臨床心理士が教えるストレス撃退法。メロディに合わせて歌うだけで心がすっと軽くなる。

自分自身を客観視する「メタ認知能力」が高いと、問題解決力に優れ、自分の限界を超えた高い目標を達成することができるといいます。逆にそれが低いと「何度チャレンジしても、うまくいかない」と感じることが多いのだとか。しかし、「“自分を客観視する”なんていわれても、どうもピンとこない」という人もいるでしょう。「そもそも“本当の自分”さえも分からないのに、客観視なんて到底ムリ」という意見もあるはず。

そこで今回は、最新の研究と識者のアドバイスをもとに、「本当の自分を見つけ、自分を客観視する方法」をご紹介します。

自分自身を客観視するメタ認知とは

メタ認知は、1970年代にアメリカの心理学者ジョン・H・フラベルによって提唱されました。メタ認知能力とは、自分が、“自分の思考や行動”そのものを対象として客観的に認識し、制御する能力のことです。

「この仕事は自分に務まるか」「どこに重点をおくべきか?」「この方法でいいのか、もっと他にいい方法があるのではないか」と冷静に考えられる人は、メタ認知能力が高いといえるそう。

しかし、【自分が→自分を客観視する】なんて、文字面だけを見ると物事の原理を無視しているように見えてしまいます。それに、客観視する自分がいるなら、「本当の自分」はいったいどこにいるのでしょう? 実はそれが、最新の研究によって示されました。

直感的な自分が「本当の自分」?

カナダ・トロント大学の Sam Maglio 助教授らはいくつかの実験を行い、本当の自分」が意志決定とどう関わっているのか調査しました(学術誌 Emotionに掲載・オンライン版公開2018年9月10日)。しかし、科学的には「本当の自分」が存在するのかどうかも分からないそう。

そこで、この研究で重視されたのは、人が感じる「本当の自分です。

実験のひとつは、トロントの住民90人を対象に、“2つのDVDプレイヤーいずれかの選択を迫る”というものでした。その際、参加者は「直感で選択するように」と指示されたグループと、「よく考えるように」と指示されたグループ、指示がないグループに分けられたそうです。そして、実際にDVDプレイヤーを選択したのち、「どのくらい“本当の自分”を反映したか?」と質問されました。

その結果、「直感で選択するように」と指示されたグループは、「よく考えるように」と指示されたグループよりも、「本当の自分」を反映していると高く評価したそう。ちなみに、指示がなかったグループは自律的に熟考したのか、「よく考えるように」と指示されたグループと同様の評価だったといいます。

そのため研究者は、「直感に従うことは、意志決定において“本当の自分”を見つけるためのいい方法だ」と述べています。したがって、自分の感覚として納得のいく「本当の自分」は、直感(直観)に従うことで見つけられます

「客観視する自分」とは?

前項で「本当の自分を見つける方法」は直感に従うことだと説明しました。次に、客観視する自分について説明します。たとえばAさんが、ある衣料品店でこんな葛藤を心の中で行ったとしましょう。

1.「うわー、これ素敵。欲しい!」と、大好きな色の服を手に取る 2.「でも、同じ色の服はたくさんあるから、ほかの色を買うべきではないか」と考える 3.「いやいや、好きでもない色の服に、お金をかけるなんて無意味」と考える ――すると、比較的好ましい色の、心惹かれるデザインの服を見つける―― 4.「総合的に考えて、クローゼットにはない魅力的なこの服が一番いい!」と考える 5.その服を持ちレジに向かいながら「最初の服」と「手に持つ服」を天秤にかける 6. 結局、一番最初に選んだ服を購入することが、自分にとって一番ハッピーだと判断 ――自分の決断に満足しながら、最初に選んだ服を嬉々として購入する――

前項の実験から、1は「自分が感じる“本当の自分”」だと考えられます。では、このなかの、どれが客観視する「自分」なのか? それは、購入に至るまでの工程「2~6まで」すべてだといえます。2は1を、3は1と2を、4は1~3を、5は1~4を、6は1~5を客観視しているということです。

結果的にAさんは「“本当の自分”が求めたもの」を選びましたが、そこに至るまで客観的になって考えたので、満足のいく決断ができたというわけです。

客観視の方法

では、自分を客観視する方法を2人の識者たちから教えてもらいましょう。

客観視の方法1 ビジネス編

ビジネスで失敗する人は「客観視」が苦手だと話す脳科学者の茂木健一郎氏は、メタ認知能力が高い人の特徴として「客観的な視点で自分に可能かどうかを判断できる」「自分に足りない能力を見極められる」「自分の失敗を肯定でき、反省と改善を実践できる」という3点を挙げています。それを参考にした客観視の方法は次のとおり。

