「同僚のあの人の愚痴話が長くて、エネルギーを吸いとられる……」
「威圧的な上司から、いつも理不尽なことを言われる……」
職場にはできるなら避けたい人が少なからずいるもの。とはいえ、チームとして働くなら、相手を完全にシャットアウトするわけにもいきませんよね。
厄介な人にはどう対応していけばいいのでしょうか。本記事では、一緒に働きたくない人への対処法をご紹介いたしましょう。
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。
現代ビジネス|人の話は3分の1だけ聞けば大丈夫…?! カウンセラーに学ぶ「疲れない聞き方」のコツ
東洋経済オンライン|燃え尽きる「いい人」と成功する「いい人」の差
STUDY HACKER|心が疲れにくい人は必要以上に○○しない。危険な「感情コントロールの罠」から抜け出す方法
STUDY HACKER|「好印象を与えない」のが正解。高圧的、むちゃぶり……面倒くさい上司から自分の心を守るコツ
1. 「愚痴が長い人」の対処法:1/3だけ聞く
誰しも愚痴を聞かされていい気分にはならないもの。とはいえ、職場の人間関係は大切。相手を無視するわけにはいきませんよね。そこでお伝えしたい対処法が、1/3だけ聞くというもの。
「話の2/3を聞き流すなんて冷たいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、プロのカウンセラーは、すべてを聞くわけではないそう。心理カウンセラーの山根洋士氏は、以下のように述べています。
疲れるのは、1から100まで聞かなければいけないと考えるからです。
(引用元:現代ビジネス|人の話は3分の1だけ聞けば大丈夫…?! カウンセラーに学ぶ「疲れない聞き方」のコツ)
要するに、話の始めから最後まで聞き逃さないようにする姿勢では、こちらは疲れてしまうだけなのです。
とはいえ、「上の空で聞いていては相手にも伝わってしまうのでは?」という不安もありますよね。聞き流していることが伝わってしまえば、ますます相手の機嫌を損ね、自分への当たりも強くなるのでは……と思われるかもしれません。
そう思われる方は、一度相手の話を文章に起こしてみてはどうでしょうか。山根氏いわく、人の話は……。
「言いたいことはこれだけだったの?」と愕然とするくらい簡単だったりします。
(引用元:同上)
基本的に、要点を整理して愚痴を言うことはありません。相手はただ、心に留めることのできない気持ちを、思い浮かぶままに話しているわけです。
となれば、 “上手な聞き手” の定義が変わってくるのではないでしょうか。つまり、うまく聞くには、必要な部分だけに注意を払えば十分。
山根氏は、言葉は「心電図(ポリグラフ)のよう」に「エネルギーの揺れ」がある、と語ります。たとえば、次の変化が見られるのだとか。
- 怒りや喜びなど興奮している場面
→力強い口調、大きな声、何度も同じことを繰り返す - 悲しみや落ち込みなど弱くなっている場面
→沈んだ口調、声が途切れる、声が小さくなる
上記のとおり「振れ幅が大きいところ」だけ拾いとりながら、相づちを打てばいいのです。(カギカッコおよび上記参考元:同上)
実際の会話でイメージすれば——
「また提案を却下された!」(大きな声)
「1か月前から準備していたのに!1か月もだよ?」(同じことを繰り返す)
「練り直してって言われて本当に……」(声が途切れる)
「この案件を降りたほうがいいのかな……」(声が小さくなる)
声の調子は感情と連動しているもの。怒ったり、悲しんだりするタイミングで相づちを打てば、相手も安心するでしょう。ぜひみなさんも、聞きすぎないことを心がけてみてくださいね。
2. 「自己中心的な人」の対処法:得にならない親切をやめる
親切をしても自己中心的な人は、当たり前であるかのごとく受け止めてしまいます。損をする優しさをやめ、“自分がしたいから”という自分主体の親切を心がけてください。
「世の中には、成功する 『いい人』と燃え尽きてしまう 『いい人』がいる」と語るのは、マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏。
同氏が根拠として引用するのは、ペンシルベニア大学の組織心理学者、アダム・グラント氏の著書『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』。グラント氏は次のように、人を3つに分類しました。
