できるリーダーは常に○○を見ている。「リーダーレベルの視座」あなたはもてていますか

リーダーレベルの視座をもったビジネスパーソンたち

みなさんはいずれ、リーダーになりたいですか? では、「リーダーに必要なもの」とはどんなものでしょうか? 

それぞれに回答をイメージしたと思いますが、多くの企業でリーダーシップ指導を行なうエグゼクティブ・コーチの林健太郎さんは、リーダーに必要なのは「高い視座」だと言います。「高い視座」とはどういうもので、どうすれば身につけられるのかを伺いました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
林健太郎(はやし・けんたろう)
1973年7月18日生まれ、東京都出身。リーダー育成家。合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。一般社団法人国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、日本におけるエグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。2016年には、フィリップ・モリス社の依頼で、管理職200名超に対するコーチング研修を実施。大手企業や外資系企業、ベンチャー企業や家族経営の会社まで、のべ2万人以上のリーダーにリーダーシップ指導を行なってきた。企業向けの研修講師としての実績も豊富で、フェラーリ社の日本の認定講師を8年間務めるなど、リーダー育成に尽力。 著書に『否定しない習慣』(フォレスト出版)、『優れたリーダーは、なぜ傾聴力を磨くのか?』『できる上司は会話が9割』(以上、三笠書房)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

リーダーとは「他人に影響を及ぼす人」

各企業のリーダー層に対してリーダーシップ指導を行なっているという仕事柄、私はこれまで多くの課長や部長などのリーダーに会ってきました。しかし、そういった人たちに「あなたはリーダーですか?」と聞くと、「うーん……」と考え込んだ末に、多くの人が「リーダーではないと思います」と答えるのです。

おそらく、自分のなかで、リーダー像としてまるでスーパーヒーローのような人をイメージしているからなのでしょう。「リーダーたるもの、あんな仕事もこんな仕事も完璧にできなければならない」「自分はそのレベルにはとうてい達していないから、リーダーではない」と考えるわけです。

でも、リーダーはそんなに難しいものではありません。リーダーはどういう人を指すかという解釈はさまざまだと思いますが、私は「他人に影響を及ぼす人」と定義しています。つまり、その意味で言えば、ひとりで山にこもって人間関係を断絶しているような人でない限り、日常的に誰かとコミュニケーションをとっている人は、誰もがリーダーです。

誰かになにかを言えば、相手はなんらかの感想をもつなど、コミュニケーションをした相手の思考や行動に少なからず影響を与えるからです。もちろん、相手に与える影響には、人によって強弱もあれば、いい影響も悪い影響もあります。

そして、周囲の協力を得られ、チームとしてひとつの仕事を成し遂げることにつながるような影響をまわりに与えられる人こそが、仕事におけるいいリーダーだと言えます。

リーダーとはどういう人かについて解説する林健太郎さん

多くのリーダーが、リーダーになるための訓練を受けていない

しかし残念ながら、日本の企業においてはそういうリーダーは決して多くありません。なぜなら、多くの人が、そういった好影響を周囲に与えられるリーダーになるための訓練を受けることがないままリーダーに抜擢されるからです。

リーダーに抜擢されるのは、いわゆる「仕事ができる人」です。ただ、リーダーになる前の仕事というのは、基本的にはチームで成す大きな仕事が細分化されたものですよね。業種や職種によって多少の違いはあるかもしれませんが、「あなたはこの仕事をしてくれ」と任される仕事は、ひとりでこなすタスクであることがほとんどです。

そして、そういう仕事をうまく遂行できる人が、ある日突然、「あなたは仕事ができるから、リーダーになってくれ」と言われます。その後、リーダー研修などを受けさせてもらえればまだいいのですが、そうでない場合は、リーダーとはどういうものかも知らないままリーダーになってしまいます。

すると、どういうことが起きるでしょうか? その人は、仕事ができる人です。そのため、チームのメンバーの仕事ぶりを見て、「もっと早くできない?」「そんなの簡単でしょ?」といった発言をして、チームの和を乱してしまうのもよくあるのです。

あるいは、リーダーの重要な仕事である、「人に仕事を任せる」ということができにくくもなります。仕事ができる人であるリーダーは、「誰かに任せるより自分でやったほうが早い」と考えがちだからです。

しかし、そんな仕事の仕方をしていては、いいリーダーにはなれるはずがありません。ひとりのプレーヤーとしては優秀かもしれませんが、ひとつのタスクに集中してしまい、仕事の全体像を見渡してメンバーに的確な指示やお願いをすることが難しくなるからです。

リーダーになる訓練を受けないままリーダーになることの弊害を語る林健太郎さん

リーダーに必要な視座を得るため、とにかく「まわりを見る」

そう考えると、リーダーに必要なものが見えてきます。まさに、仕事の全体像を見渡すことができる「視座」です。この視座については、以下のような9つのレベルがあると私は考えています。この表のなかでは「社長」という表現をしていますが、読者のみなさんの業務環境によって「上長」や「経営層」と置き換えていただいてもかまいません。

【9つの視座レベル】

9つの視座レベル

ここでは各レベルの個別の解説は避けますが、視座のレベルが1〜9に上がるにしたがって優秀なリーダーと言えるようになります。私が、「最低限、リーダーにはこのレベルが必要」と考えるのは、レベル4です。

レベル3と4ではなにが違うでしょうか? それこそ、先にお伝えしたような、仕事の全体像を見渡すことができるかどうかという点です。レベル3までの視座は、意識が自分自身へ向かっています。内向きなのですから、仕事の全体像を見渡せません。

では、どうすれば視座を高めていけるでしょう。これについては、とにかく「まわりを見る」ことに尽きます。あなたのチームのメンバーはそれぞれどんな仕事をしていますか? それらがどんなかたちで最終的な大きな仕事につながっていますか? あなたの仕事、あるいはほかのメンバーの仕事の納期はどうしてその日になっているのでしょう?

わかっているようで、意外とわかっていないかもしれません。しかし、そういった全体像が見えないうちは、リーダーに必要な視座をもてていないのです。若いうちは自分に与えられたタスクをこなすことだけで精一杯かもしれません。でも、将来的にリーダーになりたいと思うのなら、普段から「まわりを見る」ことをぜひ強く意識してほしいと思います。

リーダーレベルの視座について解説してくれた林健太郎さん

【林健太郎さん ほかのインタビュー記事はこちら】
優秀なリーダーのコミュニケーションの特徴。「最近どう?」と部下に聞き続ける理由とは
将来的にいいリーダーになれる人が「リーダーになる前」からしている2つの行動習慣

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