「参考書を読むのは好きだけれど、読み終わると内容をたいてい忘れている……」
「試験勉強をしているときは覚えていても、いざ本番になると思い出せない……」
このような悩みを抱えていませんか。せっかく勉強するなら、その内容をずっと覚えていたいもの。
そんな悩みに有効なのが、「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」という2つの記憶力向上メソッドです。筆者の実践談も交えながら紹介していきましょう。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。
- 「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」とは?
- 「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」はなぜ有効か?
- 実際に「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」を組み合わせて勉強してみた
「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」とは?
「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」は、記憶力日本一に6度も輝いた経験をもつ ”記憶のスペシャリスト” 池田義博氏が提唱する手法です。
「1分間ライティング」とは、記憶したことを1分のうちにできるだけ書き出す方法のこと。頭のなかでただ思い出すだけでなく、実際に書いて「見える化」することで、きちんと覚えられているかどうかを確認できます。
また、「3サイクル反復速習法」とは、同じ内容を繰り返し復習する手法です。この方法のポイントは、「復習する回数を増やすこと」と「1回の復習にかける時間を短めに、ざっとこなすこと」。たとえばテキストを読むとき、完全に理解できていなかったとしても、1ページ読みきったら、もう一度最初に戻って次は2ページめまで読み進めます。それが終わったら、再度1ページめに戻り、今度は3ページめまで読み進めます。このように、同じ内容を何度も繰り返しながら学習を進めることで、記憶を脳に定着させる訓練を行なうのです。
「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」はなぜ有効か?
「1分間ライティング」の有用性は、先述の通り、書き出すことによる「見える化」です。自分では覚えている気がしていても、実際に書き出すことができなければ、その情報を本当に記憶できているかわかりませんよね。
みなさんも、歴史などの暗記系科目で、教科書や参考書にマーカーを引き単語を覚えた経験があるでしょう。しかし、試験になると、覚えたはずなのになぜかうまく思い出せなかったということはないでしょうか? 池田氏は、「1分間ライティング」でアウトプットを行なえば、「なんとなく覚えている」という曖昧な状態から脱却できると伝えています。
また、「1分」というのは、記憶をできるだけ早く呼び起こすための時間設定です。試験など、記憶力が問われるものには時間制限があり、短い時間で多くを処理することが重視されますよね。こうした状況を前提に、1分と時間を短く区切ってアウトプットの練習をすることで、ただの記憶ではなく「使える記憶」にしていくのです。
一方、「3サイクル反復速習法」について、池田氏は次のように述べています。
これは、「薄い記憶を塗り重ねて厚くする」復習法といえます。そのベースにあるのは、学習心理学で「分散効果」と呼ばれるものです。
(引用元:STUDY HACKER|"記憶力日本一" の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。)
「分散効果」とは、適度な休憩をとり入れつつ学習時間を分割するほうが、一気に詰め込む集中学習よりも記憶が長続きするという理論です。2011年に理化学研究所の永雄聡一氏らの研究チームが行なった調査によれば、分散効果を適用したマウスは、記憶の長続きした度合いがほぼ100%であったという結果も出ているそう。
「3サイクル反復速習法」では、情報を数回に分けて繰り返し記憶します。そうすることで、より長期的に覚えていられるようになるのです。
実際に「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」を組み合わせて勉強してみた
筆者も実際に、「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」を併用し学習をしてみました。今回の流れとしては、ある新書を1週間読み、その内容をどれだけ覚えているか、重要な単語を紙に書き出すようにしました。
記憶する際は、読む範囲を15ページ程度(1チャプター相当)とあらかじめ決めておき、該当ページを3回ずつ読むようにしていました。読む範囲を先に決めておくと覚える範囲も自動的に決まるため、実践がしやすかったと感じています。
1日目には単語を1分間に4つしか書けませんでした。しかし、その数も日に日に増え、最終日の7日目には、11個もの単語を覚えることができました。日を重ねるにつれ、単語を1つ書くたびに、2つ3つ先の単語も同時に頭へ浮かぶようになり、制限時間のアラームが鳴るまで単語がきちんと記憶できている状態に。さらに、単語だけでなく、それぞれの意味まで覚えられていたため、実践した効果を切に感じました。
「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」をやってみて実感したのは、記憶力はたしかに向上するということ。
「3サイクル反復速習法」では最低3回反復するため、同じ単語や文章を何度も目にすることになります。その結果、内容に関する単語だけでなく、著者の言い回しなども自然と復唱できるようになりました。その後の「1分間ライティング」でも、書きたい単語が頭に浮かぶスピードと、書き出す順番が適切かどうかを判断する力が上がったために、最終日では11個という結果を出せたのだと思います。
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高い記憶力は、生まれもった才能で決まるわけではありません。後天的にも鍛えていくことが可能です。記憶力の低さに悩んでいるのならば、ぜひ「1分間ライティング」と「3サイクル反復速習法」を実践してみてください。
(参考)
STUDY HACKER|"記憶力日本一" の男の記憶術「3サイクル反復速習法」「1分間ライティング」がシンプルだけどすごい。
STUDY HACKER|"記憶が苦手"はただの思い込み。記憶力日本一の男は無理せず、「脳にまかせている」
Nagao Soichi, et.al., "Role of Cerebellar Cortical Protein Synthesis in Transfer of Memory Trace of Cerebellum-Dependent Motor Learning", Journal of Neuroscience, Vol. 31, No. 24, pp.8958-8966.