確実に仕事の成果につながる「目的」設定のコツ。意外にも “あの習慣” が大事だった

仕事の成果を挙げている優秀なビジネスパーソン

あなたがいま携わっている仕事は、なんのためにやっていますか? 意外と即答できない人もいるかもしれません。この問いに対する答えは、仕事における「目的」です。

その目的こそが仕事で成果を挙げるには不可欠だと言うのは、世界最大級のグローバル経営コンサルタント企業であるデロイトトーマツコンサルティング内で社員の人材開発に携わる望月安迪さん。確実に成果につながる目的の設定方法を解説してもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

【プロフィール】
望月安迪(もちづき・あんでぃ)
デロイトトーマツコンサルティング合同会社テクノロジー・メディア・通信(TMT Division)シニアマネジャー。飛び級で大阪大学大学院経済学研究科経営学・金融工学専攻修了。経営学修士(MBA)。2013年、デロイトトーマツコンサルティング(DTC)に参画。経営戦略策定・M&A案件を専門とするStrategy & M&Aユニットにも所属し、長期ビジョン構想、事業戦略策定、新規事業開発、企業再生、M&A案件のほか、欧州・アジアにおけるグローバル戦略展開、大規模全社組織再編プロジェクトにも従事。ファーム内で数パーセントの人材に限られる最高評価(Exceptional)を4年連続で獲得、複数回の年次スキップを経てシニアマネジメント職に昇格。監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務部門を有するデロイトトーマツグループ全体を対象とした「ロジカルシンキング」研修講師を担当、初年度で200名以上の受講生を受けもつ。ほかにもDTCのコンサルタントを対象とした「ロジカルドキュメンテーション」「仮説検証」の社内トレーナーにも従事し、新卒・中途入社社員の採用・人材開発にも携わっている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

目的を意識しなければ、本来やるべきことを果たせない

効率的に仕事を進めてしっかりと成果を挙げるためには、「目的」の設定が欠かせません。仕事における目的とは「『なんのために?』という問いに対する答え」であり、もっと簡単に言えば「到達点」となります。

その目的が見えていなければ、本来やるべきことと実際にやっていることのあいだにズレが生じてしまいます。

たとえば、上司から市場調査を頼まれたとします。上司には、「その業界の概観をつかみたい」という目的がありました。でも、その目的をきちんと認識しないまま市場調査を始めたなかで、その業界に属するひとつの企業が興味深い新技術を開発していたことを知りました。

そうしてその技術について徹底的に調べ、「こんな技術を開発している会社がありました」「そのコストはこれくらいです」といった報告をしたところで、上司からは「いやいや、そんなのを知りたかったわけじゃない」と一蹴されてしまうでしょう。

それまでにかけた時間と労力は無駄となり、上司が求めていた成果を挙げることもできません。結果として、自分の評価が上がらないどころか、むしろ下がってしまうでしょう。だからこそ、具体的な作業に取りかかる前に目的を設定するのが肝要なのです。

具体的な作業に取りかかる前に目的を設定することについて語る望月安迪さん

自分のポジションを意識し、何度も書き出したうえで上司に確認する

では、目的をきちんと設定するにはどうすればいいのでしょうか? 若い社会人であれば、まずは「上司に話を聞く」のがスタートとなるでしょう。チームの成果の最大化を考えている上司は、なんらかの意図をもって部下に指示を出します。その上司の意図を理解しておくのです。

それは、先の例で言えば「業界の概観をつかみたい」のかもしれませんし、あるいはその市場を探るなかで「自社が組むべきパートナー企業を探したい」のかもしれません。そういった上司の意図は、最終的に設定する目的にかなり近いものですから、確実に理解しておくべきです。

そうしたうえで、次に意識しなければならないのは、組織内における自分の「ポジション」です。なぜなら、ポジションを無視してしまうと、必要以上に過大な目的を設定してしまったり、逆にいまの立場にそぐわない過小な目的を設定したりしかねないからです。

ちょっと極端な例になりますが、若手社員が「世界中の人たちの幸せに貢献する」といった、まるで大企業のビジョンのようなものを目的に掲げてしまえば、それはまさしく過大というものですし、具体的なアクションにもつなげられません。

自らのポジションを意識して「自分が満たすべきなのはどういったものなのか」と考え、その時点での目的らしきものが見えたら、今度はそれを書き出してみましょう。そうすれば、ときに抽象的になりがちな目的の輪郭が徐々に見えてくるはずです。

ただし、「こういう目的が正解だ」と言える明確な判断基準は存在しません。ここで信じてほしいのは、自分の感覚です。書き出してみて「なんかちょっと違うな」と違和感を覚えることも多いでしょう。

そうしたら、「やろうとしていることの先にどんな状態になっているのが最善だろうか?」とあらためて考え、何度も書き出していきます。そう繰り返すうち、「あ、これだな」と腹落ちする瞬間が訪れます。

でも、ここで終わってしまっては、それこそここまでにかけた時間や労力を無駄にしてしまう可能性もあります。そんな事態を招かないよう、最終段階として、「こういう狙いでいいですか?」と、自分の腹落ちが正しいかどうかを上司に確認してほしいのです。

目的を書き出している様子

最も重要なのは、日頃から上司と信頼関係を築くこと

ここまで、目的の設定方法を解説してきました。しかし、そういったプロセスを意識して実践するのと同じくらい大切な習慣があります。それは、上司とのあいだに日頃から信頼関係を築いておくことです。

上司と信頼関係を築けていて密にコミュニケーションをとっていれば、「上司はチームのあるべき姿をこんなふうに考えている」「自分やメンバーそれぞれにこんなことを求めている」といった、さまざまなことが見えてくるようになります。

それは、これまでのキャリアを通じて一定の成果を挙げてきた上司の「ものの見方」「考え方」といった感覚を、上司と共有することにほかなりません。感覚の共有ができていれば、上司の指示の裏にある意図も汲み取りやすくなり、目的を高精度で設定できるようになるというわけです。

さらに、そのような上司の感覚を若いうちから取り込むことができれば、自分がチームを率いる立場になったときにも、大いに役立ってくれるでしょう。割りあてられた実務をこなす立場にあるときから、組織を率いる立場の人がなにをどう見てどう考えているのかを予習しているわけですからね。

では、そんな信頼関係を上司とのあいだに築くにはどうすればいいのか? これについては、「これさえやれば大丈夫」という裏技のようなテクニックは存在しないと思っています。

当たり前のことを当たり前にやり続けることに尽きるのでしょう。朝のあいさつをする、会議に遅刻しない、必要な報連相を怠らないなど、当たり前に思えることであっても、実際にはできていないことも少なくありません。

それらを当たり前に、愚直にやり続けて小さな信頼を積み重ねていく――そうすることでしか、信頼関係は築けないのだと思っています。

確実に仕事の成果につながる「目的」設定のコツについてお話しくださった望月安迪さん

【望月安迪さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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