もしもあなたが、「いまはまだ見えていない自分の力を信じている」「潜在能力をフルに発揮して目標を達成したい」と考えるなら、経済学・教育学・組織心理学の専門家によるノウハウを取り入れた、「4行日記」を始めてみてはいかがですか?
1日5分の習慣で潜在能力が最大化するそうですよ。筆者が実践しながら詳しく説明します。
潜在能力について
まずは、少しだけ潜在能力を掘り下げましょう。日本能率協会の「潜在能力の開発に関する研究会(2007年3月)」によると、学習や訓練によって目に見えるかたちで形成されていく顕在能力と違い、潜在能力は次のように解釈されるそうです。
「本来そうした能力があるが、潜在化されており、まだ現実に引き出されていない能力」
(引用元:一般社団法人日本能率協会 JMA|潜在能力の開発に関する研究会 - 日本能率協会 2007年3月)
潜在能力は誰にでもあると考えられていますが、「発揮するきかっけがない」「自分自身が “そんな能力はない” と思い込んでいる」などで、顕在化しない場合が多いとのこと。
潜在能力が顕在化するステップについては、アメリカの物理学者マレー・ゲルマン氏が「没頭期→潜伏期→啓示期→証明期」の4段階を、またほかの学者が「苦悶の時期→開放期→劇的な創造力や心の変革→向上期」といった4段階を指摘しているそうです。
そう聞くと、なんだかすごいきっかけがないと潜在能力が表に出てこない印象ですが、じつは、無理なく潜在能力を引き出せる方法があります。その方法とは、1日たった5分ですむ「4行日記」です。
「4行日記」とは?
「4行日記」とは――経済学博士、教育学博士、組織心理学者の小林恵智氏が開発したプログラム「SEP(セップ:Self-Expanding Program)」のノウハウで、心理効果を活かし、潜在能力を最大化していく日記のことです。SEPは、自分の能力に応じた目標達成法を確立・実践し、最低限の努力で目的や目標を達成していくプログラムなのだそう。
つまり、潜在能力とは何か特別で偉大な力ではなく、いわゆる「自分がもつ可能性」のこと。4行日記は、それを表に浮き上がらせ、自分が達成できる最大限の目的や目標を教えてくれるわけです。「自分のなかに隠れていたものが表に出てくる」ので、いまの「自分なりに小さくまとまる」といった状況とは違います。
このように、学術的な知見に裏打ちされた4行日記ですが、やり方はとてもシンプルで簡単なんですよ。
「4行日記」のやり方
4行日記の要素は、事実・発見・教訓・宣言の4つ。その順番で書き進めます。
- 事実:今日あった「出来事(客観的事実)」のなかから1つ選んで書く
- 発見:上の出来事から「ひらめいたことや気づき(発見)」を書く
- 教訓:上の発見から得られたことを「教訓」として書く
- 宣言:最後に現在完了進行形で、将来自分がありたい姿を「宣言」する= “私は~をしている”
1行=20文字程度、4行で80文字以内にまとめるのが理想形です。これを毎日書くことで、自分のクセ、関心事(強み)、人生の目的や目標が表面化して、ごく自然に自分の「ありたい姿」に近づいていけるとのこと。論理性・表現力・語彙力・課題解決能力・問題解決能力も鍛えられるそうです。
では、筆者もさっそく始めてみましょう。
「4行日記」は日々の○○だった。
今回は、すぐに始めたいので手元にある普通のノートを使いましたが、好みの日記帳やノートを準備するのも大いに賛成です。お気に入りのステーショナリーは、「やろう」という気分を高めてくれるでしょう。
まず、日にちと曜日を書いて、1~4まで番号をふり「1. 事実、2. 発見、3. 教訓、4. 宣言」の順番に書いていきます。
先に示した理想形の「4行で80文字以内」を考えると、できるだけ簡潔に書く必要がありますが、ついつい全体的に文字数が多くなってしまいました。今後、簡潔に書こうと心がけて継続すれば、文章をまとめる力が鍛えられそうです。
実際に書いたことの一例――
- 気になっていたことを再度しかるべき人に連絡した。
- 現時点で問題は解決しなかったが、やるべきことが見えた。
- 解決していないことは、他者あるいは自分に再度問いかけるだけで解決することも。
- 私は問題にぶつかったときに、解決するテクニックを持っている。
これを簡潔にまとめると――
- 危惧していたことを再度しかるべき人に問いかけた。
- すると、やるべきことが見えてきた。
- 問いかけで物事が解決することもある。
- 私は常に問題解決のテクニックをもっている。
余分な文字をそぎ落とすほど、物事の本質が見えてくる印象です。簡潔な言葉で物事の本質を述べるとすれば、「論理性」や「語彙力」も必要でしょう。なるほど、4行日記がそれらを鍛えると実感できますね。
これを50日ほど続けると効果(自分の強み・目的・目標を知り、“ありたい姿” に近く)が現れるとのこと。しかし、数日間でも大きな発見がありましたよ。
それは、何か特別な日ではなくとも、必ず何かしらの出来事(客観的事実)があり、そこに意識をもっていくことで発見があるということです。逆を言えば、意識しなければ「ひらめき」や「気づき」といった発見もありません。つまり、4行日記は日々起こることに目を向け、意味づけすることでもあると気づいたのです。
もちろん、それなら普通の日記を書くだけでもいいのかもしれませんが、先に述べたように学術的な知見に裏打ちされ、体系化されたものが4行日記。これを実践しない手はありません……!
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自分の潜在能力を最大化する「4行日記」を紹介しました。まずは気軽に始めてみませんか?
※「4行日記」の詳しい心理効果や、より具体的なやり方、効果を高める大切な要因となる正しい文法は、ヒューマンサイエンス研究所のセミナーで詳しく説明してくれます。
(参考)
小林惠智著(2007),『1日5分 目的・目標を達成させる 4行日記 』, インデックス・コミュニケーションズ.
一般社団法人日本能率協会 JMA|潜在能力の開発に関する研究会 - 日本能率協会(2007年3月)
ヒューマンサイエンス研究所|4行日記とは
ヒューマンサイエンス研究所|SEPとは
日経ビジネス電子版|小林 恵智
Wikipedia|マレー・ゲルマン
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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