後輩や部下を率いる「リーダー」的な立場にいるみなさん。「デキるリーダー」と「デキないリーダー」の違いについて考えたことはありますか?
プレイヤー時代の優れた成績を評価されてリーダーを任される――これが昇進の自然な流れですよね。しかし、「プレイヤーとして必要な能力」と「リーダーとして必要な能力」は異なります。プレイヤーとしては優秀だったのに、いざリーダーになってみると思ったような結果を残せない……そう悩んでいる人も少なくないでしょう。
そこで今回は、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」の講座『このリーダーについていきたいと思われる!「リーダーシップセオリー」入門講座』より、デキるリーダーになるための基本を探っていきます。
講師の伊庭正康氏は、10万部を突破したベストセラー『できるリーダーは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の著者であり、リクルート時代にはマネージャー部門で年間全国トップ表彰を4回も受賞した “マネジメントのスペシャリスト”。デキるリーダーはいったい何を心がけているのでしょうか?
デキるリーダーは「傾聴」している
ご自身がまだ新人だった頃を思い返してみてください。目上の上司や先輩というのはどこか近寄りがたくて、特に初めのうちはかなり緊張してしまったのではないでしょうか。一方で、時間が経つなかで「この人にはなんでも話せてしまうな」「この人にはとても相談しやすいな」と印象が変わってきた人もいたはず。
伊庭氏は、メンバーとの関係性には「警戒」「安心」「親和」「信用」「信頼」という “5つのレベル” があると言います。目指すは当然「信頼」。「この上司は誰よりも味方になってくれる!」と感じてもらえれば、仕事を停滞させている困り事や相談事項を積極的に話してくれるようになりますよね。また、こちらとしても相手の本音を知れるため、メンバーを巻き込んだチーム運営が可能になります。そのために必要なのが「傾聴」のスキルです。
傾聴の基本姿勢は相手の話を受け止めてあげること。リーダーという立場にいる以上、時には指導のために厳しく接する必要も出てきますが、常日頃から威圧的な雰囲気をかもしていては、相談したいことも相談できなくなってしまいます。どんなに些細な内容であっても、まずはメンバーの話にきちんと耳を傾けるようにするべきです。
伊庭氏が述べる具体的な傾聴のコツは、以下の3点。
- 言葉を反復する(相手が言った言葉を繰り返してあげる)
- 感情に同意する(相手が抱いているであろう感情を言葉にしてあげる)
- 要約する(相手の話をまとめてあげる)
また所作としても、「体を向ける」「目を見る」「表情を出す」といった工夫ができます。上司と話すのは誰でも緊張するもの。「あなたの話をちゃんと聴いていますよ」という姿勢を見せて、相手が話しやすい空気をつくってあげましょう。それがあなたへの信頼感につながっていきます。
メンバー:上司さん、ちょっとよろしいですか?
あなた:(作業をする手を止めて)なんだい?
メンバー:先ほどA社の方とお会いしたのですが……
あなた:A社の人と会ってきたんだね。どうだったの?
メンバー:予算の獲得が難しいため、今期の契約は難しいと言われてしまいました……。
あなた:(残念そうな顔で)そうか、今期の契約は難しいと……それは残念だったね。
メンバー:はい……。とはいえ、来期は大きな予算を獲得できる見込みのため、契約を前向きに検討したいともおっしゃってくれました。
あなた:(表情を明るくして)それはよかったね! つまり、今期中は難しくても、来期に成約してもらえる確率はかなり高いということだね!
デキるリーダーは「拡大質問」を使っている
メンバーのことを思いやって「困っていることはない?」と尋ねても「大丈夫です」と返ってくる……。「相談したいことはある?」と聞いても「特にありません」としか言ってくれない……。よくありますよね。しかし伊庭氏は、メンバーのその言葉を鵜呑みにしてはいけないと指摘します。
先に述べたとおり、上司というのはちょっと緊張してしまう存在です。「こんなことを相談して大丈夫かな……」「こんなことを言って『デキないやつ』と思われないかな」などと心配してしまうのは当然。だからこそ、リーダーには本音をうまく引き出すテクニックが求められると言えるでしょう。そのときに役立つ「質問技法」があるのです。
質問の仕方は大きく2種類に分けられます。“はい/いいえ” あるいは “単語” で回答できる「限定質問(クローズドクエスチョン)」と、回答者が自由な形式で回答できる「拡大質問(オープンクエスチョン)」です。そして、デキるリーダーは後者の「拡大質問」を巧みに使います。質問の仕方を工夫することで本心を掘り起こし、“言うまでもないこと” “言いづらいこと” も話してもらえるように誘導できるのです。
伊庭氏によれば、拡大質問をするには、3つの「ど」を活用するといいとのこと。「どうして(理由)」「どんな(何)」「どのように(方法)」です。具体的な会話例を見てみましょう。3つの「ど」を使えば、相手の本音をうまく引き出せることがわかりますね。
あなた:Aくん、何か困っていることはないかな?
