勉強というと、学校でおこなわれる、テストや受験に関するもの。社会人の場合であれば、資格の取得や語学力を伸ばすためのものといったイメージが強いはずです。

でも、貧困家庭に育ちながら独学で東大、ハーバード大に合格した本山勝寛(もとやま・かつひろ)さんは、「それだけが勉強ではない」と語ります。そして、「人生においてはもっと大切な勉強がある」とも。それはいったいどんなものなのでしょうか?

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

生涯をかけて自己成長し夢を叶えるための独学

ひとことで独学と言っても、いろいろな種類があります。わたしは、それらを「独学1.0」「独学2.0」「独学3.0」というふうに分類して考えています

まずは独学1.0から。これは、多くのみなさんがイメージする勉強のことです。大学受験のため、資格試験のため、TOEICで何点を取るためといった、明確に定まった目標を達成するための勉強だいたい1年くらいまでの時間でおこなう短期的なものです

これはこれで大いに意義があり、いままでもこれからもずっと必要とされる勉強でしょう。でも、いまの時代にはそれだけでは十分ではありません。人生は大学受験で終わるわけではないですし、ある資格を持っていれば安泰というわけでもない。しかも、現代社会はものすごいスピードで変化しています。その変化に対応するため、常に新しいものを吸収して学び続ける必要があるのです

学ぶべきことは、いま携わっているビジネスに直結することだけではありません。いますぐには役立たなくとも、もっと広い視野を持って教養を深める必要があります。それは歴史のことかもしれないし、IT技術の発展についてのことかもしれない。時代の変化が激しいからこそ、いずれ必要とされるときのためにあらゆることを学んでおくのです。それらはビジネススクールではなかなか学べるものではありませんから、独学で学ぶ必要が出てくる。となると、これは3~5年くらいの時間をかけておこなう中期的な勉強という位置づけになる。それをわたしは、独学2.0としています。

では、独学3.0とはどんなものかというと、独学1.0と2.0を組み合わせておこなう、長期的な勉強のこと人生、生涯をかけて自己成長していく、夢を叶えるための勉強です。大学受験を終えて、あまり具体的な目標を持っていない大学生の場合、大学時代はどんなものになるでしょうか。おそらく、いろいろなチャレンジをしたり、本を読んだり、経験をして興味関心を広げるフェーズになるでしょう。それは、まさに独学2.0です。

その勉強をしているうち、「もっと掘り下げたい」と思う分野に出会うはずです。そうしたら、今度は独学1.0でその分野の知識を深めたり、その分野に資格があればそれを取得したりする。そして、その後はまた独学2.0に戻る……。独学1.0と2.0を繰り返すことで、絶えず自分の得意分野を広げながら専門性を深めることができる。こうして常に学び続けること、それこそが独学3.0なのです。

学ぶことはなんだってかまいません。下手に勉強だと思わず、好きなことでいい。旅が好きであれば、旅を通して学べることを深める。海外旅行で訪れた国の文化、食べ物、歴史、言語……。興味が向かうままに学べばいいのです。すると、趣味ではじめたものも、どこかでビジネスに役立つこともある。いまの仕事には直結しなくても、いずれつながるかもしれないし、仕事のヒントをくれるかもしれません。こうして学び続けることが、みなさんの人生を楽しく豊かなものにしてくれるはずです。

「いつか役に立つかもしれない」ことを学び続けるのは多少の辛抱を必要とするかもしれません。でも、発想次第でとても有意義なことに思えてくるものでもある。わたしは、「独学は投資」だと思っています。投資は、短期間では成果を実感しづらいものです。でも長い時間で考えるとどうでしょう。たとえば、年利10%で資産運用をするとします。1年後にはわずか10%しか資産は増えません。でも、10年も続ければ、元手の2倍、3倍になる可能性がある。

学びもそれと同じことではありませんか? 勉強という自己投資を続ければ、10年後、20年後にはまったくの別人になると言っていいでしょう。片田舎の貧困家庭で育ったわたしは、将来、自分が東大やハーバード大に行くとは思ってもいませんでした。いまは世界中を回ったり、本を出版したりと、幼い頃のわたしが想像もしていなかった仕事をしている。それはやっぱり学び続けることで年に数%でも成長してきたからだと思うのです。

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貧困に苦しむ子どもにきちんと学びの場を提供するのが夢

いま、学ぶ際にわたしが意識していることもお伝えしておきましょう。それは「アウトプットし続ける」こと。アウトプットを意識すると、アンテナが高く張られ、インプットの質、つまり学びの質が高まるからです。アウトプットの場は、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで十分。みなさんも、ぜひ試してみてください。

わたしの場合で言うと、本やブログの執筆、講演活動がアウトプットにあたります。それは今後も続けていきますが、本の執筆についてはより発展したテーマを手がけてみたいとも思っています。これまでのわたしの著書は、東大受験やハーバード大受験の際のわたしの経験に基づいた勉強法に関するものが大半です。なぜかというと、勉強熱心な人が多いおかげで、そのニーズがあるからです。そのなかでも、お金をかけずに勉強を成功させるための独学法を推奨してきましたが、さらにこのテーマを社会的な取り組みや教育政策などに拡大させていきたいと思っています。

わたしが勤めているのは、公益財団法人日本財団というところ。基本的な仕事は、世の中の社会問題を解決する社会貢献事業をおこなうことです。そのなかでもわたしが力を入れているのが、教育であり、学びを支援すること。いまは子どもの貧困対策事業のリーダーを務めています。

わたし自身、貧困家庭で育ち、学びを通して人生を切り開くことができました。その経験を社会に還元し、貧困に苦しむ子どもたちが自立する力を身につけられるように、きちんと学びと成長の機会を提供する。それがわたしの夢です。お金がなくて塾に通えないような子どもが学ぶ力をどう身につければいいのか、奨学金返還の滞納といった問題を解消するために社会制度をどう変えればいいのか——。そういったことも今後は発信していきたいと考えています。

【本山勝寛さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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本山勝寛

大和書房(2018)

【プロフィール】
本山勝寛(もとやま・かつひろ)
1981年3月13日生まれ、大分県出身。高校時代、アルバイトで自活しながら独学で東大に現役合格。東京大学工学部システム創成学科卒業後、ハーバード大学教育大学院国際教育政策専攻修士課程を修了。現在は公益財団法人日本財団にて「子どもの貧困対策チーム」チームリーダーを務め、少子化問題、奨学金問題、子どもの貧困問題などについて評論活動をおこなう。また、自身の経験を基にした勉強法、暗記法などについての執筆活動にも積極的に取り組む。著書に『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。 貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ社)、『最強の独学術 自力であらゆる目標を達成する「勝利のバイブル」』(大和書房)、『一生伸び続ける人の学び方』(かんき出版)など。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。