日本のリーダーの残念すぎる勘違い。自分流ではない “本当の論理的思考力” はこうして高める

横山信弘さん「論理的思考力の身につけ方」01

「矛盾と飛躍がなく、物事を筋道立てて考える力」とされる「論理的思考力」は、ビジネスパーソンにとって極めて重要な力だと言われます。ただ、そういう風潮もあってか、特に日本のマネージャー層には「自分には論理的思考力がある」と勘違いしている人が多いそう。

そのように語るのは、数多くの企業を支援している経営コンサルタントの横山信弘(よこやま・のぶひろ)さん。勘違いではない、論理的思考力を身につけるための方法を横山さんに聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

論理的思考によって、「正解らしきもの」に近づくことがビジネス

よく言われる話ではありますが、日本人の論理的思考力は世界的に見て低いとされます。それも当然でしょう。これまでの日本の学校教育においては、答えがないことを筋道立てて考える論理的思考力を伸ばすのではなく、あらかじめ答えが設定された問題を正しいとされる方法で解くことしかしてこなかったからです。

しかし、社会に出れば論理的思考力がものを言います。ビジネスの場には「正解」なんてものはありません。「こうだからこうだろう」「だとしたら、今後はこうなるのではないか」と幾重にも論理的思考と試行錯誤を積み重ね、なんとなく「正解らしきもの」に近づいていって、なるべく大きな成果を挙げる——それこそが、ビジネスです。

ところが、いまの日本のマネージャー層の多くの人が勘違いをしています。自身でしっかりと勉強をして論理的思考力を身につけたのならともかく、そうではなくて正解がある教育しか受けておらず実際には論理的思考力が低いにもかかわらず……「自分は論理的」だと思い込んでいる人が多いと感じるのです。

そういう人も、ビジネスシーンの風潮として論理的思考力が重要だということはわかっていますから、こんなふうに自分を評します。「どっちかと言ったら俺は理屈で考えるから、論理的思考力が高いほうだろう」と。その論拠はただの自分の感覚ですから、なんの論理にもなっていませんよね。それは、論理的思考力が高い人の思考とはとうてい言えません

横山信弘さん「論理的思考力の身につけ方」02

「組織の論理」がまかり通る会社には早めに見切りをつけてもいい

また、そういう勘違いをしている人は、俺の経験からしてこの判断は間違いないといった言葉もよく口にします。もちろん、経験がものを言う場面があるのも確かでしょう。しかし、それもケース・バイ・ケースであり、場合によっては論拠として非常に弱いものになります。

そういう人が上司の場合、若い部下はなかなか苦しい立場に置かれます。上司にはある経験がないために、論理的に思考をし、客観的データや事実をもとに自分なりに正しいと思える企画などを提案することもあるでしょう。

ところが、自分を論理的だと勘違いをしている上司の場合、「これまでにもそういうことをいろいろとやったけど、うまくいった試しがない」と、部下の提案を一蹴するということもあります。やはり、この上司の論拠は自分の経験に過ぎません。しかし、その過去といまでは状況が変わっているはずであり、その経験だけをもとに部下の提案を否定することは、論理的な行為とは言えないでしょう。

残念ながら、日本の企業にはそういう風潮が蔓延しているところも少なくありません。みなさんの勤務先が、「○○さんがこう判断したから」といった、理屈にもなっていない「組織の論理」がまかり通るような会社であれば、早めに見切りをつけて転職を考えてみてもいいかもしれません。いまは、無理をしてひとつの会社に勤め続けるような時代ではないのですから。

横山信弘さん「論理的思考力の身につけ方」03

「これはおかしいのでは?」という違和感をスルーしない

では、論理的思考力を身につけるにはどうすればいいでしょうか? 私からは、おかしいと思ったことをとにかく確認することをまず推奨します。これは、特に若い人や、中途採用で入社した社歴が浅い人にとって有利となる方法です。なぜなら、先に触れたその会社の「組織の論理」に染まっていないからです。

「あれ? 上司が言っていることってちょっとおかしくないか?」と違和感を覚えることに出くわしたなら、流すことなく、あとからでも「あの発言ってどういうことですか? ちょっとわからなかったので教えてください」などと確認しましょう。そういうことを続けることが、絶対音感ならぬ「絶対論感」というか、「これはおかしいのでは?」と論理をその場で瞬間的にとらえる能力を向上させてくれます。

その確認の結果、上司がただ説明不足だっただけで、詳しく話を聞いてみれば納得できるということもあるはずです。あるいは、先の例のように理屈にもなっていない経験や「組織の論理」によるものであったなら、会社に見切りをつけることを考えてもいいでしょう。そんな会社が伸びていく可能性は高くありません。

もちろん、論理的思考力を伸ばすためにはきちんと勉強することも重要です。そのために、私からは、ビジネスコンサルタントの細谷功さんの著書『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)をおすすめしておきます。

細谷さんは、「地頭力とは論理的思考力と直感力」だと語っています。ビジネスにおいて論理的思考力が重要だということは間違いありませんが、大きなチャレンジをするような場面ではひらめきや直感も力を発揮します。この本を読めば、それらをともに高めていくヒントを得られると思います。

横山信弘さん「論理的思考力の身につけ方」04

【横山信弘さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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【プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)
1969年6月28日生まれ、愛知県出身。株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1,000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業に至るまで、支援実績は200社以上。メルマガ「草創花伝」は4万人超の企業経営者、管理者が購読する。『優れたリーダーは部下を見ていない』(かんき出版)、『セールストーク力の基本』(日本実業出版社)、『自分を熱くする』(フォレスト出版)、『営業の基本』(日本実業出版社)、『自分を強くする』(フォレスト出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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