「自分の気持ちを文字で書く」ことが大事すぎる4つの理由。たった3行の日記で幸福度も満足度も高くなる

筆者が書いた樺沢氏の「3行ポジティブ日記」

なんだかさえない気分で、仕事や勉強にも身が入らない――それ、出力不足のせいかもしれません。「書く」というアウトプットで心にたまった毒を出したり、ボンヤリとした楽しい体験をくっきりさせたりすることで、いつもの世界も自分自身も変わってくるはず。専門的な知見をもとに詳しく説明します。

1. 書けば「対策」が見つかる

脳生理学者の有田秀穂氏によれば、自分の気持ちを文字にしてノートに書くことは、物事の対処法を見つけるいいトレーニングになるのだそう。主観的な自分の「心」に対して客観性が加わるからです。

漠然としていた不快感、あるいは楽しいことが「書くこと」で明確になり、対策を考えやすくなれば安心感が湧いてくるとのこと。気分の言語化は、ため込んだ感情の発散にもなると言います。心と脳がスッキリする効果があるのだそう。

日記を書く笑顔の女性。家でリラックスしている様子

2. 書けば「心のトゲ」を吐き出せる

また、企業の危機管理や執筆活動を行なう陸上自衛隊元幹部の二見龍氏によれば、あらゆる事態に遭遇する隊員らのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を防ぐため、自衛隊には「解除ミーティング」という会合があるそうです。 つらかったことや苦しかったことなど、心の引っかかりをすべて吐き出すのだとか。

これにより、多くの隊員の心が健全に保たれているとのこと。「 “文字にすること” でも自分の心に刺さっているものを吐き出すことができると二見氏は言います。書けば心のトゲも抜けるのですね。

3. 書けば「頭」がよくなる

「書く」というアウトプットは頭の働きもよくしてくれるのだとか。段階を踏んで説明しましょう。

  • 精神科医の樺沢紫苑氏によれば、書くことにより神経ネットワークの脳幹網様体賦活系RAS/Reticular Activating System)が刺激され、“大脳皮質” 全体に信号が送られて脳が活気づくそうです。

    大脳皮質には薄いシート状の、知性をつかさどる器官とされる「新皮質」があるのだとか(日経クロステック・五木田和也氏の連載参考)。
  • また、九州大学大学院 共同研究員の本村啓介氏は脳幹網様体賦活系(RAS)について、「覚醒」状態を維持する脳内メカニズムと説明しています(脳科学辞典より)――【起きているときの話】

    一方で龍谷大学教授の石原健吾氏は、夢を見ていることが多く目覚めやすいレム睡眠時には、脳幹網様体から大脳皮質の「覚醒」を引き起こすような信号が送られていると説明しています(2012年の紀要論文「食と眠りと人間らしさ」より)――【眠っているときの話】

    そして、2020年6月4日付で科学雑誌『Neuron』にオンライン公開された筑波大学や東京大学などの共同研究は、大人の脳内でわずかに生まれる神経細胞(新生ニューロン※)が、レム睡眠時に記憶を定着させると明らかにしました。

    この研究で怖い体験をしたマウスの新生ニューロンを観察したところ、新生ニューロンの活動が低下する睡眠時、怖い体験をしたときに活動していた新生ニューロンは、レム睡眠中に再び活動していたのだそう(※成長途上の新生ニューロン)<。

つまり、「書く(書いた経験)⇒RASが刺激され⇒知性に関わる大脳皮質に信号(覚醒時とレム睡眠時)⇒記憶定着に関与」するということ。これらは「書く行為が記憶力や学習能力を高める」と説いた樺沢氏の言葉を裏づけており、書けば知性が高まることを示しています。

さらに言えば、知性は思考力や判断力に不可欠なので、「書くことは人生を変える」とも言えるのです。

文字を書いているときに大脳皮質が活性化している様子

4. 書けば「ハッピー」になる?

また樺沢氏は著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』のなかで、「日記にポジティブな経験を書くと、幸福度と満足度が高くなる」とわかったブリガムヤング大学の研究を紹介しています。

同氏によれば、日記を書くことはアウトプット力を高めるいいトレーニングであり、自己洞察力やレジリエンス(回復する力)、楽しいことに対する感度、幸せになる能力を高める効果もあるそうです。ストレスも発散できるとのこと。

そうしたことから樺沢氏は、「3行ポジティブ日記」をすすめています。

3行ポジティブ日記のやり方

筆者が以前書いた「3行ポジティブ日記」の写真

(画像引用元:STUDY HACKER||寝る前15分間でさくっと書ける「3行ポジティブ日記」が最高。ストレスも不安も減ってゆく

樺沢氏おすすめの「3行ポジティブ日記」とは、どんなに些細なことでもいいので、今日楽しかったことや達成できたことなどを3つ書く日記のことです。大切なポイントは以下のとおり。

  • ネガティブなことは書かない
  • 寝る直前に書く

先の知見で新生ニューロンがレム睡眠中に記憶を定着させるとわかりました。上のルールを守ることで、ポジティブな経験をしっかりと記憶に植えつけられるわけです。じつは以前、 筆者がこの日記に挑戦してみたところ次の効果が生まれました

  • ポジティブな記憶を検索するうち、ネガティブな記憶が邪魔になった
  • 記憶のなかに埋もれていた、ささやかな “3つのよかったな” に気づけた
  • “3つのよかったこと” を胸に、自然と眠りにつけた

(詳細はこちら⇒『寝る前15分間でさくっと書ける「3行ポジティブ日記」が最高。ストレスも不安も減ってゆく』)

書くことを「ポジティブな内容」に限定すれば、その記憶に集中でき、なおかつ「ささやかな体験でも幸福感を得られると実感」できたわけです。おまけに頭の働きをよくして、自分と自分の世界をいい状況に変えてくれる可能性についてもわかりました。より効果的な書く出力=「3行ポジティブ日記」をやらない手はありません。

***
たった3行の日記で生まれ変われる理由は、「書く」というアウトプットで脳をメンテナンスできる、あるいはオーバーホールできるからでした。

(参考)
プレジデントオンライン|"頭の中が真っ白"状態のとき、自衛隊員が最速で落ち着きを取り戻す方法 「心の限界値」を高める1カ月鍛錬
STUDY HACKER|寝る前15分間でさくっと書ける「3行ポジティブ日記」が最高。ストレスも不安も減ってゆく
Kumar, Deependra, Iyo Koyanagi, Alvaro Carrier-Ruiz, et al. (2020), "Sparse Activity of Hippocampal Adult-Born Neurons during REM Sleep Is Necessary for Memory Consolidation," Neuron, Vol. 107, Issue 3, pp.552-565.
ダイヤモンド・オンライン|学びを結果に変えるための「アウトプット」ノウハウ
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
石原健吾(2012),「食と眠りと人間らしさ」, 生活の科学, 34号, pp.1-10.
大学ジャーナルオンライン|海馬でわずかに再生する神経細胞が、レム睡眠中に記憶を定着させる
日経クロステック|知性が宿る大脳新皮質
NIKKEI STYLE|脳もココロも元気になる「ノート習慣」
脳科学辞典|脳幹網様体賦活系

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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