“極貧” から東大とハーバードに合格した男の「最強の独学術」

向上心の強い人であれば、種々のビジネススクールに通っているという人もいるでしょう。ただ、時間の制約もあり、社会人の勉強はどうしても「独学」になりがちです。ところが、これまで「先生に教えてもらう」という勉強しかしてこなかった人にとって、独学で成果を挙げることはそう簡単ではありません。

そこで、「独学の達人」本山勝寛(もとやま・かつひろ)さんにそのコツをお聞きしました。本山さんは、高校時代、アルバイトで自活する極貧生活を送りながら、独学で東大に合格。そうして編み出した独学術で、ハーバード大にも合格した異色の経歴の持ち主です。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

必要に迫られて身につけた独学の基本

いま振り返っても、大変な生活をしていたと思います。中学に入る直前、わたしが12歳のときに母が亡くなり、それからは父親に男手ひとつで育てられました。父がつくる弁当はおかずが少なくて、しかも茶色一色(笑)。思春期ということもあり、友だちの綺麗な弁当と比べられるのが恥ずかしくて、隠しながら食べた思い出があります。

当時から経済的に苦しい家庭でしたので、部活を引退した中学3年の夏頃から新聞配達を始めました。その後、高校1年の途中には父が家を出てしまった。慈善事業が生きがいのような人で、ボランティアのためにある途上国に行ったんです。父の手配で多少の仕送りはしてもらいましたが、それも途中でなくなりました。しかも、兄も高校を中退して家を出た。となると、妹とふたりきりになった一家の主はわたしです。ほぼ毎日、うどん店のアルバイトをするようになりました

でも、高校3年になる直前に東大を受験すると決めた。そのままアルバイトを続けたのでは、勉強時間を確保できません。アルバイトをやめて、少しだけ残っていたアルバイト代、それから貸与型の奨学金で生活することにしました。奨学金も、高校生だと月に1万4000円くらいしか借りられませんでしたから、その頃の生活は本当に苦しいものでしたね

当然、勉強に使えるお金も限られていますから、塾に通うこともZ会などの通信教育を受けることもできません。かと言って、参考書や問題集を何冊も買うこともできない。東大合格のためになにをすべきか、どの参考書や問題集を買うべきかを徹底的に考える必要がありました

そこで、まず手にしたのが、東大合格者の体験記を集めた本。その本には、合格者がどんなタイミングでどの教科のどの問題集をやったというようなことが書かれている。その共通したパターンを探り出し、東大合格のための戦略を練りました

独学を成功させる重要なポイントは、「事前にしっかり戦略を練る」ことです。目標達成のために有効な戦術を研究し、それに基づいた計画を立てる必要があります。ただやみくもに勉強をはじたのでは、うまくいく可能性はかなり低くなってしまうでしょう。わたしの場合、貧乏だったためにたまたまそうせざるを得なかったわけですが、それが結果的に独学を成功させることにつながったのです。ここからは、そういうふうにわたしが習得した独学術をお伝えしましょう。

東大とハーバードに合格した最強の独学術1

必ず成功に至るための本山流独学術の基本

戦略を練る際に重要となるのが、なにをいつまでにやるかという「期日を決める」ことです。そうでないと、必ず失敗します。「なんとなく勉強しなきゃ」「なんとなく英語ができるようになりたい」では、「いつまで」と決めているわけではありません。なんとなく始めて、結局は続かない——。これがよくある失敗パターン。独学の場合は誰も指示をしてくれません。となると、自分で自分をコントロールしなければならない。目標、そしてそれを達成する期日を自分で定めることが絶対に必要なのです

また、限られた時間で成果を挙げるために、集中して勉強する必要もあります。そのため、「集中の邪魔をするものはなるべく排除する」べきです。いまならスマートフォンがその筆頭でしょう。使い方次第では勉強にも役立つものですが、どうしてもいろいろな通知が届いてSNSなどを見たくなってしまうものですからね。勉強時間には、電源を落とさないまでも、スマホはマナーモードにして離れたところに置いてしまいましょう。

わたしが東大受験を目指して勉強をしていた頃は、わたしの家にはゲームなどの娯楽がまったくありませんでした。先にお伝えした事前に戦略を練ることもそうですが、これも貧乏ゆえにたまたま気づくことができた、独学を成功させる方法のひとつです。

