承認欲求と自己顕示欲の違いは?意味を比べてみよう!

承認欲求と自己顕示欲の違いは?

承認欲求と自己顕示欲の違いを知っていますか? このふたつは似ているものの、異なる概念です。

この記事では、承認欲求と自己顕示欲の違いを解説しています。「承認欲求と自己顕示欲って同じじゃないの?」という人も、最後まで読めば正しく使い分けられるようになりますよ。

承認欲求とは

自己顕示欲との違いを理解するために、まずは承認欲求の意味を知っておきましょう。

意味

承認欲求とは、人から認められたいという欲求です。『デジタル大辞泉』(小学館)は承認欲求をこのように定義しています。

他人から肯定的な評価を受けたい、否定的な評価をされたくない、自分を価値のある存在だと思いたい、という欲求。

(引用元:コトバンク|承認欲求 太字による強調は編集部が施した)

たとえば、

  • 仕事の実績を社内で評価されたい
  • 周囲から一目置かれたい
  • 物知りだと思われたい
  • SNSで「いいね」をもらいたい

……といった願望が承認欲求です。

役割

「承認欲求って、あまりいいイメージがないなあ……」と思うかもしれません。たしかに承認欲求が行きすぎると、さまざまなトラブルが生まれます

他人に認められようと自慢やマウンティングをして嫌われたり、会社で評価されようと無理をして過労になったり。SNS上で悪目立ちするような投稿をし炎上する人があとを絶たないのにも、承認欲求が関係していると考えられます。

とはいえ承認欲求は、私たち人間に生まれつき備わっている自然な欲求です。周囲の人に認めてほしい、ほめてほしいという欲求があるからこそ、仕事や勉強への意欲が湧いてきますよね。活き活きとした生活を送るため、適度な承認欲求は必要なのです。

承認欲求が強い人

一般社団法人・日本経営心理士協会代表理事の藤田耕司氏は、承認欲求が強い人の特徴として、次のような要素を挙げています。

  • 自分の話ばかり
    「話を聞いてほしい」という気持ちが強いため、相手の話はあまり聞かず自分ばかりしゃべる
  • 否定されると怒る
    「肯定されたい」という気持ちが強いため、自分の考えを否定されると強い怒りや悲しみを感じる
  • 愚痴が多い
    「苦労をわかってほしい」という気持ちが強いため、不平不満を口にすることが多い
  • 話を盛る
    「高く評価してほしい」という気持ちが強いため、話を大げさにしたりウソをついたりする

「これくらい、誰でもやってしまうのでは?」と思うかもしれません。しかし、その程度・頻度が著しい人は承認欲求が強すぎると言えます。

分類

承認欲求について、さらに詳しく説明しておきましょう。承認欲求にも種類があり、以下のように区別されます。

他者承認欲求/自己承認欲求

「誰から認められたいか」という基準で承認欲求を分類できます。

  1. 他者承認欲求:他人から認めてほしい
    【例】上司や同僚から認められたい、社会的ステータスを得たい
  2. 自己承認欲求:自分で自分を認めてあげたい
    【例】仕事や生活の水準に満足したい

単に「承認欲求」と言ったとき、イメージされるのは他者承認欲求のほうですね。

「他者からは承認してもらっているが、自分で自分を認められない」ということもあり、他者承認欲求と自己承認欲求は相関していません。他者承認欲求と自己承認欲求の両方が満たされてこそ、承認欲求が真に充足していると言えるでしょう。

承認欲求のない人は、自己承認がうまい

賞賛獲得欲求/拒否回避欲求

別の基準でも承認欲求を分けられます。承認を得たいか、承認されない状態を避けたいかです。

  1. 賞賛獲得欲求:承認してほしい
    【例】人からほめられたい、自分が納得できる結果を出したい
  2. 拒否回避欲求:否定されたくない
    【例】叱られたくない、自己嫌悪に陥りたくない

「承認欲求」と聞いて一般的にイメージされるのは、賞賛獲得欲求です。一方、「認めてほしい」という気持ちがあれば、拒絶を恐れる心理も生まれます。その心理こそ拒否回避欲求です。

承認欲求は賞賛獲得欲求と拒否回避欲求に分類できる

承認欲求を分類する基準をふたつ紹介しました。「他者承認欲求/自己承認欲求」と「賞賛獲得欲求/拒否回避欲求」区分を組み合わせれば、承認欲求は4つに分類できるのです。

承認欲求を4種類に分けた図

承認欲求について、おわかりいただけたでしょうか。次は自己顕示欲について説明するので、承認欲求とどう異なるか考えてみましょう。

自己顕示欲とは

続いて、「自己顕示欲って何?」「承認欲求とどう違うの?」という疑問を解消していきましょう。

意味

『デジタル大辞泉』は「自己顕示」を次のように説明しています。

自分の存在を必要以上に他人に目立つようにすること。

(引用元:コトバンク|自己顕示 太字による強調は編集部が施した)