1.何かを考えたときそれは可能ですか?」と自分に問いかける

たとえば初めてプロジェクトのリーダーを任されたとしたら、まずはいったん冷静になって「あなたにこのプロジェクトのリーダーが務まりますが?」と他人のように問いかけてみるのです。そこで合点がいかなければ、のちに、そのモヤモヤに足を引っ張られてしまうかもしれません。また、問いかけて不安を感じ「それでも挑戦すべきだ」と結論づけられれば強い意思になります。そして、「可能ではない」明確な理由が分かれば対策を講じやすくなるはず。

2.“前進できない”“成果を出せない”場合いま不足している能力は?」と自分に聞く

たとえば1のように問いかけ不安を感じたら「何が不足しているから不安なのか?」と自分に聞いてみましょう。また、成果を出せなければ「いま不足している能力は何か?」と問いかけます。それによって、経験・コミュニケーションスキル・プレゼンテーションスキル・ネゴシエーションスキル・語学力・情報力・文章力・忍耐力など、いろいろと出てくるはず。そこで、「経験」など現時点の自分ではどうにもならないものを省き、残ったものに優先順位をつけて順番に取り組んでいきます。その際、あらゆる視点からの情報を得るために、たとえば「コミュニケーションスキルを高めるためにはどうしたらいいか?」と複数の人に聞いてみるのがおすすめです。

3.何かに失敗したら改善策は何ですか?」と、出てくるまで自分に聞く

ときには失敗して、とことん落ち込むのもいいでしょう。しかし、結局は落ち込むことに多くの時間を割くよりも、改善策を講じたほうが自分のためになります。その助けになるのが、「改善策は何ですか?」と自分に問いかけること。たとえば些細なミスに対し「チェックは必ず2回行う」「チームで確認し合う」というシンプルな改善策が出てきたとしても、それを行うのと行わないのとでは結果が大きく違ってきます。また、面白いことに、頭の中で声が響く内言語で、何度も自分に聞いてみるとまるで他人に対するように自分は答えようとします。ぜひお試しください。

客観視の方法2 メンタルヘルスケア編

自分を客観視することは、マイナスな思考が頭の中を巡っているときにも役立つそう。医学博士・臨床心理士の熊野宏昭氏は、自分を客観視することがストレスをためないコツだと述べています。同氏が教えてくれた自分を客観視する方法は以下のとおり。

1.何かについて考えたら、そのあとに〜と考えた」と付け足す

例:「このプレゼンはきっと失敗する」と考えた。 例:「わたしは上司に嫌われている」と考えた。

2.自分の考えを「わーたーしーはー……といった具合にゆっくりしゃべってみる

例:「わーたーしーはーしーごーとーがーでーきーなーいー」 例:「なーかーまーにーはーいーれーなーいー」

3.自分の考えを、適当なメロディに合わせて歌ってみる

ご自身の好きな歌や、気が和む曲のメロディに合わせてみてください。ちなみに筆者は、故・牧伸二さんのウクレレ漫談「やんなっちゃった節」に合わせて鬱積した気持ちを歌い、「あ~あ、あ、やんなっちゃた~♪ あ~ああぁ驚いた♪」と締めると、悩みの濃度がいっきに薄まります。

4.キャラクターの声・クセをマネて自分の考えをしゃべってみる

TBSの宇垣アナウンサーは理不尽な出来事に遭遇したとき、サンリオの人気キャラクター「マイメロディ」になりきって、「私はマイメロだよ~。難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」と思ってしまえば、どうでもよくなるのだそう。

5.思考に名前をつけてひとりの人間として扱う

たとえば落ち込んでクヨクヨして、よくないことばかりを考える思考には「クヨクヨちゃん」と名づけ、「あらあら、また来たの? クヨクヨちゃん」と他人のように話しかけます。つまり、落ち込んでいるのはあなたではなくクヨクヨちゃんです。話を聞いて受け止めてあげてください。

*** 茂木健一郎氏は、「どうすれば成功できるのかを知るためには常に自分と対話しながら自己確認することが重要」だと述べています。ぜひ自分を客観視して、成功のカギを手に入れてくださいね!

(参考) Live Science: The Most Interesting Articles, Mysteries & Discoveries|When You Go with Your Gut, You Feel Like You NHKらいふ|美容・ケア | ストレスに負けない! 自分を客観視する方法 プレジデントオンライン|ビジネスで失敗する人は「客観視」が苦手 (茂木 健一郎) カオナビ人事用語集|メタ認知とは? メタ認知能力の高め方と参考となるおすすめの本 Study hacker|「理不尽」に悩まないために。“ムカつく” をさらりと流す3つのテクニック Wikipedia|メタ認知

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