「先の先を読む」ための2つの日常習慣。大切なのはあえて “アウェイ” に行くことだ

藤野英人さんインタビュー「先の先を読むための2つの日常習慣」01

時代が変わるスピードが上がり「予測不能な未来」といった言葉もメディアをにぎわすいまだからこそ、「『先の先を読む』ことが重要だ」と言うのは、まさに「未来を予測するプロ」と言ってもいい投資家の藤野英人(ふじの・ひでと)さんです。

そんな藤野さんが「先の先を読む」ために習慣としてやっているのは、「他人になったつもりで考える」ことだそう。その意図を教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

他人になったつもりで考え、新たな気づきを得る

私は、著書などを通じて「先の先を読む」ことが重要だと提唱しています。私が言う「先の先」とは、3〜5年後などの近未来ではなく10年後くらいのイメージです。それくらい先の未来を予測できれば、その予測に基づいたビジネスプランなどをじっくりと考えられ、大きな成果を挙げられるといったことにつながるからです。

そして、そうするためには、「自分と違う世代の人たちとコミュニケーションをとる」ことをおすすめしています。中高年の人なら、これからの時代をつくっていく若い世代とのコミュニケーションから未来のトレンドを予測することもできますし、若い人なら、年上世代だからこそもっている経験則を学べば先の先を読む手助けとなってくれるでしょう(『10年後に大きな成果を出す人が “いま” やっていること。「先の先を読む」方法とは?』参照)。

これに通じることとして、「他人になったつもりで考える」のも大切です。自分と違う世代の人とのコミュニケーションを通じて自分にはない思考や経験則を学んで考えることも、他人になったつもりで考えるバリエーションのひとつと言えます。

なぜ、他人になったつもりで考えることが重要なのでしょうか? それは、自分の立場から離れて客観的に情勢を分析し、「この状況に対して〇〇さんだったらどうするか」と思考をめぐらせることが、新たな気づきをもたらしてくれるからです。それまでもっていなかった気づきは、先の先を読むための自分の武器となります。

私の場合、たとえば政治のことなら「いまの状況に対して首相の目にはどう見えているか、どう考えてどんな手を打つだろう」「野党だったらどうだろう」というふうに考えますし、資産運用会社の経営者としては「野村證券だったらここでどう動くだろう」「大和証券だったら?」「三菱UFJ銀行だったら?」などと考えて商品戦略を考えることもあります。

私にとって、「自分の立場を離れ、他者の立場に立って考える」ことは、先の先を読むために欠かせない習慣なのです。

藤野英人さんインタビュー「先の先を読むための2つの日常習慣」02

インプットのポイントは、「セレンディピティ」

とはいえ、ただ「他人になったつもり」になればいいというわけではありません。政治の知識をいっさいもたない人が、「首相になったつもりで考える」ことなどできませんよね。

ですから、他人になったつもりで考えるには、なにより勉強をすることが大切です。ジャンルを問わず多くの知識をインプットすることで、他者の思考に近づき、その人になったつもりで考えられるようになります。

そのとき、「セレンディピティ(Serendipity)」というものをポイントとして意識してほしいと思います。セレンディピティとは、「偶然の産物」「偶発的な必然」といった意味の英語です。

なぜこのセレンディピティがポイントになるかというと、私たちはつい自分の趣味嗜好に偏った情報ばかりを得ようとしてしまうからです。みなさんのなかにも、釣りが趣味の人なら釣りのこと、料理好きの人なら料理に関する情報ばかりを得ようとしている人がいるのではないですか?

そこで、意識的に「偶然の産物」を見つけようとしてみましょう。やり方は簡単です。読書をするなら、あえて「普段の自分なら読みそうもないもの」を読んでみる。そうして得た新たな知識は、それこそ「普段の自分」にはなかったものですから、知識量を大きく増やしてくれます。

そして、その新たな知識がすでにもっていた知識と融合し、思考の幅を大きく広げてくれることもあるでしょう。もしかしたら、「このことは自分が好きな釣りとはまったく関係ないけれど、関連している部分もあるぞ!」といった発見もあるかもしれません。それこそが、セレンディピティです。

藤野英人さんインタビュー「先の先を読むための2つの日常習慣」03

「偶然の産物」を求めて、あえて「アウェイ」に行く

もちろん、「勉強」だからと読書にこだわる必要はありません。目的は新たな知識を得ることなのですから、映画を観てもいいし、漫画を読んでもいいでしょう。映画を観るなら、下調べなどせずに映画館に行ってみて、あみだくじでもして「偶発的」に上映予定の映画のなかから観る映画を決めるというのもいい手ですね。

大切なのは、いわば「アウェイ」に行くことです。そういう意味では、パートナーがいる人ならやりやすいかもしれません。いつもアクション映画ばかりを観ている人にとっては、その他のジャンルの映画はまさにアウェイです。

アクション好きの人がパートナーに付き合ってラブロマンス映画を観てみる、逆にラブロマンス好きの人がパートナーの趣味に合わせてアクション映画を観てみるのです。そうするなかで自分の知識量を増やしていくとともに、パートナーとの距離も縮まるはずです。こんなにいい方法はないのではないでしょうか(笑)。

藤野英人さんインタビュー「先の先を読むための2つの日常習慣」04

【藤野英人さん ほかのインタビュー記事はこちら】
10年後に大きな成果を出す人が “いま” やっていること。「先の先を読む」方法とは?
仕事を通じて幸せになりたい人が、まず目を向けるべきは「これ」だった。

プロ投資家の先の先を読む思考法

プロ投資家の先の先を読む思考法

  • 作者:藤野英人
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【プロフィール】
藤野英人(ふじの・ひでと)
1966年8月29日生まれ、富山県出身。投資家。ひふみシリーズ最高投資責任者。レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長。早稲田大学法学部卒業。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授。一般社団法人投資信託協会理事。『おいしいニッポン』(日経BP)、『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)、『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』(日経BP)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『お金を話そう。』(弘文堂)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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