東大とハーバードに合格した最強の独学術2

加えて、集中して勉強するためには、時間帯も重要です。わたしが高校3年のときにはそれこそ1日中勉強していましたが、いま、わたしが勉強時間に充てているのは。毎朝5時から7時を勉強やアウトプットをする時間にしています。睡眠を取って集中力は高まっていますし、周囲はまだ静か。スマホを見てもSNSの更新なども活発ではないですし、ニュースもそれほど入ってこない。「集中して勉強できる時間が朝」なのです。

また、集中力を維持するためには、「決まった時間ごとに休憩する」ことも大切です。人間の集中力はだいたい1時間くらいしかもちません。1時間をひとつの単位としたら、1時間ごとに10分程度の休憩をする。しかも、だらけないために、「休憩時間にすることを決める」こともおすすめします。なにをするかは、自分なりのものでかまいません。

東大受験を目指していた頃のわたしの場合、親がいなくて家事もする必要がありましたから、休憩時間には食器洗いや洗濯などの家事をしていました。「全然休憩になっていないじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、家事と勉強では脳の使い方がちがいますし、家事では体も動かします。しっかりリフレッシュすることができるのです。

当時のわたしがしていた一番「休憩らしい」ことというと、音楽を聴くことですね。日々の休憩時間に音楽を聴く、また、週に1回は1時間まとめて音楽を聴くということをしていました。わたしが大好きだったのはTHE BLUE HEARTS。1時間、選んだアルバムを流し続けて熱唱する(笑)。いいストレス解消になりましたよ。

東大とハーバードに合格した最強の独学術3

教えてもらい続けた人にはない応用力をもたらす

先に、「休憩時間にすることを決める」べきだとお伝えしました。これは習慣化にもつながる発想です。高校3年のときのわたしは、休日には最長14時間の勉強をしていました。普通は無理だと思うでしょう。当時のわたしも最初はそんなにできるとは思っていませんでした。でも、休憩も含めてやるべきことを決めて繰り返せば、それが習慣化する。そして、「もうちょっとできる」というふうに思えてくるのです。

ジョギングなどの運動で同じような経験をした人も多いでしょう。最初から無理をする必要はありません。ゆっくり走ることから始めて、1秒でも前日のタイムを上回るようにすれば、いずれ、最初は考えもしなかったタイムで走れるようになります。

社会人の勉強であれば、土日に2時間くらいの勉強をすることから始める。慣れてきたら、土日の勉強時間を増やすか、あるいは平日にも少しずつ勉強をするようにする。重要なのは、毎週、同じ曜日の同じ時間にすることです。そうして習慣化できれば、勉強がまったく苦しいことではなくなり、徐々に勉強時間を増やすことができるのです。

東大とハーバードに合格した最強の独学術4

ここで、わたしの独学術をまとめておきましょう。

【本山流独学術の基本】
1. 事前にしっかり戦略を練る
2. 目標達成の期日を決める
3. 集中の邪魔になるものを排除する
4. 集中できる朝におこなう
5. 決まった時間ごとに決まった休憩をする
6. 最初から無理をせず習慣化する

社会人なら資格試験などのために勉強をしている人も多いでしょう。そういったわかりやすい勉強のほかにも、この独学術はさまざまなことに応用できるものです。仕事のためにある言語を習得しなければならない、ある業界のことを知らなければならない。そういった立場にある人も、この独学術をぜひ試してみてください。実践のなかで身につけた独学力は、あらゆることで成功をもたらしてくれるはずですよ。

【本山勝寛さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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【プロフィール】
本山勝寛(もとやま・かつひろ)
1981年3月13日生まれ、大分県出身。高校時代、アルバイトで自活しながら独学で東大に現役合格。東京大学工学部システム創成学科卒業後、ハーバード大学教育大学院国際教育政策専攻修士課程を修了。現在は公益財団法人日本財団にて「子どもの貧困対策チーム」チームリーダーを務め、少子化問題、奨学金問題、子どもの貧困問題などについて評論活動をおこなう。また、自身の経験を基にした勉強法、暗記法などについての執筆活動にも積極的に取り組む。著書に『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。 貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ社)、『最強の独学術 自力であらゆる目標を達成する「勝利のバイブル」』(大和書房)、『一生伸び続ける人の学び方』(かんき出版)など。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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