「上司のことが苦手で、一緒にいるのがつらい……」
「いつも同僚に気を使っていて、疲れてしまう……」
「他人の嫌なところがどうしても目につく。ひとりで仕事ができれば楽なのに……」
このように、人間関係が原因でストレスを抱えている大勢の方のために、今回は「どこに行っても人間関係がうまくいく人」の思考習慣を3つご紹介します。これ以上人間関係のことで消耗しないために、ぜひ取り入れてみてください。
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【1】相手に期待をしない
同僚に「仕事が忙しい」とこぼしたら「大変だね。頑張って!」と言われた。同僚なら自分の仕事を手伝ってくれると思っていたのに、裏切られたような気分……。
このように、相手の反応や行動が自分の期待したものと違ってイライラ・モヤモヤした経験がある人は、多いのではないでしょうか。そんな人は、ストレス軽減のために、相手に期待しないことを実践してみましょう。
精神科医の井上智介氏によると、「私たちが対人ストレスを抱えるのは、相手に『こうあってほしい』という期待をしてしまい、その期待が裏切られる時」。よって、「相手に対する期待値を下げる」べきであると言います。(リクナビNEXTジャーナル|金髪アフロの精神科医が教える「仕事の人間関係から自分の心を守る」ための対処法 より)
期待が裏切られるとストレスになるのだから、そもそも期待しない、あるいは、期待を下げればいい――ということですね。
また、井上氏は「他人のスタンスを変えることは難しいので(中略)割り切って付き合うこと」が大切、とも。
「分かってほしい」「変わってほしい」などという期待はしない方が、楽に生きられるでしょう。
(引用元:同上資料)
先述の例であれば、「私の仕事が忙しいことを、相手にわかってほしい」「手伝ってくれるのが当たり前でしょ?」という期待があったから、モヤモヤにつながったということ。そもそもそういう期待をしなければ、モヤモヤすることもなかったわけです。
ただ「期待をしない」とはいっても、そう簡単ではないと思うでしょう。やはり、「こうありたい」「こうなってほしい」という考えは、自然と生まれてしまうものですよね。
心理カウンセラーの原裕輝氏がすすめるのは、「期待を手放して、あらたな目標設定をする」こと。原氏は “結婚” を例に挙げ、こう説明します。
「結婚したら幸せになれるはず。」という期待を手放して、『結婚した人と幸せになる』という目標設定に変えるわけです。
こうすることで、”あたりまえ”という考えから、”こうなりたい”という考えに変わりますから、達成感や、満足感が十分にえられるようになります。
(引用元:すぐに役立つ!心理学講座|期待する心理学~期待はずれになるとがっくりきちゃうんです~)
では仕事に当てはめてみましょう。
期待「同僚ならきっと、自分の仕事を手伝ってくれるはず……」
→目標「自分の仕事を早く終わらせて、同僚と飲みに行きたい!」
たしかにこのように考え方を変えてみれば、無駄なモヤモヤを感じずにすみそうですね。「~~になれるはずだ」「~~になるのが当たり前だ」といった期待が頭のなかに浮かんだら、目標のかたちに言い換えるように意識してみましょう。
【2】感謝の気持ちをもつ
ミスの多い後輩に、作業がいつも大ざっぱな同僚。職場で気に入らないことが目につくたび、本当に疲れてしまう。そういう仲間とは、正直、いい気分で接することができない……。
このように悩んでいる人は、感謝の気持ちを積極的にもつようにしてみましょう。
脳科学者の細田千尋氏によると、「総じて感謝をしやすい人は、well-beingが高いことが多くの研究から示されている」そうです。(プレジデントオンライン|脳科学者が直伝、1週間で「ご機嫌な人」になれる日記の書き方 より)
その根拠のひとつに挙げられているのがこちら。カリフォルニア大学とマイアミ大学による研究(※)で、157人の大学生を3つのグループに分け、内容を次のように指定して日記をつけさせました。
- グループ1:その日感謝したこと
- グループ2:その日イライラしたり悩んだりしたこと
- グループ3:その日感じた、自分が他人より優れていると思うこと
また、被験者は心身の健康や幸福度、他者を助けることがあったかどうかなどもあわせて記録。すると、感謝したことを日記に書いたグループ1には「ポジティブ気分や人生に対する肯定的な評価の向上」「ネガテイブな感情の想起の少なさ」などが見られたそう(同上資料より)。加えて、ほかのグループよりも積極的に、誰かを情緒的に手助け(なぐさめる、相談に乗る)していたとのこと。
感謝の気持ちをもつことで、嫌な感情になるのを防げるほか、親切心を抱くことにまでつながると示唆されたのです。
親切心に関しては、ノースイースタン大学の心理学教授であるデイヴィッド・デステノ氏も、感謝の気持ちをもつと、人助けに努力を惜しまないようになることがわかっていると伝えています(Harvard Business Review|How to Cultivate Gratitude, Compassion, and Pride on Your Team より)。
ただそうはいっても、つい他人の欠点ばかりが目につく人は「人間関係がそもそもストレスだから、周囲に感謝できない」と思うかもしれません。でも大丈夫。
