勉強に取りかかったのに、たった10分でさえも集中力が続かず、結果的にほとんど知識を吸収できなかったという残念な経験はありませんか? もう二度と、同じようなことにはなりたくないですよね。
そこで今回は、「勉強に対する集中力が10分ともたない人」がさくっと集中できるようになる方法を4つご紹介しましょう。
【1】部屋を整理整頓する
勉強に集中できない方は、まず部屋を見回してください。ごちゃごちゃに散らかってはいないでしょうか? プリンストン大学神経科学研究所の科学者グループの調査によると、人間の脳は本質的に秩序ある状態を好むそう。そのため、無秩序、すなわち散らかっている環境が目に入り続けると、「認知資源」と呼ばれる脳内の余裕が枯渇して集中力が低下してしまうのだとか。
また、人間の心理には、つらいことから逃れるために目の前の快楽を求めてしまう「先延ばし効果」が存在します。勉強している最中に普段は気にならない本が読みたくなったり、またスマートフォンをチェックしたくなったりするのは、この先延ばし効果によるもの。部屋が散らかっているとそのぶん快楽の材料が多いため、気が散りやすくなってしまうのです。デポール大学教授ジョセフ・フェラーリ氏らの調査によれば、成人の約20%が「自分は先延ばしの常習犯だ」と認めているそうですから、注意したいところですね。
逆に言えば、部屋を整理整頓しておけば集中力を奪う要因が減少するということ。片づけを効率よく行なう方法として、海外での生活経験が豊富で部屋づくりに関する著書を多数もつ門倉多仁亜氏は、「物の収容場所を定めておく」という方法を推奨しています。
たとえば、帰宅したらカバンなどを乱雑に放り出すのではなく、棚の上に置く。本を読み終えたら、出しっぱなしにせず必ず本棚にしまう。門倉氏によれば、ドイツには「人生の半分は整理整頓」ということわざがあるそう。これは、整理整頓さえしていれば余計な時間を使わず仕事でも成功できるという意味です。同じことは勉強にも言えるはず。物が本来あるべき場所を決めておけば、集中力が阻害されることがなくなり、きっと勉強がうまくいくでしょう。
【2】勉強直前や勉強中に運動する
勉強に集中できないのなら、いっそのこと机から離れて体を動かしてみてはいかがでしょう?
ヨンショーピング大学研究チームの報告によれば、2分間ほど運動を行なうだけで、脳が活性化し集中力が高まることが判明したそうです。特に、ジョギングやウォーキング、サイクリングといった有酸素運動に、脳を活性化させる効果があるそう。いきなり長時間にわたる有酸素運動の習慣を身につけるのは難しくとも、まずは自宅周辺をひとまわり散歩したり部屋のなかを歩き回ったりするなら、簡単にできますよね。
また、医学博士で受験アドバイザーの福井一成氏は、両足をこまめに動かしながら勉強すると、体中の血流がよくなり脳が活性化すると述べています。「集中できないなぁ……」とぼやきながら机の前にじっと座り続けるより、テキストを音読しながら室内を歩き回るなどするほうが、より勉強がはかどるはずですよ。
【3】ドーパミンを分泌させる
勉強に集中できないのはそもそもやる気が湧いてこないせいだ、と考える人もいるかもしれませんね。人間のやる気や意欲は、脳の側坐核から放出される「ドーパミン」という物質によってもたらされます。そこで、勉強に集中するためにドーパミンを分泌させるというアプローチをとってみましょう。
脳科学者の澤口俊之氏によれば、ドーパミンはなんらかの報酬が期待できる状態になると多く分泌されるそう。たとえば、「この資格に合格すれば、仕事での給与増加につながる」といった報酬が期待できれば、勉強に取りかかりやすくなるということです。逆に、期待できるメリットが何もなければやる気は出てきません。当然、集中もしづらいでしょう。
上記のような大きな報酬でなくとも、「勉強してひと段落ついたら、とっておいたスイーツを食べる」「今日のタスクが終わったら、続きが気になっていた本を読み進める」といった小さな報酬でも大丈夫。ドーパミンは分泌されるはずです。
さらに、マギル大学の研究により、好みの音楽を聴いているときにもドーパミンは分泌されることが判明しました。ただし、勉強中に歌詞がある曲を聴くと、言語中枢が勉強ではなく歌詞の理解に使われ、集中力が落ちてしまいます。したがって、勉強中は歌詞のない音楽を聴く、勉強前に好きなアーティストの曲やお気に入りの映画のサントラなどをかけるなどして、やる気を上げましょう。そうすれば、集中して勉強できるに違いありません。
【4】 短時間勉強を繰り返す
あれこれ試しても、やっぱり10分以上勉強し続けるのは無理! という方もいるでしょう。しかし、たった数分間の勉強を積み重ねていくだけでも学習効果は得られます。
医学博士で学習カウンセリング協会理事長の吉田たかよし氏によれば、5分間ほどという短い作業でも側坐核が刺激されてドーパミン分泌が促されるため、やる気が湧き出すそう。これを「作業興奮」と呼びます。もし5分間勉強してみてもやる気が湧かなかった場合には、あとで再び5分間の勉強に取り組めば大丈夫。これなら、トータルで見たときに10分以上勉強できたことになりますよね。
日本記憶力選手権で6度優勝した実績をもつ池田義博氏も、短時間の勉強を繰り返すことをすすめています。池田氏が提唱するのは、記憶したことを1分でできるだけ書き出す「1分間ライティング」と短時間の復習を3回以上繰り返す「3サイクル反復速習法」。実践例として、『「記憶力日本一」が提唱する2つの記憶術をやってみた結果。脳が覚えてくれるのも納得!』の記事もぜひ参考にしてみてください。
池田氏によれば、人間の脳は「物事をなるべく覚えない」ようにできているそう。だからこそ、薄い記憶を塗り重ねるように学習して定着させることが大切なのだとか。たとえ短時間しか集中できなくても、休憩などを挟みながら何度も繰り返し勉強すれば、長時間勉強するのにも負けない効果が得られるでしょう。
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集中力の欠如は、勉強の大きな妨げになってしまいがち。しかし、ご紹介した工夫を実践すれば、その状態をきっとカバーできるようになりますよ。
(参考)
Harvard Business Review|デスクが散らかっていると集中力も生産性も低下する
キャリアコンパス|先延ばしの心理メカニズムと絶対に先延ばししない対処法とは
100%LiFE|心豊かに暮らすドイツ式の住まい方
CNN|勉強前の運動、わずか2分でも脳が活性化か スウェーデン研究
福井一成(2018), 『改訂版 東大に2回合格した医者が教える 脳を一番効率よく使う勉強法』, KADOKAWA.
医療法人社団平成医会|ドーパミンを増やすことで得られるメリット
THE21ONLINE|脳科学から見えてきた!やる気を高める4つの方法
AFP BB News|好きな音楽にワクワクする原因はドーパミン、カナダ研究
STUDY HACKER|音楽で勉強に集中できる4つの理由。「ながら勉強」に効果はあるのか?
YouTube|やる気のでない脳が驚くほど変わる「5分間勉強法」
STUDY HACKER|“記憶力日本一” の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。
STUDY HACKER|「記憶力日本一」が提唱する2つの記憶術をやってみた結果。脳が覚えてくれるのも納得!
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、 ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、 エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEB上 で活用することを目標としている。