仕事で強いのは「示唆」をベースに動ける人。元BCGコンサルが教える、最高の示唆を導く3つの言葉

高松智史さんインタビュー「元BCGコンサルが教える、最高の示唆を導く3つの言葉」01

現在はよく、「明確な答えがない時代」と言われます。状況がどんどん変わるのですから、ビジネスにおいても「どんなビジネスモデルや商品がヒットするのか?」という問いに対して、「絶対的に正解」と言える答えはなかなか見つけられません。

そんな時代において、かつてBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)でコンサルティング業務に従事していた高松智史(たかまつ・さとし)さんは、「示唆」がキーワードになると言います。はたして、高松さんが言う示唆とはどんなものでしょうか。その「示唆」を汲み取るために知っておくべき3つの言葉とともに、解説してもらいます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「示唆」=「ファクト(事実)から言えること」

この本編で、私が言う「示唆」とは、「ファクト(事実)から言えること」を指します。

英語が得意な人が言うなら「インプリケーション(Implication)」となるでしょうし、私が勤務していたBCGでよく使われていた言葉なら「ソーワット(So-What)」、私自身が好きな言い方であれば「メッセージ(Message)」となります。これらはすべて、示唆と同じ意味で使える言葉です。

普段からわざわざ示唆というものを意識している人はそう多くないかもしれませんが、じつは誰もが日常のなかで数多くの示唆をとらえています。

たとえば、ロングヘアだった女性が髪をばっさり切ったとします。その姿を見て、まわりが驚くようなことがありますよね。その反応のなかにも、「ファクト(事実)から言えること」=「示唆」は存在します。

もちろん、「髪をばっさり切った」というのはただのファクト(事実)であり、示唆ではありません。でも、「イメチェン?」「スポーツでも始めたの?」「もしかして失恋した?」などの反応は、「ファクト(事実)から言えること」であり、つまり示唆なのです。

高松智史さんインタビュー「元BCGコンサルが教える、最高の示唆を導く3つの言葉」02

示唆を汲み取り行動につなげることが、自分の付加価値を生む

では、なぜ仕事においてこの示唆が大切になるのでしょうか? そのメリットはいくつもあります。

たとえば、いつもは自分を「高松さん」と呼ぶ上司が、「『たかまっちゃん』、ちょっといい?」と言ってきたとします。そのとき、「上司に呼ばれた」と思うだけなのが、ファクトをファクトのままでとらえたということです。

一方、「いつもは高松さんと呼ぶのに、わざわざ『たかまっちゃん』とカジュアルに呼んできたということは、なにかお願いをされるのかな?」と考える。このようなことが、ファクトから示唆を汲み取るということになります。

そうして示唆を汲み取ることができれば、上司のところに行くやいなや、「なにかお手伝いすることはありますか? なんでもしますよ」と切り出すこともできます。これが示唆をベースにした動き方であり、上司からすれば「きみ、最高だな!」となって関係性を深めたり上司からの評価を高めたりすることにもなるでしょう。

あるいは、こんな事例だけでなく、店舗ごとの売上を示したグラフを見ながら、「渋谷店は売上ががくっと落ちているから、なにか問題が起きているかもしれない」「原宿店は急激に売上がアップしているから、どんな施策を打ったのか店長に聞いてみよう」というふうに考えたり動いたりすることも、やはり示唆を汲み取ったシーンです。

ファクトをファクトとしてとらえることは、誰にでもできます。そうではなく、ファクトから先のことを読み取り、そして行動につなげることで、ビジネスパーソンとしてのその人らしさ、その人の付加価値を生むことができるのです。

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よりよい示唆を汲み取るための、3つの言葉

では、仕事においてしっかりと示唆を汲み取るには、どうすればいいでしょうか。私は、「見たままですが」「なにが言えるっけ?」「それは100人中何人が納得しそう?」という3つの言葉を口癖とすることをすすめています。

なんらかのファクトに触れたときに、まずは「見たままですが」と前置きしたうえでファクトを言います。そうしないと、会議のような複数の人がいるシーンでは、「それ、ただのファクトだろ」と言われて、付加価値ゼロの人間という評価をされてしまうからです。あるいは、この言葉には、ファクトをファクトとしてしっかりとらえられるという働きもあります。

そのうえで、次に「なにが言えるっけ?」と言います。これは、自分に対して心のなかで言うことが基本となります。「ファクトからなにが言えるか?」と示唆を考えるきっかけとするわけです。

でも、会議のような場面では、「ということは、ここからなにが言えますかね?」と周囲に投げてしまってもいいでしょう。そうしてメンバーみんなで考えれば、よりよい示唆を見つけられる可能性が高まりますし、そもそも問題提起できるだけでも価値のある人材として評価されます。

そうしていくつかの示唆を導くことができたら、最後に「それは100人中何人が納得しそう?」と問いかけてみましょう。ファクトは、「100人中100人が納得する」ものです。ファクトは揺るぎない事実なのですから、誰もが納得せざるを得ません。

でも、「ファクト(事実)から言えること」=「示唆」となると話が変わってきます。示唆の内容がファクトから飛躍すればするほど、「本当にそう言えるかな?」と疑問に思う人が増えるからです。ただ、じつはこのことが重要なのです。

たとえば「100人中90人が納得する」示唆は、多くの人が思いつく内容です。そんなありきたりな示唆を汲み取っただけでは、ビジネスにおいてこれまでになかった画期的なアイデアを生むようなことにはつながりにくいでしょう。

では、逆に多くの人には見つけられず、そして成果につながる示唆とは、「100人中何人が納得しそう」なものでしょうか。私の感覚としては、「100人中3人が納得する」示唆がベストだと考えています。納得しそうな人がそれ以上少なくなって3人未満となると、その示唆は単なる「勘」とか「思いつき」に過ぎず、やはり成果にはつながりにくいでしょう。

「100人中3人が納得する」示唆は、その示唆を聞いただけでは納得しない人が100人中97人もいる内容だということです。それでも、その97人に対して、「こういうわけで、こう言えるのではないか」とロジックを説明すれば、「なるほど、そう聞くとたしかにそう言えるかも」と思ってもらえる。そういった示唆がよい示唆だと言えます。

高松智史さん

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  • 作者:高松 智史
  • 実業之日本社
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【プロフィール】
高松智史(たかまつ・さとし)
「考えるエンジン講座」/株式会社KANATA代表取締役。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て「考えるエンジン講座」を提供する株式会社KANATAを設立(https://www.kanataw.com/)。コンサルタントやビジネスパーソンを中心にこれまで3,000人以上が受講。同講座は法人にも人気を博しており、これまでにリクルート、塩野義製薬、三菱商事、アクセンチュア、デロイト等での研修実績がある。YouTube「考えるエンジンちゃんねる」の運営者でもある。著書に『コンサルが「最初の3年間」に学ぶコト』(ソシム)、『フェルミ推定の技術』(ソシム)、『変える技術、考える技術』(実業之日本社)などあり、著者累計25万部。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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