みなさんは、自分が解決しなければならない課題に対してどのようなプロセスを踏んでいるでしょうか。ビジネスパーソンであれば、顧客へ提供するための新しい商品やサービスについて頭を悩ませることもあるでしょう。また学生なら、レポートを期限までに仕上げようと夜遅くまで頑張っていたものの、精度が下がってしまい、かえって進捗が遅れて頭を抱えるなんてこともあるかもしれませんね。
そのような時に、ただ手探りで解決策を見つけようとしても埒があきません。そこで今回は、「システム思考」と「デザイン思考」という考え方を用いて、課題を効率良く解決していく方法をお伝えします。
「システム思考」とはなにか
そもそも「システム思考」とはどのような思考なのか、疑問に思われた方も中にはいらっしゃるでしょう。
慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授である白坂成功氏によれば、「システム思考」とは「物事をいかに俯瞰的に見るか、系統的に考えるか」という考え方であるのだそう。
例えば、「串」を例に考えてみます。串の使い方としてまず思いつくのは、「物体に刺す」というものでしょう。しかし、それだけではないはずです。「刺す」を「木の棒に圧力をかけて押す」というように、やや抽象度を高めた言い方をしてみます。そうすると、「圧力をかけて押す」という機能の他にも「引っかく」といった機能を挙げることができますよね。そうすれば、「木の棒で引っかく」つまり「絵を描く」使い方もできるわけです。このように、思い込みにとらわれずパターンを構造化することによって新たな可能性に気づくことが可能となります。
「デザイン思考」とはなにか
一方、「デザイン思考」という言葉は、アメリカのスタンフォード大学とデザインコンサルタント会社IDEOが広めたと言われ、「ユーザーを起点に考える」、「コミュニケーションを重視する」、「繰り返し試す」といった考え方がコンセプトとなっています。
そしてこれらのコンセプトをもとに、以下の5つのステップを反復させることで、必ずしも解が1つではない課題に対し実現可能な解を見出すことができるのです。
1. 共感・理解:ユーザーを観察し、そこで得られたさまざまなデータを分析することによってユーザーの価値観を理解する 2. 問題定義:観察したことから、ユーザーすら自覚していないような解決すべき課題を定義づける 3. 創造:ブレインストーミングなどにより、課題解決につながりそうなアイディアをできる限り挙げる 4. 試作:アイディアを可視化するためにプロトタイプを作り、新たな気づきを得る 5. 検証:プロトタイプをユーザーに使ってもらい、そのフィードバックをもとに改善を行う
どうやって課題を解決するのか
では、私たちは実際どのようにして「システム思考」と「デザイン思考」を課題解決に生かしていけば良いのでしょうか。具体的な方法をご紹介します。
例えば、ある部下に頼んだ仕事が期待したほどの出来ではなく、上司がいつもその仕事を部下に代わって手直ししているとしましょう。そのため本来済ませるべき仕事が遅々として進まないという問題を抱えています。この問題を解決するにあたり、デザイン思考のステップに沿って問題を分析してみましょう。
まずは最初のステップ「共感・理解」から始めます。設定によると、部下は上司に仕事を認めてもらえず、また上司は部下が一向に成長しないためお互いに不満を持っている状況であることが分かるでしょう。
次に「問題定義」です。部下と上司の気持ちから考えると、「済ませるべき仕事が進まない」というよりも「上司による部下の育成がうまくいっていない」ことが本当の課題となります。
では、課題解決につながりそうなアイディアとしては何が挙げられるでしょうか。そこで「創造」のステップに進みます。「直接話し合う」や「担当の上司を変えてもらう」、「部下にプログラムを受けさせる」などが考えられるでしょう。
この段階では実現可能かどうかはともかく、多くのアイディアを出すようにしてみてください。その際、「普段のコミュニケーション頻度を増やす」や「仕事の環境を変える」などシステム思考を用いて抽象度を高め、整理してみると、さらに考えやすくなるに違いありません。
アイディアが出せたら、その中から最も適当な方法を選んで試してみましょう。「試作」の段階では、アイディアを実行に移すことで、頭で考えているだけでは気づかなかったポイントを洗い出すことができます。
そして最後のステップである「検証」。つまり、試したアイディアがうまくいくまで改善を繰り返してみてください。これらのステップを踏むことで、ただやみくもに行動するよりも効率良く解決につながるはずです。
*** 問題が起きた時は自身の外部に原因があると考えがちですが、それらに働きかけて課題を解決するのは容易なことではありません。それよりも「システム思考」や「デザイン思考」を身につけ、自ら変化を生み出していく方がむしろ効果的であると言えるでしょう。ぜひ一度取り入れてみてはいかがでしょうか。
(参考) チェンジ・エージェント|システム思考のプロセス 日経BizGate|システム思考とデザイン思考は車の両輪 ITmedia ビジネスオンライン|なぜGEは“システム思考”を前社に浸透できたのか?