これからの時代には「暗記力」以上に「考える力」が必要だとされ、アクティブ・ラーニングの導入など、教育現場ではさまざまな改革が推し進められています。とはいえ、各種の資格を取得するにも、語学力を伸ばすにも、欠かせないのはやはり「暗記力」。

そこで、自ら編み出した暗記術で東大、ハーバード大に見事合格した本山勝寛(もとやま・かつひろ)さんに、効率的に、かつ確実に暗記する方法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

忘れることを前提に「薄く塗り重ねる」イメージで暗記作業を反復

まずみなさんに知ってもらいたいのが、そもそも、「人間の脳というものは忘れるようにできている」ということ。ネガティブなことをいつまでも記憶していると、心や体に負担をかけてしまうからです。そのため、生存のために必要な重要な情報以外のものは、脳は積極的に忘れようとします。資格を取得する、語学力を伸ばすための勉強は、生活や人生を豊かにすることにつながっても、生物としての生存に関わるものではありません。だから、なかなか覚えられないのです。

忘れるという脳本来の活動を超えて記憶するためには、忘れることを前提として暗記する計画を立てなければなりません。たった1回の暗記作業をしただけでは必ず忘れます。では、どうするか。「反復する」のです。覚えて忘れて覚えて忘れて……と繰り返すうち、その情報はようやく脳の「長期記憶」を司る部分に移されます。これは、科学的にも解明されていることです。のちほど紹介しますが、「効率的に」暗記する方法はあっても、「ラクに」暗記する方法はありません。地道な反復こそが鍵となります

反復の回数は人によりますが、わたしの経験上では7回。これだけ繰り返せば、確実に暗記できます。つまり、暗記の計画は、7回の暗記作業をおこなうものにする必要があるのです。1年間で2,000語の単語帳を覚えるとしましょう。1年かけて1回だけ暗記作業をした後にテストをすると、正解できるのはおそらくテストの直前に暗記したものだけ。しかも、それも長期記憶にはなっていませんから、あっという間に忘れてしまいます。

そうではなくて、たとえば最初の6カ月で1回目の暗記作業をする。次の2カ月で2回目、次の1カ月で3回目……というような計画を立てる。反復するうちに記憶が定着しつつありますから、回数を重ねるたびに暗記作業に必要な時間は短くできます。このようにして7回の暗記作業をするのです。

ついつい1回で完璧に覚えようとしてしまうものですが、それこそよくある失敗パターンです。たとえ完璧ではなくても、「薄く塗り重ねていくイメージ」で反復する。「忘れるものはしょうがない」と割り切って、決めた期間内に絶対に終えることが重要です。

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画像検索やビジネス漫画も活用し五感をフル活用

きっちり暗記するために、「反復する」ことのほかに重要なのが「五感をフル活用」すること。強い記憶というのは、強烈な印象を伴ったからそうなったわけです。であるなら、自分に強烈な印象を与えれば、その情報は強い記憶になる。そして、強烈な印象を残すために五感をフル活用するのです。

単語を覚える場合、単語帳を目で追っているだけという人はいませんか? それでは簡単には暗記できません。効率的に暗記するためには、見て、しゃべって、その声を聞いて、書く。できれば、その単語に関連した動作もする。そうすれば、ただ目で追うことの何倍もの印象を自分に与えることができます。

そういう意味でわたしがおすすめするのは、「画像検索」を活用することです。単語帳によっては、単語に合わせてイラストが掲載されているものもありますよね。そういう単語はすぐに覚えたという経験はありませんか? いまはGoogleなどを利用して画像検索ができます。単語など覚えたい情報を検索ワードとして画像を検索する。その画像をイラスト代わりにするというわけです。

また、イラストや画像検索と同様の効果を期待できるのが「ビジネス漫画。わたしがずっと得意だった教科は歴史です。歴史の勉強に大いに役立ったのが、学習漫画の『日本の歴史』と『世界の歴史』。貧乏な家庭だったのですが、それだけは買ってもらえました。それ以外の漫画は買ってもらえないし、ゲーム機もない。わたしにとってはそれが最大の娯楽でしたので、とにかく何度も読み込みました。すると、織田信長がいつどんな場面でこういうことを言った、というような内容のほとんどを覚えてしまったのです。

これは、絵のイメージとともに情報が記憶に定着したことに他なりません。いまはビジネス漫画の隆盛期です。さまざまなジャンルのビジネス漫画が出版されていて、ベストセラーになっているものも少なくありません。それらをうまく活用して、イメージを脳に刷り込みながら勉強するのもいいと思いますよ。

反復、そして五感のフル活用。わたしは、これらの暗記法を用いて、ハーバード大に合格しました。東大には合格したとはいえ、当時のわたしは英語が苦手でかつ嫌いでした。ハーバード大に合格するためには、語彙力が圧倒的に足りなかった。わたしが選んだのは、TOEFLでの目標スコアごとに単語が振り分けられている合計3,800語が掲載された単語帳。その暗記作業を1カ月で7回繰り返して覚えました。そして、ハーバード大の合格レベルにまでTOEFLのスコアを上げることができたのです。

また、この暗記法はGRE(Graduate Record Examinations)という試験を受ける際にも威力を発揮しました。GREは英語のネイティブ・スピーカーが受ける英語試験。日本人にとっての国語の試験のようなものです。それでハイスコアを取って、ハーバード大合格のための武器にしようとしたのです。ところが、試験勉強をはじめてみると、見たこともないような単語が4,000語くらいもある。わたしは、それも1カ月で覚えました。そうすると、わたしのGREのスコアは、ハーバード大に受かるアメリカ人のスコアほどまでに一気に上がったのです。

1カ月に3,800語や4,000語と聞いて、驚いている人も多いでしょう。あるいは、わたしのことを常に勉強をし続けているストイックな人間だと思った人もいるかもしれません。

確かに、TOEFLやGREの対策のために単語を覚える際には、暗記だけに集中しました。でも、常にストイックな人間というわけではありません。普段は意外とちゃらんぽらんです(笑)。ただ、ストイックになろうと思えばそうなれる、自分のスイッチを入れる方法を身につけているのは確かです。それも、明確な目標と期日を設定することによって、スイッチを入れられるのです。多くの仕事を抱える社会人のみなさんにはそう簡単なことではないかもしれませんが、暗記を通してそういうスイッチを身につけるのも、今後の人生には有効かもしれませんね。

【本山勝寛さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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本山勝寛

大和書房(2018)

【プロフィール】
本山勝寛(もとやま・かつひろ)
1981年3月13日生まれ、大分県出身。高校時代、アルバイトで自活しながら独学で東大に現役合格。東京大学工学部システム創成学科卒業後、ハーバード大学教育大学院国際教育政策専攻修士課程を修了。現在は公益財団法人日本財団にて「子どもの貧困対策チーム」チームリーダーを務め、少子化問題、奨学金問題、子どもの貧困問題などについて評論活動をおこなう。また、自身の経験を基にした勉強法、暗記法などについての執筆活動にも積極的に取り組む。著書に『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。 貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ社)、『最強の独学術 自力であらゆる目標を達成する「勝利のバイブル」』(大和書房)、『一生伸び続ける人の学び方』(かんき出版)など。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。