「勉強するつもりでいたのに、SNSばかり見てしまって勉強できなかった……」
「『毎日勉強するぞ』という目標を何度立てても、毎回達成できない……」
このように悩んでいる人が試してみるといいのは、目標の立て方を工夫すること。
この記事では、科学的知見をふまえた、勉強がうまくいく目標設定のコツ3選をご紹介します。これを実践すれば、今度こそ勉強習慣をつけられますよ。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。
- 1.「具体的な」目標を設定する
- 2.「小さな」目標からひとつずつ達成する
- 3.「行動のスイッチ」を決める
- 3つのコツを活用し「勉強の習慣化」にチャレンジしてみた
- 生活サイクルを大きく変えずに勉強を習慣化できた!
Locke, Edwin and Latham, Gary P. (1991). “A Theory of Goal Setting & Task Performance,” The Academy of Management Review, Vol.16, No.2.
GoStrenghths!|What is Goal-Setting Theory?
Atlassian|モチベーションの目標設定理論
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|大きな目標を達成したければ、小さな習慣から始めなさい
Lawson Clinical Psychology|If-then planning: How to boost your chances of successfully changing your behaviour
Melbourne Centre for Behaviour Change|If-Then Planning (MCBC Resource)
1.「具体的な」目標を設定する
勉強の習慣化に成功したいなら、目標は具体的に立てましょう。
たとえば、「勉強を頑張る」や「勉強を続ける」といった目標は具体的でなく、何をもってその目標が達成に至るのかが明確ではありません。望ましいのは、「資格の模試で100点をとる」「1日30分の勉強を1か月続ける」といった、より中身のある目標なのです。
アメリカの心理学者エドウィン・ロック氏は1968年に、「具体的で難しい目標を設定した人は、一般的で簡単な目標を設定した人よりもパフォーマンスが良い」という「目標設定理論」を発見したそうです。具体的な目標を立てると達成の可能性が高まるのだとか。(参考:GoStrenghths!|What is Goal-Setting Theory?」)
目標は、多少難しくても具体的に設定すること。科学的な目標設定の基礎として、このポイントを念頭に置きましょう。
2.「小さな」目標からひとつずつ達成する
いくら具体的な目標でも、あまりに難しい目標だと勉強する気がなくなってしまう人も多いはず。目標を具体化するだけでなく細分化し、小さな目標からひとつずつ達成していくことで、勉強を継続できます。
エグゼクティブコーチのサビーナ・ナワズ氏は、自分を変えるには「ばかばかしいくらい小さな習慣」から始めることをすすめています。「やる意味がない」と感じるほどの小ささがいいのだとか。一例として、「1時間読書する習慣をつけたい」なら「毎晩1パラグラフ読む」ことから始めるといいと同氏は述べます。(カギカッコ内引用元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|大きな目標を達成したければ、小さな習慣から始めなさい)
なぜこれほどまでに小さくするのかというと、成功体験を着実に積み上げていくためです。昨日もできた、今日もできた……と、小さな目標を達成し続けることで、だんだん「せっかくだから今日はもう少しやってみよう」と思えるようになります。そうしていつしか、難しい目標も達成できるというわけです。
3.「行動のスイッチ」を決める
目標を立てたのはいいけれど、つい勉強以外のことに手をつけてしまう……そんな人は、「もし〇〇したら、△△する」という構文を活用してみては?
これは、社会心理学者のハイディ・グラント氏が行動を起こす際の動機づけとして考案した「if thenプランニング」という手法です。“改めたい行動” に関連する状況を特定し、その状況下で “改めたい行動を克服” できるような “別の行動を指定” するというもの。(参考:Lawson Clinical Psychology|If-then planning: How to boost your chances of successfully changing your behaviour)
たとえば、普段通勤電車で音楽を聴いている人が、毎月3冊ビジネス書を読むという目標を決めたとしましょう。本をなかなか読む気になれず、好きな音楽を聴いてしまう……という場合は、if then プランニングにのっとって状況を整理してみましょう。
状況:朝、通勤電車に乗ったとき
改めたい行動:スマートフォンで好きな音楽を聴く
上の行動を克服する別の行動:スマートフォンでオーディオブックを聴く
このように、特定の状況下でやることを決めておくのです。この例であれば、ついつい音楽を聴いてしまう人でも、「電車に乗ったらオーディオブックを聴く」というルールを守るだけで、目標の達成に近づけます。
目標をいったん決めたあとにどうしてもやる気が起きない場合は、if thenプランニングを活用して、行動のスイッチを押してみることをおすすめします。
3つのコツを活用し「勉強の習慣化」にチャレンジしてみた
ここまでに紹介した3つのコツを活用して、筆者も勉強の習慣化に挑戦しました。期間は8日間。学生なので普段から勉強している身ですが、オフタイムとなるとどうもダラけてしまい勉強できないことが多いので、今回やってみることにしたのです。
まず下準備として行なったのが、自身の勉強習慣の現状を知ること。大学にいる時間と移動時間、そして食事と睡眠の時間を除けば、22時から24時までのおよそ2時間が、1日のうち自由に使える時間です。
これまではその自由時間にスマートフォンで動画を観たりゲームをしたり、時間を浪費していました……。この2時間を学習の機会ととらえて、実践することにします。
1. 「具体的」で難しい目標を設定する
ちょうど大学のテスト期間中だったので、「前近代日本文学史のテストで9割以上の点数をとる」ことを目標としました。数値も用いた具体的に、かつやや難しめに目標を設定しています。
テストの性質上、この目標を達成するには、教科書をただ読み込むだけでなく、自身で具体例を考えられるようになる必要があります。そのため、問題に自信をもって回答できる自身の姿を念頭に置いて勉強を進めました。
2. if then プランニングで「小さな目標」と「行動のスイッチ」を設定する
次はif thenプランニングの出番。目標を実現できるような学習習慣を身につけるために、「どんな状況になったら、何を勉強するのか」を決め、紙に書き出しました。
次のような具合で、動画やゲームを “小さな勉強行動” に置き換えました。
状況:帰宅して手を洗ったら
行動:作品と作者がセットになっている単語カードを1枚だけめくる
状況:食事が終わったら
行動:教科書の解説を音読だけする
勉強のハードルは極力下げています。最初のうちは簡単に「単語カードを1枚だけめくる」「解説を暗記せず声に出して音読する」だけでよしとしました。
以下が、8日間のif then プランニングの一覧です。
生活サイクルを大きく変えずに勉強を習慣化できた!
実践を始めてから1日め・2日めは、設定したとおりの小さな勉強をしっかり実行。3日め以降は、目標をあまりにも簡単に達成できたがゆえの不完全燃焼感があったので、「せっかくだからもう少し追加で勉強してみようかな」と、思いのほか勉強できました。
だいたい3分以内に終わるものを1日分の勉強として設定したため、普段の生活サイクルを大きく変えずとも、毎日続けて勉強することが可能に。そして嬉しいことに、テストが終了したあとも現在に至るまで、勉強習慣は継続しています。
目標を設定するときには、紙に書き出すことを強くおすすめします。スマートフォンのメモ機能などを用いることも可能ですが、手書きだと「自分が立てた目標」という印象が強くなり、より達成したいと頑張れるようになりますよ。
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筆者の実践を交えながら、科学的な目標設定のコツをご紹介しました。いつも目標を達成できない、なかなか勉強に取りかかれないという人は、ぜひこれまでのやり方を少しだけ変えてみてください。