やるべきタスクに追われる状況が常態化し、いつも「時間がない」と感じている。だが原因が分からず、「業務量が多すぎるせい」という結論に帰着してしまう……。

これでは、いつまで経っても「時間がない人」です。だからこそ、これだけは抑えておきましょう。いつも時間がないあなたを、必ず変えてくれるはずです。

なぜ「時間がない」のか? 考えられる4つの原因

いつも時間がないのはなぜでしょう。その原因として考えられるのは以下の4つです。

1.準備不足

テレビでもお馴染みの予備校講師・林修氏は生徒に対し、国語のセンター試験において、「時間が足りなかったとは、絶対にいわないように」と強く伝えるそうです。

センター試験の国語は、実際のところかなり厳しい時間制約だといいます。それでも同氏が生徒を訓戒する理由は、その「時間が厳しい」という事実は、試験を受ける前からわかっていることだから。同氏は、「時間が足りず解けませんでした」という生徒に対し、「時間が足りなかったわけではなく、時間内で解けるようにする訓練が足りなかっただけ」と説くそう。

いつも決まって時間に追い詰められるのに、またもや同じことを繰り返すのは、準備不足であるに他なりません。

2.トンネリング

トンネリングは、心理学や行動経済学で使われる用語です。トンネルのなかにいると外の世界が見えなくなるように、何かに集中しすぎると、他のことに意識が回らなくなる状態を指しています。

「必死に仕事をしているのに、どうしていつも時間がなくなるのか?」と悩むとき、あなたはトンネリング状態になり、大いに視野を狭めている可能性があります。視野の狭さが新たな問題を引き起こし、効率を低下させているのです。

たとえば、途中で一度確認しておけばよかったのに、集中してやっと書き上げた文章が本題からずれていたり、たとえば、実は自動化できる方法(ソフトの機能など)があるのに、それをせず、延々とムダな単純作業を繰り返していたり、たとえばひとつのタスクを行う合間に、他のタスクのちょっとした準備を行っていれば、ずいぶん効率を上げていたかもしれない――という可能性があるということです。

3.余白がない

センディル・ ムッライナタン氏らが著した『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』には、ミズーリ州の救急病院、セント・ジョンズ地域医療センターの、思いがけない問題解決法が示されています。

同病院は、32の手術室で年間3万件あまりの外科手術が行われていました。そのため、手術室はいつも予約でいっぱい。おまけに急患も入ってくるので、予約されていた手術はどんどん後回しに。そのために待ち時間が生じる医師も多く、スタッフはしょっちゅう予定外の残業をしていたそう。

そこで病院は、ただでさえ手術室が足りないのに、「手術室を緊急専用としてひとつ空けておく」という決断をしました。すると不思議なことに、多くの問題を改善できたのだとか。

つまり、病院に足りなかったのは、手術室の数ではなく、緊急用にすぐつかえる手術室だったのです。いつも手術室がいっぱいで、急患が入るたびに予定の手術が後回しにされる際に生じた時間のロスは、恐らく想像以上のものだったのでしょう。

もしかして、仕事のスケジュールをギチギチに詰め込んではいませんか? そうだとすれば、「ちょっとこれを先にお願い」と急ぎの仕事が入った場合、たくさんのロスが生じているのではないでしょうか。

4.完璧主義

「ここが気になる」「もっとこうしたほうがいい」この繰り返しが、仕事の精度を上げるのは確かです。しかし、それも度が過ぎれば、仕事の時間を長引かせてしまうだけ。ストレスだって大きくなるでしょう。

万全を期すために努力するのは大切ですが、完璧主義になりすぎることは「見えないものを見せてしまう」可能性があります。「こうしたら、もっと完璧になる」という幻想が生じてしまうのです。下手をすれば、それは完成なき芸術作品のように、ある限りの時間をつかう課題と化してしまうでしょう。

つまり、物事には見切りをつけることも必要だということ。必ず期限がある「仕事」には、取捨選択という、物事を効率よくする判断力が重要です。そして、それには完璧主義よりも、適度な妥協が必要なのです。

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「時間がなくなる原因」に講じる対策

4つの「時間がなくなる原因」を把握しました。次に、有効な対策を探ります。

1.「準備不足」タイプは【段取り】を組め!