メンバー:特に……大丈夫です。
あなた:(※ここで会話を止めずに)なるほど……いまはどんなタスクに取り組んでいるのかな?
メンバー:A社向けのプレゼン資料を作成しています。
あなた:ふむ。すべて順調に進んでいる?
メンバー:じつは……正直な話、期日に間に合うかちょっと不安です。
あなた:それはどうしてかな?
メンバー:◯◯のグラフがあると説得力を出せるのですが、データ収集に手間取っていて……
あなた:なるほど。どうすれば解決できそうかな?
メンバー:誰かにお手伝いしてもらえるとすごく助かります……。
あなた:そうしたら、データ収集が得意なBさんにヘルプに入ってもらおうか。私からも頼んでおくよ。
デキるリーダーは「Will-Can-Mustの法則」を知っている
みなさんは、モチベーション理論のひとつである「Will-Can-Mustの法則」をご存じですか? これは、「自分が実現させたい状態(Will)」「自分の能力(Can)」「与えられた業務(Must)」の3要素が重なったときに人の自燃力が最大化するという理論です。
たとえば、上司から指示されたタスクが自分のやりたいこととマッチしていない場合、こなす能力は十分にあったとしても、「仕事だからやる」という状態に陥ってしまいがち。Willが置き去りになっているため、モチベーションが喚起されません。あるいは、仕事自体は好きなものの能力的に難しすぎると、今度は思ったような結果を残せないという事態に。Canが適しておらず、これまたモチベーションの減退を引き起こしてしまうでしょう。
前者であれば、本人が「やりたいこと」や「将来目指したいこと」といまの仕事をうまく紐づけてあげる必要があります。本人が興味関心をもって取り組める仕事をあてがうのもひとつの手ですし、その仕事が将来的にどう役立っていくのか意味づけを明確にするのも大切です。後者であれば、業務をスモールステップに分解して達成をサポートするといった工夫ができるでしょう。
「Will」「Can」「Must」どうすれば重ねられるか?
ここまでの説明で「Will-Can-Mustの法則」の概要はつかめたはず。
ではもっと具体的に、どうすればメンバーの「Will」を把握できるのでしょうか? メンバーの「Can」を伸ばすには何をすべきなのでしょうか? メンバーの主体性を引き出すには「Must」をどう設定してあげればいいのでしょうか? 答えは、「Udemy」の講座『このリーダーについていきたいと思われる!「リーダーシップセオリー」入門講座』で学べばわかります。
講座ではほかにも、新米リーダーにとっては悩みの種となる「ほめ方」「叱り方」のコツや、「ティーチング」「コーチング」などについても詳しく解説されています。自分のリーダーシップにさらに磨きをかけたいという人は、ぜひご活用ください!
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ほんの少しの心がけで、「デキるリーダー」への第一歩を踏み出すことができます。みなさんは今日から何をしますか?
「Improving Lives Through Learning(学びで人生をもっと豊かに)」を事業コンセプトとして掲げる米国法人Udemy,Inc.が運営する、世界3,500万人以上が学ぶオンライン学習プラットフォーム。2015年より、ベネッセコーポレーションが日本における独占的事業パートナーとして提携を開始した。C to C(Consumer to Consumer)プラットフォームで世界中の「教えたい人(講師)」と「学びたい人(学習者)」をオンラインでつなげている。最新のIT技術からビジネス、趣味まで幅広い領域をオンラインで学ぶことができ、世界で約13万コースが開講中、約5万7,000名の講師が登録している。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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