- テイカー:自分の利益を多めにとり、「勝ち負け」を重視する
- マッチャー:損得を公平に考え、常に相手とのバランスをとる
- ギバー:相手に多めに与え、他人軸で考える
(カギカッコ内および参考元:東洋経済オンライン|燃え尽きる「いい人」と成功する「いい人」の差)
一見、ギバーは損をすると思いがちですが、永井氏によれば「他人の利益と自分の利益を同時にウィンウィンで考え」るギバーは成功しやすく、反対に「自己犠牲で与え続けるギバーは燃え尽き」てしまうのだとか。(カギカッコ内引用元:同上)
相手への優しさを優先し、自分の得るものを後回しにすれば、自己中心的な人に振り回され、自己犠牲で終わってしまうのですね。
であるなら、いっそのこと自己中心的な人への親切をやめてみましょう。一般社団法人感情マネージメント協会代表理事、公認心理士の片田智也氏は「人のための親切はやめる」ことを推奨しています。大切なのは「『親切にしたいからそうする』と、自分の感情に素直に従うこと」なのです。
(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|心が疲れにくい人は必要以上に○○しない。危険な「感情コントロールの罠」から抜け出す方法)
つまり、自分の意思に反し「手伝わなければ」と考えて行動するのはやめ、「本当に親切にしたい」と思えるのなら手伝うこと。心と行動を一致させれば、必要以上に疲れることはないのです。
筆者も数年前に友人の転職活動を手伝った際、書類の間違いを指摘したら「人に厳しいね」とあとから言われました。そのときは怒りが湧きましたが、考えてみれば「手伝わされている」気持ちのほうが強かったのかもしれません。片田氏の話を聞いて「本当に手伝いたい」と思わなければ、断ってもよかったのだ、と気づきました。
「相手を助けなくては」と思ったとき、一度自分の意思を確かめてみてください。本当に親切にしたい場面だけ、手を差し伸べましょう。
3. 「威圧的な人」の対処法:好印象を与えない
上司と部下の関係であれば、フラットな関係は難しいもの。だからといって、威圧的な上司に対し、へりくだる必要はありません。適度にいい人をやめてみてください。
“いい人をやめる” なんて、ますます威圧的な人の神経を逆なでするのでは? ——そう考える人もいるかもしれません。でも、いい人であればあるほど、相手に利用しやすい人間だという印象を与えてしまうのです。
産業医・精神科医の井上智介氏は、面倒くさい人は「『いい人』もターゲットにしがち」だと言います。なぜなら、彼らには次のような共通点があるから。
「これは自分がすべきことだから仕方ない」「申し訳ない」といった義務感や罪悪感などを利用して、「自分が思ったとおりに相手をコントロールしようとする」という共通点があります。
(カギカッコ内および上記引用元:STUDY HACKER|「好印象を与えない」のが正解。高圧的、むちゃぶり……面倒くさい上司から自分の心を守るコツ)
自分の意見を主張できる部下に無理な要求をしても、正当な反論をされる可能性がありますよね。ところが、仕事を回しても嫌な顔をせず引き受けてくれる人ならどうでしょうか。道理に合わない叱責をしても、「申し訳ありません」と自分に非があるのだと感じてくれる可能性が高いでしょう。
威圧的な人の思い通りにならないためにも、井上氏は「『いい人』はやめましょう」と言います。簡単ではないと思う人もいるかもしれませんが、たとえば次のささいな反抗でもいいのです。
- 業務時間外の連絡にすぐ返さない
- メールの返信でも必要以上にへりくだらず、必要最小限の内容にする
(カギカッコ内および参考元:同上)
筆者も前職では上下関係の風土が強い組織に所属していました。人として悪い人物はいなかったものの、新入社員であれば上司から「仕事が遅い」と圧をかけられることもしばしば。時にはあまりにも高圧的であったため、筆者は「申し訳ありません」の言葉を減らし、おびえた反応をしないよう心がけました。
思ったとおりの反応がないため、上司もいびりに効果がないと感じたのか、それ以上怒ることはなくなりましたよ。 “いい人” はやめてみましょう。相手が上の立場だからといって、自分を必要以上に下げることはしなくていいのです。
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仕事仲間全員に優しくある必要はありません。こちらのペースを乱さないためにも、厄介な人に対しては、本記事を参考に距離を置いてみてくださいね。