新産業開発研究所・代表取締役の坂戸健司氏は、普段何気なく行っている「段取り」をあらためて見直すことで、日常の作業効率がグンと上がるといいます。「準備不足」タイプは【段取り】を組むことから始めましょう。同氏によると、一般的な段取りの要素は次のとおり

1.事前準備
2.仕事に対しての心構え
3.ゴールをイメージする
4.工程づくり、スケジュール管理
5.未来への予測とその対応策
6.関係者への根回し
7.周りの人との連携。報告、連絡、相談
8.アクシデント対策
9.仕事の始めと終わりのミーティングなど
10.最後の締めくくり、後片付け、後処理

(引用元:日立製作所|仕事の効率アップに必要なのは、真の〝段取り〟だった 成果に差をつける「段取り力」・Chapter1 ビジネスマンの「段取り」に関する現状

極端にいえば、1番と、3番と、4番と、8番を行うだけでも構いません。たとえば簡単な提案書をつくるなら、1番「事前に必要な資料を集め」、3番「それを見ながら仕上がりをイメージ」して、4番「集中力が落ちないようタスクの強弱をつけながら、スケジュールを組み」、8番「思うように進まない場合の対策(たとえば、いくつかの案を出しておくなど)を立てておく」イメージです。

「段取り八分、仕事二分」という有名な言葉どおり、【段取り】に時間を割くことで仕事を頭のなかでシミュレーションすることもできるので、グッと効率がよくなるはずです。

2.「トンネリング」タイプは【立ち止まる時間】をつくれ!

集中するのはいいことですが、その結果「いつも時間がない」と感じるのであれば、間違いなく【立ち止まる時間】が必要です。その際に、視野を広くして仕事全体を俯瞰しましょう。

そして、効率的に行われているか、非効率のもととなる要素が隠れていないか(確認せずに進めてしまっていることなど)、よく確認するのです。

「ただでさえ時間がないのに立ち止まるなんて!」と感じるかもしれませんが、車のトヨタは「改善」のためなら、一度引いた工場のラインを、躊躇なく引き直すそうです。一見すると非効率に見えて、結果的には成果を上げる要因になるといいます。【立ち止まる時間】は、そのあと一気にジャンプする前の助走だと考えましょう。

3.「余白がない」タイプは【空白の時間】を確保せよ!

改善のためなら工場の生産ラインを引き直すというトヨタは、それを行うためにいつも生産ラインに「余裕スペース」を設けているそうです。もしも、その余裕スペースがなければ、いちいち「生産ラインを空ける」という一工程が必要になってしまいます。それは大きな時間のロスになることでしょう。

また、セント・ジョンズ地域医療センターのように、急患が入るたびに、いっぱいになっていた手術室の一室を空ける工程は、どんどんスタッフの残業時間を増やしてしまいます。

改善策を講じるためにも、突然入る急ぎの仕事に対応するためにも、結果的には効率をよくしてくれる【空白の時間】を確保することが重要なのです。

4.「完璧主義」タイプは細分化して【取捨選択】せよ!

習慣化コンサルタントの古川武士氏は、力の入れどころ・抜きどころを理解せず、すべての仕事に全力を注いでしまう完璧主義の人は、タスクを大きなかたまりとして捉える傾向があるので「しないこと」を決められないといいます。

しかし、仕事を効率よく進めるためには【取捨選択】という判断が必要です。そこで同氏は、タスクを細分化する「チャンクダウン」という方法をすすめています。

自分の仕事を細分化して書き出しいくと、必然的に「しないこと」が見えてくるというわけです。見えたらさっそく【取捨選択】です。それにより、仕事の優先順位もつけやすくなるはずですよ。

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なお、こちらの記事『「時間がない人」がやっている9つのNG行動。タイムマネジメントは “最重要事項” を見極めよ。』でも、「時間がない人」へのアドバイスを紹介しています。ぜひこちらも参考にしてくださいね。

(参考)
エキサイトニュース|試験で「時間が足りませんでした」は言い訳にならない……林修が準備不足の受験生に苦言 (2017年1月29日)
『日本の人事部』|「トンネリング」とは?
日立製作所|仕事の効率アップに必要なのは、真の〝段取り〟だった 成果に差をつける「段取り力」・Chapter1 ビジネスマンの「段取り」に関する現状
U-NOTE [ユーノート]|「段取り八分、仕事二分」- 次の日に仕事を残さないために、知っておきたい「段取り」のススメ
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THE21オンライン|仕事の「取捨選択」で効率アップ!
センディル・ ムッライナタン著, エルダー・ シャフィール著, 大田直子訳(2015),『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』,早川書房.