心理学者のアドラーいわく「あらゆる悩みは対人関係の悩みである」とのこと。今回は、世の中の不条理に悩まされている方々のために、「理不尽」を手なずける方法をご紹介します。

なぜ「理不尽」が生まれるのか?

根拠もないのに、何もしていないのに、なぜあんな態度をとるの? なぜわたしが責められるの? 悔しいですよね……。実はそれ、脳のクセが関係しています。

人の脳のつかい方にはクセがある

私たちは脳の「取扱説明書」を受け取り生まれてくるわけではありません。したがって、誰しも脳のつかい方は自己流です。そう語るのは、東京大学薬学部教授の池谷裕二氏。

多くの場合わたしたちの経験に基づく直感は有益に働きますが、たまたま想定外の条件が揃うと見当違いを起こすそうです。それが「認知バイアス」というもの。池谷教授いわく、認知バイアスは、脳が効率をよくするため最適化を進めた際に生まれる“バグ”なのだとか。

例えば真っ白な紙に、背の小さい人型が、大きい人型の横で浮いているように描かれている絵があるとします。「これは、どういう状態か?」と問われたら、みなさんはどう考えますか?

【A】遠近法で描かれているため、背丈が小さく見える人は、後方にいると考える。
【B】単純に、小さな子供が大人のとなりで浮いていると考える。
【C】遠近法で描かれているか、あるいは小さな子供が段の上に乗っているかもしれない。もしくは、まだ何か見落としているのかも? と考える。

実際には、背景が浮き出てこない限り真実は分かりません。しかし、多くの人はとっさに【A】の遠近法だと考えるのではないでしょうか。その理由は、「人が浮くのは不自然」「人は遠くに行くほど小さく見える」とすでに脳が学習しているので、とくに意識しなくても反射的に状況を読み取ってくれるから。

しかし、背景が浮き出て小さな人型が段の上に乗っていた場合、「遠近法」の解釈が間違っていたことになります。これが「認知バイアス」なのです。同じものを見ていても全く違う解釈をしたり、解釈を間違ったりしてしまうのは仕方ありませんよね。

対人認知のバイアス「例」

東京未来大学モチベーション行動科学部長の角山剛氏は、対人関係に紛れ込んでくる認知バイアスを、以下のようにいくつか紹介しています。

・【ハロー効果】――ひとつでも嫌になると、相手の些細な言動や、着用しているものまで嫌になる。その逆(全て好ましくなる)もあり。
・【論理的錯誤】――本人のなかでは論理的なつながりでも、実際には根拠のない思い込み。例えば「前職がこの仕事なら、このような仕事もできるはず」など。
・【ステレオタイプ】――型にはまった判断傾向。例えば「A型の人は細やか」「B型の人はマイペース」など。ほか国籍や人種、職業などでも生じる。
・【投影】――心理学者のフロイトが提唱した概念。自分が相手を嫌悪しているのに、それを認めたくない場合に生じる錯覚。「相手が自分のことを嫌っているから、関係がうまくいかない」と、他者に自分の感情を投影する。
・【対比効果】――周囲と比べることによって相手を過小評価してしまうこと。例えば、人並み以上にカラダを鍛えている人でも、ものすごく筋骨隆々な人々の中に入ると、それほどカラダを鍛えているように見えなくなってしまう。

もちろん、こうした解釈は私たちの経験から生まれるので、うまく判断できることもあります。しかし、間違った解釈で誤解や偏見が生じたまま、相手の持っている本来の特性を見逃すこともあります。残念ながら、こうした思い込みを防ぐ方法はないのだとか。

でも、だからといって理不尽なことを、ただ耐え忍ぶだけではカラダがもちません。自分の中で手なずけてしまうほうが得策なのです。

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「理不尽」を手なずける方法

仕事や、あらゆる場面において理不尽な目にあったら、種類の違う3つの対処法をお試しください。

1.記憶を上書きする「3秒ルール」

メンタルトレーナーの西田一見氏によれば、人間の脳にはちょっとおバカなクセがあるのだそう。そのひとつは、イメージ・言葉・動作をそのまま受け取り、実現しようとすること。「ダメだなあ」とつぶやき下を向けば、脳は「そうなんですね」とネガティブを実現しようとします。また、梅干やレモンを見るだけで口の中が酸っぱくなるように、脳は「現実」と「想像」の区別ができません。つまり、脳は想像しただけでも、実際に起こったこととして受け取ってくれるのです。そしてもうひとつは記憶の上書きです。たとえマイナスの記憶が入力されたとしても、強力なプラスの経験をすれば、簡単に記憶が上書きされます

このクセを逆手にとったのが、西田一見氏の「3秒ルール」。理不尽な出来事などでイヤな気持ちになったら、すぐに以下を実行です。(同氏が著書で紹介している「初心者バージョン」を参考にしました)

1秒――大好物を思い浮かべる
2秒――「やった!」とつぶやく
3秒――口角を上げて笑顔になる

反射神経のように、この3秒ルールを身につけておけば、効果の強弱はありますが、確かに脳の受け止め方が変わり、記憶が上書きされていきますよ。

2.「メタ認知」で冷静かつ客観的に

脳科学者の中野信子先生は、理不尽な出来事に対し、自分や相手の関係性や状況を俯瞰する「メタ認知が役立つといいます。ストレス軽減にも有益なのだそう。

「理不尽すぎる……」と感じたら、幽体離脱でもしたつもりで自分の感情から距離を置き、冷静に考えてみるのです。そうすることで、「次はこうしよう」といった考えも生まれてくるそうですよ。

3.理不尽に強い「キャラクター」になりきる

最近巷で、TBS宇垣美里アナウンサーの「マイメロ論」が共感を呼んでいるそう。「マイメロ論」とは、同氏が世の中の不条理を感じたとき、サンリオの人気キャラクター「マイメロディ」になりきるというユニークな対処法のこと。

宇垣アナウンサーは「どうしようもない理不尽や災難を、一つひとつ受け止めるには人生は長すぎる」とし、たとえ理不尽な出来事に遭遇しても「私はマイメロだよ~。難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」と思ってしまえば、どうでもよくなるのだそう。みなさんも、お気に入りのキャラクターでぜひお試しください。ちなみに筆者はバカボンのパパです。「これでいいのだ!」

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職場や学校、生活など、さまざまな場面で起こる数々の「理不尽な出来事」は、3つのテクニックで手なずけましょう!

(参考)
現代ビジネス 講談社|脳はこんなにダマされている〜気鋭の脳科学者が明かす「ココロの盲点」(池谷 裕二)
株式会社日立システムズ|【第15回】あなたの人を見る目は、正しい? ~誰にでもある思い込み・判断のバイアス~
ORICON NEWS|TBS宇垣美里アナの「マイメロ論」が話題 担当編集者が語る人気の理由
女の転職@type-女性の転職サイト|脳科学でストレスのもとを解消! ムカつく上司をサラッと受け流すうまい対処法
西田一見著(2015),『イヤな気持ちは3秒で消せる!』,現代書林.
岸見 一郎著(2016),『アドラー「人生の意味の心理学」』,NHK出版.