学び直しに精を出す自分と輝かしい未来を想像するまではよかったが、結局のところ日々の仕事に疲れ、まったく勉強を実行に移せていない……。
それなら、危機感を味方につけてみてはいかがでしょう? 学習意欲との関係と、その活用法を紹介します。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
山田裕憲(2012),「技術者導入教育における学習意欲の向上 : グループ学習と競争意識の効果」,公益社団法人日本工学教育協会,工学教育研究講演会講演論文集,pp.640-641.
株式会社アースメディア|ネガティブな気持ちを正のエネルギーに転換する
ダイヤモンド・オンライン|勉強が続かない人のやってはいけない目標設定
「危機感」は強力なモチベーションとなる?
世のなかには、忙しくても目的をもって学び、しっかりと結果を出せる人々がいます。そんな彼らと筆者との “決定的な違い” をひとつ挙げるとすれば、それは危機感かもしれません。
たとえば会社を経営しながら必死に勉強し、十分なビジネストークができるほどのトリリンガルになった知人は、「覚えなければ仕事にならない」という危機感があったといいます。
また、働く女性がまだまだ少なかった時代に、子どもを育て、親族の生活も見ながら有資格者になった筆者の親近者は、「家計を支えなければ」という危機感があったのだとか。
“勉強しなければ、従業員・家族ともども大変な状況に陥ってしまう” といった危機感は、強力なモチベーションになりうるわけです。
「競争心」に火をつける危機感パワー
とはいえ、前項で紹介したような危機感は、意図的につくれるようなものではありません。しかし、「このままでは負けてしまう」といった危機感なら、意外とつくりやすいのではないでしょうか。
金沢工業大学 基礎教育部 教授(2012年当時)の山田裕憲氏による、「技術者導入教育における学習意欲の向上」という講演論文には、学生の勉強意欲を持続させようと試みた、3つの方法が記されています。
そのなかの「競争意識」を用いた方法は、“学生の1週間ごとの学習時間データ” を、調査対象の1年生らに毎週示すというものでした。金沢工業大学では、1週間単位で1年生の行動履歴を記録しているそう。示したデータはその記録を、クラスごとの傾向が見て取れるようまとめたデータだと思われます。
結果、調査対象の多くが焦りや驚きを感じ、「負けてはいられない」という競争心が芽生え、勉強する時間が増えたそうです。
(参考:山田裕憲(2012),「技術者導入教育における学習意欲の向上 : グループ学習と競争意識の効果」,公益社団法人日本工学教育協会,工学教育研究講演会講演論文集,pp.640-641.)
リンクトインを活用した採用支援などを行なう、株式会社アースメディア代表取締役CEOの松本淳氏も、著書『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)のなかで、
「なにくそ!」と思う心が、普段は出せないような大きな瞬発力を生む
(引用元:株式会社アースメディア|ネガティブな気持ちを正のエネルギーに転換する)
と伝えています。それなら、たとえば “ライバル(だと思える人)の状況を把握する” だけでも、多少の効果は期待できるのではないでしょうか。
「不安な未来予測」がもたらす危機感パワー
また、記憶力日本一に6度輝き、日本人として初めて「記憶力グランドマスター」の称号を獲得したことでも知られる池田義博氏は、“勉強して〇〇になりたい” というような、ワクワクする目標設定では(その効果が) “弱い” と伝えています。
どちらかというと大事なのは、危機感を覚えるような目標設定なのだとか(池田氏は「マイナス系の目標設定」と言う)。実際に、池田氏は記憶力日本一を獲得した40代なかばのころ、
「こうなったら、いいな」ではなく、「自分がやらなかった場合、将来どうなるか?」という危機感を設定
したそうです。同氏いわく、そうすることにより「脳が動く」とのこと。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:ダイヤモンド・オンライン|勉強が続かない人のやってはいけない目標設定)
つまり、自分自身の不安な未来予測が、自分自身に危機感を与え、勉強行動を引き起こすわけです。この手法も、なんだか取り入れやすそうではありませんか。
「危機感パワー」を取り入れてみる
そこで筆者も、これまでの内容から導き出した
- 他者の頑張りを知って「競争心」に火をつけ、勉強行動を引き起こす方法
- 「不安な未来予測」がもたらす危機感で、勉強行動を引き起こす方法
を実践してみようと思います。それぞれの取り入れ方は、次のように考えました。
- 「競争心」を活かす:進化し続ける勉強熱心な友人・知人の状況(その人の頑張りと成果)を、しっかりと把握する。
- 「不安な未来予測」を活かす:いま勉強しなければ、将来どうなってしまうか考えて書き出し、自覚を促す。
1に関しては、あまりにも進化が激しい人々を対象にしてしまったため、彼らの状況を知れば知るほど、気分が落ち込んでしまいました。ただ、静かな闘争心が湧いてきたのも確かです。
それと同時に、同じようにはできないが、「自分は自分らしい道を歩もう」という気持ちが強く湧き上がりました。他者の頑張りを見聞きすることは、自分の方向性を決める際に役立つのかもしれません。
2に関しては、「いま勉強しなければ、将来どうなってしまうか」を真剣に考える時間を設け、導き出した答えを、小さなノートにつらつらと書いてみました。
- 仕事経験が増えるだけで、市場価値は平行線……どころか下落。
- 仕事経験だけでものを言っても、誰にも相手にされない。
- AIの台頭で唯一の強み(書く、描く)も価値が薄れる。
- 自分が望む仕事を、将来できなくなる。
- 自分のアイデンティティを確立できなくなる。
上記のいずれも真剣に考えて書き出したものですが、最も危機感を覚えたのは「自分が望む仕事を、将来できなくなる」と「自分のアイデンティティを確立できなくなる」という内容を、言語化したときでした。
いまはまだ仕事を選べても、テクノロジーの発展がますます進めば、(たとえばAIが絶大な労働力になるなど)同じように仕事を選ぶことは、非常に難しくなるかもしれません。
そのとき、いったい自分は、どう生きているのか?
――そう考えたとき、「また勉強できなかったなぁ」などと言っている場合じゃないと強く感じました。いままさに、「危機感」が味方についたのかもしれませんね。
***
危機感を覚えたとき、あなたの勉強が加速するワケと、その活用法を紹介しました。簡単なわりに即効性がある(すぐ気持ちが引き締まる)ので、よろしければ一度お試しください。