自分の能力などを周囲にアピールしたい、見せびらかしたいという欲求が自己顕示欲です。「アピール」という行動をともなう点に特徴があります。

役割

精神科医の西多昌規氏によると、自己顕示は「動物の威嚇」のようなものだとか。「自分は強いぞ」とアピールすることで他者からの攻撃を防ぐのが、自己顕示なのです。

そのため、まだ実績の少ない若者が、実際以上に自身を大きく見せようとするのは自然とも言えます。西多氏によれば、若者の自己顕示欲は強いのが当たり前で、自己顕示欲を悪いものととらえる必要はないそうですよ。

自己顕示欲が強い人

自己顕示欲が強い人の特徴として、西多氏は次を含む要素を挙げています。

  • 自分の話ばかり
  • 自分さえ目立てれば他人はどうでもいい
  • SNSの投稿に自分の顔が多い
  • 目立っている人に嫉妬する

自己顕示欲についておおむね理解できましたね。それでは、承認欲求と自己顕示欲はどう違うのか考えてみましょう。

自己顕示欲と承認欲求はどう違うか

承認欲求と自己顕示欲の違い

承認欲求と自己顕示欲をひとことでまとめると、次のようになります。

  • 承認欲求:「自分を認めてほしい」という欲求
  • 自己顕示欲:「自分をアピールしたい」という欲求

目的が「認められること」なのか「アピールすること」なのかが、承認欲求と自己顕示欲の違いなのです。

とはいえ、「自分をアピールしたい」という欲求の背景には、「人に認められたい」という欲求があるはず。「歌が上手だとほめられたい」という承認欲求が、「ライブに出たい」「歌の動画をみんなに見てほしい」といった自己顕示欲となるのは自然でしょう。

つまり自己顕示欲は、承認欲求を満たす手段として現れることが多いと考えられます。自己顕示欲は承認欲求の「子分」と言えるでしょう。

承認欲求と自己顕示欲は異なるものの、決して不可分ではなく、密接に関係しているのです。

自己顕示欲は承認欲求を満たす手段となる

承認欲求・自己顕示欲の手放し方

承認欲求と自己顕示欲の違いがわかりましたね。ここからは、承認欲求・自己顕示欲の扱い方を考えてみましょう。

承認欲求・自己顕示欲が強すぎれば、マウンティングをして嫌われたり、他者からの評価に依存して苦しくなったりと、さまざまな弊害があります。「自分は承認欲求が強すぎるかも?」と気になったら、これから紹介する方法を試してみてください。

承認の上限を決める

精神保健福祉士の川島達史氏は、「過剰な承認欲求をなくす方法」として「限界設定」を提案しています。「ここまでならOK」という上限を数字で明確に決めることです。

「すべての人に好かれたい」と思っていれば、自分を認めてくれない人がひとりいるだけで強いストレスを感じます。「社内で1番になりたい」と望めば、優秀な同僚への劣等感や嫉妬にさいなまれるでしょう。満足のハードルが高すぎるために苦しいのです。

そこでやるべきなのが、限界設定です。

  • すべての人に好かれたい→10人中2人に好かれれば十分!
  • 社内で1番になりたい→社内のトップ10に入れればOK!

このように、自分が達成できる基準を数字で設定し、「これさえできていれば気にしない」と決めることで、欲求不満に苦しみにくくなるはずです。

“役に立たない趣味” に没頭する

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏は、自己顕示欲を手放す方法として、「誰の役にも立たないことに取り組んでみる」「世間の評価のために趣味をしない」ことを提案しています。

私たちは知らず知らず、「人から評価されるために○○しよう」というマインドにとらわれがちです。

  • 話題についていくために人気ドラマを観よう!
  • 仕事のために本を読もう!

……そんな “承認されるため” の行動を手放しましょう。誰のためでもなく、純粋に物事を楽しむ感覚を思い出せば、承認欲求や自己顕示欲に振り回されなくなります。

たとえば、こんな趣味はいかがでしょうか。

  • 話題についていくためでなく、純粋に自分が観たいドラマを観る
  • 仕事や試験のためでなく、純粋に自分が読みたい本を読む
  • 誰かにほめられるためでなく、純粋に自分がつくりたいアートを制作する
  • テレビゲームなど、好きな遊びに熱中する

「クワイエットデイ」をつくる

安藤氏は、いっさい言葉を発さずにひとりで過ごす「クワイエットデイ(沈黙の日)」を設けることも推奨しています。人と直接会うのはもちろん、電話やLINE、SNSもNGです。

クワイエットデイの目的は、「他者から承認してもらうために行動する」という習慣を手放すことです。他者の反応を気にせず、「役に立たない趣味」を楽しんだり心身を休ませたりしましょう。

「会話がないなんて耐えられない」と思うかもしれませんが、自分がいかに人間関係に依存していたか気づけるのではないでしょうか。承認欲求・自己顕示欲の強さを自覚し抑えるため、たまにはひとりで過ごしてみましょう。

***
承認欲求と自己顕示欲の違いをおわかりいただけましたか? 簡単にまとめると次のようになります。

  1. 承認欲求とは「人から認められたいという欲求」である
  2. 自己顕示欲とは「自分をアピールしたい欲求」である

ふたつは似ていますが、ニュアンスが異なります。どちらも強すぎれば自分が苦しくなってしまうので、ご紹介した方法で欲求を落ち着かせてみてください。

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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