「正解が全然わからない」ときの正しい考え方。“2つ以上の○○” をつくれば思考は深まる!

高松智史さんインタビュー「正解が全然わからないときの正しい考え方」01

目まぐるしく変化する予測困難ないまの状況は、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」という4つの単語の頭文字をとって「VUCA」とも言われます。

そんな時代においては常に「『答えのないゲーム』を戦っていかないとならない」と語るのは、かつてBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)でコンサルティング業務に従事していた高松智史(たかまつ・さとし)さん。そもそも「答えのないゲーム」とはなにか、そしてそのゲームをどう戦えばいいのか、解説してもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「答えのないゲーム」に立ち向かわなければならない時代

私たちは、つい無意識のうちに「答えのあるゲーム」の考え方、戦い方というものをしてしまいます。

その原因の多くは、日本の教育システムにあるのでしょう。義務教育、受験、就職活動などにおいて、「これが正解」と言われるものを追い求めるようにずっと仕向けられてきました。そのために、「答えのあるゲーム」の考え方、戦い方が染みついてしまっているのです。

でも、時代は大きく変わりました。時代の変化のスピードが加速度的に上がっていると言われるように、いまは未来を予測することがとても難しい時代です。新型コロナウイルスの蔓延やロシアによるウクライナ侵攻が起きるといったことを、事前に予測できた人がはたしてどれくらいいたでしょうか。いわば、「答えのないゲーム」に立ち向かわなければならない時代になっているのです。

このことは、人生やキャリアにおいても言えること。ひとむかし前であれば、「大企業に就職すれば人生安泰」などと言われていました。「大企業に就職する」という「正解」に向かえばよかったのです。

でも、いまはそういう時代ではありません。「大企業に就職すれば人生安泰」なんてことをTwitterでつぶやこうものなら、それこそ炎上してしまう可能性だってあるでしょう。なぜなら、世の中の多くの人が「いまの時代における人生やキャリアは、答えのないゲーム」だと気づいたからです。

高松智史さんインタビュー「正解が全然わからないときの正しい考え方」02

「答えがないゲーム」を戦うには、答えを求めてはならない

もちろん、「答えのないゲーム」を戦わなければならないのは、ビジネスにおいても同様です。かつてなら、「この業界においては、こういうビジネスが当たる」といった、ある程度の「正解」のようなものはあったでしょう。

ところが、時代の変化が激しくなったことにともない、いつどんなビジネスがヒットするかといったことはなかなか予測できません。いまという時代におけるビジネスもまた、やはり「答えのないゲーム」なのです

その「答えのないゲーム」に対しては、「答えはこれ? 合ってる?」「間違いだったか。ではこれ?」「当たりだ。OK!」という「答えのあるゲーム」の考え方、戦い方では通用しません。「答えがない」のですから、これは当然のことですよね。

では、どうすればいいでしょうか? 「答えがないゲーム」を戦うときに、誰かに「合っていますか?」と聞いても答えてくれる人などいません。もし答えてくれたとしても、人によって答えはまちまちでしょう。

つまり、「答えがないゲーム」を戦うには、そもそも答えを求めてはならないのです。でも、「答えがない」からといってなにも選択せずにいることはできません。「答えがないゲーム(問題)」は、次々に現れてはあなたに選択を迫ってくるからです。

高松智史さんインタビュー「正解が全然わからないときの正しい考え方」03

ふたつ以上の選択肢をつくり、比較するなかで思考を深める

そこから、「答えがないゲーム」のひとつの戦い方が見えてきます。その戦い方とは、「ふたつ以上の選択肢をつくり、選ぶ」というものです。

「答えがないゲーム」においては、絶対的に正しい、あるいは絶対的に間違っているということは判断できません。ですから、強引にでもふたつ以上の選択肢をつくり、比較するのです。

そうするなかで、相対的にベターと言える選択肢を見つけられるでしょう。そのとき、ベターな選択肢を見つけられること以上に、「どうしてこっちがベターなのか?」と考えることこそがより重要です。それだけ、思考を深められることになるからです。

この「ふたつ以上の選択肢をつくり、選ぶ」という戦い方は、さまざまな場面において有効です。新規事業案を考えるといった場面でなくとも、たとえばごちそうになった上司にお礼のメールを送るようなときにも力を発揮します。

もし、お礼のメールを「答えのあるゲーム」ととらえると、思考停止してしまい、「昨日はありがとうございました」のような、自分でなくとも書けるメールを送ることになるでしょう。これでは、上司との関係は深まりません。

一方、「答えのないゲーム」ととらえるとどうでしょうか? ふたつ以上の選択肢をつくろうとするのですから、「どんなメールを送るべきか?」と考え、「昨日の会話を思い出す」といったプロセスが入ってくるかもしれません。

そうして、「○○さんの『仕事はやらされていると思ったら終わりだよね』という言葉にはっとさせられ、仕事への向き合い方が変わりました」といった自分なりの言葉を見つけようとするかもしれませんし、「いや、待てよ。こんな文面のほうが上司にきちんと感謝が伝わるかもしれない」と思考を繰り返し、深めることになるでしょう。

このようにして複数の選択肢を比較しながら選んだメールであれば、「昨日はありがとうございました」とは比較にならないほど感謝を伝えられることは言うまでもありません。その結果、上司との関係が深まり、よりよい仕事ができるようにもなっていくでしょう。

高松智史さん

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「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術

「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術

  • 作者:高松 智史
  • 実業之日本社
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【プロフィール】
高松智史(たかまつ・さとし)
「考えるエンジン講座」/株式会社KANATA代表取締役。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て「考えるエンジン講座」を提供する株式会社KANATAを設立(https://www.kanataw.com/)。コンサルタントやビジネスパーソンを中心にこれまで3,000人以上が受講。同講座は法人にも人気を博しており、これまでにリクルート、塩野義製薬、三菱商事、アクセンチュア、デロイト等での研修実績がある。YouTube「考えるエンジンちゃんねる」の運営者でもある。著書に『コンサルが「最初の3年間」に学ぶコト』(ソシム)、『フェルミ推定の技術』(ソシム)、『変える技術、考える技術』(実業之日本社)などあり、著者累計25万部。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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