「10年後になりたい姿」が明確だと強い。今、人生を振り返ってみるべきワケ

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「10年後になりたい姿」を問われて、すぐに答えられますか? ただ漫然と働いているだけで、やりたいことも、なりたい姿もない……。そんなビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

しかし、「グロービス学び放題」BtoC事業責任者の下道陽平(しもみち・ようへい)さんいわく、「なりたい姿」や「やりたいこと」は明確であったほうがいいのだそう。今回は、下道さんに「なりたい姿」の探し方、そして具体的なスキルアップの方法についてお伺いしました。

「目の前の仕事への意味付け」が重要

端的に言うと、「やりたいことがあったほうが、今が充実する」と私は思っています。なりたい姿が明確だと、今行なっている仕事に対しての「意味づけ」ができるからです。例として、ヴァージニア大学心理学者のクリス・フルマン教授の行なった調査をご紹介しますね。

心理学は、基本的に「人間の心がどう動くのか」といったことに興味を抱いて学んでいる方が多いものですが、実際にその研究をするとなると、データ分析などの知見も必須になります。しかし、心理学専攻の学生のほとんどは、相関係数の話が出たとたんに不満の声をあげるのだそう。統計学は自分の生活には何の関連性もない、苦痛で退屈なトピックに見えてしまうそうなんです。

そこで、フルマン教授は、自身の研究室の学生を対象に、「統計学と自分の生活との関連性」についてエッセイを書かせたのだそう。その結果、「統計学を学ぶ意義」について、きちんと言語化した学生たち勉強に対するモチベーションや成績が大きく上がったと言います。

このように、「今、何のためにこの仕事をやっているのか」という「意味づけ」ができているのか否かで、その人の目の前の仕事に対するコミットメントが変わってきます。ひいては、モチベーションはもちろんのこと、成果も変わってくる。成果が変わればスキルも変わってくる。スキルが変わってくると、自分のやりたいことに対して、一歩一歩近づくことができているという充実感、達成感を得られてきます。

自分の「なりたい姿」を明確にし、「今、目の前のこの仕事をなんのためにやっているのか」ということをきちんと認識しておけるかどうかで、「今への充実度」が変わってくるのです。

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「あるべき姿」の探し方

では、どうすれば、「自分のなりたい姿」を明確にできるのでしょうか。たとえば、「来週の商談をなんとか成功させたい」といった短期的な課題を見いだすのは簡単です。しかし、「自分が人生をかけてでも達成したいことはなんなのか」となると、多くの人が悩んでしまうところ。

私がおすすめしているのは、「ライフラインチャート」(自分の人生の時間軸を横軸にとり、その中で感情がどうポジティブ・ネガティブに触れたかを縦軸に表したグラフ)を書いて、これまでの人生のどこで感情が大きく揺れたのか、そしてそれはなぜなのかを見ていく方法です。

自分がどういうポイントで嬉しい・悔しい・悲しいと思うのかは、そうそう変わりません。「自分自身の中の変わらないもの」として、自分の感情の動きをベースに見ていくことで、自分が本当にやりたいことを模索していくのは有効な手段だと思います。

たとえば、私の人生において気持ちが揺れた瞬間のひとつが、リーマンショックのタイミング。そのとき私は、マーケティング支援の仕事をしていましたが、リーマンショックなので、全体的に市場が縮小していくんですね。社内競合のようなことも起こり、仲も悪くなっていく。リストラの足音が聞こえてくる――お世話になった先輩や同僚、付き従ってくれる後輩など、自分がそこに当然のようにあるはずだと思っていたコミュニティがなくなってしまう危機感を強く覚えました。

「自分の同僚や、一緒に働く人の中に、不幸な人を作りたくない」というのが、そのときの自分のひとつの思いでした。自分の周りにいてくれる人たちを不幸にしないためには、事業というもの、ビジネスというものを知っていなくてはなりません。「そのために絶えず勉強し続けよう」というのは、私の人生の中で、大きな目標として存在しています。

20年程度生きていれば、どこかで自分の感情が大きく揺れ動いたポイントがあると思うんです。それは「ハッピーだったとき」でも良いですし、「こういう状況にはもう二度となりたくない」というものでもいい。自分の感情が大きく揺れたポイントに焦点を当てて、自分がなぜそう思ったのか、そこからどんな学びがあったのかということを考えていくと、あるべき姿やなりたい姿が見えやすくなってくるのではないかと思います。

