これまで多額の予算を投入したのだから」という心理、つまりサンクコストバイアスが働いていたと考えられています。そのため、この事例は「コンコルドの誤謬(ごびゅう)」と呼ばれています。これにちなみ、サンクコスト効果は「コンコルド効果」とも称されているのです。

ちなみに、恋愛においてもサンクコスト効果が関係しているといわれています。たとえば、恋人の人間的な魅力に疑問を抱くなどして、関係を解消したいと思う場合。けれど、これまで交際してきた長い年月や、その人に贈った高価なプレゼントの数々が脳裏をよぎてしまい、別れ話をためらっている……。

上記のような場合、相手との交際を続けるかどうか判断するにあたって、「交際継続のために費やしてきたお金」や「相手のために使ってきた時間」がサンクコストですね。たとえ「このまま交際を続けることは、自分たちの将来のためによくない」と考えたとしても、その時点までに発生したサンクコストに思いをはせてしまうと、「合理的な決断」が難しくなるのだといえるでしょう。このように、サンクコストはネガティブな効果をもたらすのです。

サンクコストの呪縛から逃れるには

では、サンクコストの呪縛から逃れ、合理的な意思決定を行うにはどうすればよいのでしょう。

「ゼロベース思考」をやってみる

「ゼロベース思考」とは、既存の枠組みや過去の経験に捕らわれず、条件を白紙(ゼロ)に戻して考えること。サンクコストを忘れてください。過去に起きたことは変えられませんが、未来に成功するか失敗するかは、現在のあなたの判断しだいなのです。

初めの時点に戻れるのなら、自分はどうするか?」と考えてみてください。手元にある5,000円の本は、つまらないことがわかっています。買う前に戻れるとするなら、あなたはその本を読むためにお金を払いたいと思いますか? そうでないのなら、その本を読むことはやめにして、もっと有意義なことに時間を使いましょう。「でも、もったいないし……」はご法度です。

「オポチュニティーコスト」を検討する

「オポチュニティーコスト(opportunity cost、機会費用)」とは、ある選択をしたために逃した利益のことです。たとえば時給1,000円で一日8時間働いている人が、仕事をしたくない気分になったため、まる一日休んだとします。この場合、8,000円の機会費用が発生しました。心の安らぎを得た代償が8,000円だというわけです。一方、普段どおり働いていたならば、家族や友人と過ごす楽しみ、休息によって得られる心身の健康などが機会費用となります。

意思決定をするときは、サンクコストではなくオポチュニティーコストに目を向けてみましょう。つまらない5,000円の本を読みつづけると、どのようなオポチュニティーコストが発生しますか? 無益に終わる可能性の高い読書は、あなたの貴重な時間を奪い、ストレスをもたらすはず。ほかのこと――たとえば「別の本を読む」「仕事に関する調べ物をする」「運動をする」「家族と出かける」などの行動をとれば、知識を増やしたり、心身のストレスを和らげたりできるのではないでしょうか? しかし、つまらない5,000円の本は、あなたからそれらの貴重な機会を奪ってしまうのです。それでも読む選択をしますか? ぜひ、サンクコストの呪縛から逃れる決断を下してください。

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私たちの日常には数々のサンクコストが隠れています。「もったいない」という心情に捕らわれることなく、合理的な判断を下すことで、未来をよりよいものにしたいですね。

(参考)
StudyHacker|サンクコスト
StudyHacker|行動経済学
StudyHacker|無意識のうちに “色眼鏡” をかけてない? バイアスを意識して「ミスゼロ」を目指せ!
行動経済学会|メンタルアカウンティングによるサンクコスト効果の考察―保有効果が及ぼす影響
コトバンク|コンコルド
コトバンク|オポチュニティー・コスト
WIRED.jp|超音速旅客機コンコルド、27年の大西洋横断飛行に幕

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