感謝する内容は、対人関係に関することでなくてもいいのです。たとえば前出の研究では、大学生たちは「今朝、目覚められたこと」も感謝する項目として書き出していたそう。
感謝の気持ちをもつことを習慣化すると、周囲の人に対してポジティブな感情をもてるほか、親切に接することができるようになります。当然、人間関係も円滑になるはず。日頃から、気に入らないことよりも、感謝すべきことにぜひ目を向けてみましょう。
(※研究の内容は以下を参照してまとめた「Counting Blessings Versus Burdens: An Experimental Investigation of Gratitude and Subjective Well-Being in Daily Life」「感謝を数えることが主観的ウェルビーイングに及ぼす効果についての介入実験」)
【3】自分基準で自分を評価する
相手のなにげないひとことに一喜一憂しがち。嫌われるのが怖くて、ついまわりに合わせてしまう……。
こうした状況に当てはまる人は、自分の評価を相手に委ねている可能性大。他人基準ではなく自分基準で自分を評価するようにしましょう。
心理カウンセラーの浅野寿和氏によると、「人の期待に応える頑張りを続けている方ほど、実は『他人基準』で物事を見て、自分を評価している」のだとか。そして、「相手次第だけで自分の評価が決まるなら、人に振り回されつづけることにもなりますから、ちょっとしんどい」と述べています。
つまり、“嫌われないようにこれをしよう”、“よく思ってもらえるようにあれをしよう” などと他人基準で考え、相手の期待に応えようとばかり思っていたら、疲れて当たり前なのです。実際、「人から物を頼まれると断れなかったり、休日出勤を頼まれると予定があっても仕事に出かけ」たりするケースもあるとか。
(上記カギカッコ内は、すぐに役立つ!心理学講座|「頑張っても頑張っても報われない」からの卒業~「期待の心理」と「他人基準の評価」~ より)
そこで大切になってくるのが「自分基準」の考え方だそう。
自分が自分を許し、評価できるようになること、が必要になります。
(中略)
今までの自分がどのような思いで過ごしてきたのか、自分が誰のために頑張ってきたのか、をしっかり認めて自分を「許す」ことです。
(引用元:同上資料)
それは「『自分なりに頑張った』ことを自分で認められる」ことであるとも、浅野氏は表現しています。
職場での人間関係に当てはめるなら、このように考えられるでしょう。
- 「同僚に嫌われないよう、頼まれ事はいつでも引き受けなくては」と考える癖がある人は……
→「自分なりに、頼まれ事は頑張って引き受けている。それだけで十分同僚のことを思っているのだから、引き受けられないことがあってもいいのだ」と考える - 作業スピードが人より遅いことで「自分は迷惑な存在だと思われていそう」な気がする人は……
→「作業スピードを上げられるよう、自分なりに頑張っているのだから、それで十分だ」と考える
このように考え方を変え、自分をいたわることができれば、人間関係で無理をすることも減るでしょう。つい周囲の評価を気にしてしまう人は、自分を自分で認めてあげてくださいね。
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人間関係にストレスを感じ消耗している人は、一度思考習慣を見直してみてください。きっと、いままでより心地よく働いていけるようになるはずです。
人間関係で疲れたときにやってほしいことは、「『人間関係に疲れたな』と思ったら最初にやるべき3つのこと」でさらに3つ紹介しています。あわせてご覧ください。
(参考)
リクナビNEXTジャーナル|金髪アフロの精神科医が教える「仕事の人間関係から自分の心を守る」ための対処法
すぐに役立つ!心理学講座|期待する心理学~期待はずれになるとがっくりきちゃうんです~
Robert A. Emmons, Michael E. McCullough (2003), “Counting Blessings Versus Burdens: An Experimental Investigation of Gratitude and Subjective Well-Being in Daily Life,” Journal of Personality and Social Psychology, Vol.84, No.2, pp.377-389.
プレジデントオンライン|脳科学者が直伝、1週間で「ご機嫌な人」になれる日記の書き方
相川充, 矢田さゆり, 吉野優香(2013), 感謝を数えることが主観的ウェルビーイングに及ぼす効果についての介入実験, 東京学芸大学紀要, 総合教育科学系I, 64, pp.125-138.
Harvard Business Review|How to Cultivate Gratitude, Compassion, and Pride on Your Team
すぐに役立つ!心理学講座|「頑張っても頑張っても報われない」からの卒業~「期待の心理」と「他人基準の評価」~
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。