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「やりたいこと」が明確になったとき、まず取り組むべきこと

「やりたいこと」や「あるべき姿」が明確になったら、まずは、今の自分に足りないポイントを探ることから始めましょう。

グロービス学び放題では、「目標設定イベント」というオンラインイベントを実施しています。最初に、ユーザーの方々に、あるべき姿やなりたい姿を言語化してもらい、それに対して、自分が今どういう状態にあるのかを相照らして書いていただきます。「なりたい姿」と「自分の現状」がわかると、その差分から今の自分に足りていないポイントが分かりますよね。次に、その差分を埋めるための学習は、何をどのタイミングで何分勉強すればいつ終わるのか……といった具体的な学習計画を作ってもらいます。そして、オンラインイベント上のグループで「自分はこういうことをします」と宣言してもらうというものです。

「自分との約束」は、つい甘えて破ってしまいがちですが、人と約束したことはなかなか破れないですよね。こうすることで、自分に対してのコミットメントが高まり、学習計画通りに勉強を進められます。同僚や勉強仲間に目標と学習計画を宣言するといった方法をとるのもいいと思いますよ。

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「スキルアップのための勉強」と「仕事」の両立方法

そもそも、仕事自体がスキルアップにつながっていますが、目の前の仕事以外に学ばなければならないことがある場合は、仕事と勉強の両立に苦しむこともあるでしょう。その場合、まずは今の仕事の効率化をすることが必要です。

私も20代の頃は毎日終電まで働いていましたが、途中から「この仕事をしているだけだと、単線的な中でのスキルアップはあっても、全体的なビジネスナレッジを身につけるのは難しい」と気づきました。そこで、仕事の方法を大幅に変え、24時までやっていた仕事を18時までにグッと抑え、ビジネススクールに通ったんです。その際は、「じつはお客さんのほうではそんなに求めてはないのに、自分が時間を使ってしまっていた作業」をどんどん落としていくなど、自分の仕事の業務分析はかなりしっかりと行ないました。

とはいっても、忙しいことに変わりはありませんから、仕事の効率化のほかにスキマ時間の有効活用も重要です。どんなに忙しくても、電車に乗っている時間、歩いている時間といったスキマ時間は発生しますから、その時間をスキルアップに役立てましょう。私は、グロービス学び放題の動画をアプリにダウンロードして、何度も繰り返し流す方法をとっています。

もうひとつ、「検索練習」という学習方法も効果的です。検索練習は、アメリカを代表する記憶の専門家・ベネット・シュウォーツが実践している学習方法。自分に質問をし、インプットした内容を思い出せるかどうか確認するというものです。私は毎朝15〜20分、前の日に見た動画や読んだ本の内容をどれだけ覚えているのか、何も見ずに思い出しながら紙に書き出していく、という方法をとっています。

紙に書き出してみて、思い出せなかったところやわからなかったところには印をつけておき、あとでわからなかった箇所を重点的に見返す・読み返す……といった作業で、理解度が一気に深まるのです。実際に紙に書き出さなくても、シャワーを浴びているときや、歩いているときなどに頭の中で思い出すだけでも効果的ですよ。

今の仕事を整理して学ぶ時間を増やし、スキマ時間を活用する―――こうした心がけで、少しずつでも「なりたい姿」に近づいていけるのではないでしょうか。

(参考)
アーリック・ボーザー 著, 月谷真紀 訳(2018)『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』, 英治出版.

【下道陽平さん ほかのインタビュー記事はこちら】
あなたの提案が通らないのは、○○が足りていないから? 「人を動かせない人」の特徴とは

【プロフィール】
下道 陽平(しもみち・ようへい)
日系一部上場企業でマーケティングに従事した後、MBA取得。米系コンサルティングファームでの活動を経てグロービス代表室に参画し、社長直轄特命案件のプロジェクトマネジャーとして複数プロジェクトを牽引。現在はEdTech部門にて「グロービス学び放題/GLOBISUnlimited」統合事業を始めとし、複数の新規事業の責任者を務める。MBAや企業研修において経営戦略・マーケティング領域の講師として登壇。

【ライタープロフィール】
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