なぜかいつも “うまく決められない” 人に、手書きの「自己モニタリング習慣」が役立つ理由

筆者が書いた自己モニタリングノート。見開きぶんを書いたもの

〇〇にするべきだ。いや、やっぱり△△だ。それとも……。

いつもうまく意思決定ができず、機会を逃したり選択に失敗したりとさんざんなことが続いているなら、自己モニタリング習慣を身につけてはいかがでしょう。メタ認知能力が高まり、自分にとって正しい判断ができるようになるそうです。筆者が実践したところ、おもしろい体験もできましたよ。

まずは、「意思決定・自己モニタリング・メタ認知能力」それぞれの役割と、関係性の説明から始めましょう。

1.「意思決定」の役割

意思決定とは、実行可能な範囲で最適と思われるものを選ぶことです。さまざまな問題解決から、今日着ていく服、デリバリーのメニュー選びにいたるまで、あらゆることに意思決定は関わります。

2.「自己モニタリング」の効果

認知行動療法における自己モニタリング(セルフ・モニタリング)は、実践者に「気づき」を与えてくれる技法です。

早稲田大学教授の嶋田洋徳氏によると、認知行動療法型のストレスマネジメントでは、自己モニタリングで個々に合ったストレスへの対処法を見つけていくのだとか。どんなストレスに、どう反応し、どう対処して、どの程度ストレスが軽減したかなどを具体的に記録し、俯瞰的に整理することで、気づきが深まるのだそう。

自然のなかで、リラックスした状態でセルフモニタリングを行う女性

一方で、精神医療の銀座泰明クリニックは自己モニタリングについて、心情を書き出せればもちろん効果的だけれども、生活や行動を客観的に記録していくだけでもいいと説明しています。

3.「メタ認知能力」とは

メタは「高次の~」を意味する接頭語で、認知は知覚・理解・判断・推論・決定など、さまざまな知的機能を指す言葉です。つまりメタ認知とは、自分自身の知的な活動(認知活動)を、“もうひとりの自分” が別の次元から客観的に見つめることを意味します。

たとえば、仕事で何かの問題にぶつかり対処しようとする際、「ちょっと待って! 普通はこれでいいけれど、今回はイレギュラーだから確認したほうがいいかも」などと、もうひとりの自分が冷静に行動を調整できるのもメタ認知能力。

「なんだかイライラして集中できないのは、〇〇が気になっているせいだ。まずはそっちを片づけよう」「職場に馴染めないのは、人間関係ではなく仕事に対する意欲が湧いていないからだ。転職を考えるべきか……?」などと、もうひとりの自分が分析し、いいほうに向かうようコントロールするのもメタ認知能力です。

4. 意思決定と、自己モニタリングと、メタ認知能力

次に、「意思決定・自己モニタリング・メタ認知能力」の関係性を示す研究や専門家の知見を紹介しましょう。

2008年に発表された田谷文彦氏、茂木健一郎氏らによる株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所の調査では、状況に応じて意思決定の戦略を変更することが、メタ認知の役割であると推測されています。
また、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部助教の中山遼平氏らは、フリンダース大学の研究で「メタ認知と意思決定の強い関連性が示唆された」ことを挙げ、さらに「自分が何を考えているか意識すると認知能力にも影響する」ことについて述べ、「メタ認知は優れた意思決定に必要な能力」と説明しています(※脳科学辞典・2012年の原稿より)
日本能率協会KAIKA研究所所長の近田高志氏によれば、メタ認知能力を高める方法は、自分の「思考や感情の状態」に注意を向けることなのだそう。意見が違う人と交流する自分をモニタリングするのも有効とのこと。

つまり、「メタ認知」は「意思決定」に欠かせないものであり、メタ認知能力は「自己モニタリング」で高められるわけです。

緑に溢れる公園のベンチでセルフ・モニタリングノートをつける若い男性。

5.「自己モニタリング」をやってみた

筆者もさっそく「自己モニタリング」に挑戦してみましょう。

早稲田大学人間科学学術院教授の熊野宏昭氏らが1999年に執筆した内容によれば、認知行動療法における自己モニタリングでは、自分の行動、認知、気分、考えなどを「観察・記録・評価」するそうです。まずは簡単な記録をとることから始め、徐々に内容を増やしていくといいとのこと。

そこで今回筆者は、以下の項目で記録することにしました。気がついたら書き込めるよう、持ち運びに便利なメモ帳サイズ(105×148)のノートを使用します。

  1. 引っかかった出来事
  2. そこで感じたこと
  3. どう対応したか
  4. 自分なりの評価

(※個人で気軽に始められる自己モニタリングなので、専門機関で治療者が患者にすすめる内容とは異なります)

これら4つの項目をブロック状にして、メモ帳サイズのノートに書いていくと、ちょうど4分の1ページ分がひとつの出来事になります。

筆者が書いた自己モニタリングノート。各項目の説明入り

この書き方にした理由は、少しでも書く労力を減らして習慣化を促進するためです。

放送通訳者・獨協大学非常勤講師の柴原早苗氏によれば、ノートの真んなかに縦線を引いて使うと、何度もペンを持ち替えて手をスライドさせ、ノートの端まで書く必要がないので労力を節約できるとのこと。この理論を参考にしました。

たしかに、書く負担がグンと少なくなります。

筆者が書いた自己モニタリングノート。

そして、興味深い体験もしました。

6.「自己モニタリング」をやってみた感想

筆者が書いた自己モニタリングノート。見開きぶん書き終わった状態。

最初は、4番目の 「自分なりの評価」を書くことで、自動的にメタ認知が発動していると感じました。それだけでも大きな発見なのに、何日か記録していくうち、出来事から始まって⇒心のなか⇒対応⇒評価へと、階段をのぼるように客観性が増していると気がついたのです。つまり、メタ認知は書き始めてすぐに発動していたということ。

この繰り返しが、「自分の範疇の高次元エリア」へとスムーズに移動できる認知能力を高め、ストレスを軽減したり、冷静で客観的な意思決定を実現させてくれたりするのかもしれません。予想以上におすすめです。

***
自分にとって正しい判断に自己モニタリングが役立つワケは、「意思決定・自己モニタリング・メタ認知能力」の関係性が強く、「自己モニタリング自体がメタ認知の階段」であるからでした。階段をのぼって筋力を鍛えるように、メタ認知能力も鍛えましょう!

(参考)
早稲田ウィークリー|生活の中のストレスを認知行動療法で解決する
PubMed|A metacognitive analysis of decision making in adolescence
銀座泰明クリニック|セルフ・モニタリング Self-Monitoring
CiNii|意思決定に於けるメタ認知の役割
ハイキャリア|第41回 ノートの使い方を変えてみた
一般社団法人日本能率協会 JMA|メタ認知
e-ヘルスネット|認知機能
熊野宏昭のページ|認知行動療法
コトバンク|意思決定とは
脳科学辞典|メタ認知

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