“勉強ハイ” に振り回されてない? 勉強が「超はかどる日」と「全然ダメな日」のムラをなくす3つのコツ

「勉強ハイ」に振り回されないための脳科学的アプローチ3つ01

「今日は集中して勉強できたぞ!」と手ごたえを感じた翌日、今度はまったく頭が働かず、勉強に全然集中できなかった……。こうした “勉強の波” を経験したことはありませんか? 脳科学的に見れば、この状態は自然なことであるようです。

とはいえ、いつでも安定して勉強し続けられるのが理想。そのための脳科学的なアプローチを3つご紹介しましょう。

「ずっと勉強に集中し続ける」が理想的ではない理由

勉強をいったん始めたら何時間でも集中できる人を「高い集中力を発揮できてうらやましい」と感じる人は多いことでしょう。

しかし、過度な集中状態が続くことは、よいとは言いきれないようです。作業療法士の菅原洋平氏いわく「勉強ハイは総合的パフォーマンスを落とす」(『ヤバい勉強脳 すぐやる、続ける、記憶する 科学的学習スタイル』より)。一時的に集中しすぎると、あとで勉強のパフォーマンスが悪くなる可能性があるというのです。

その理由として菅原氏が挙げるのが、脳のホメオスタシスの原理と、神経伝達物質のβエンドルフィンです。

まず、ホメオスタシスの原理により「過度に集中した後、脳は過度な低活動」になるとのこと。

そしてβエンドルフィンとは、「極端な痛みや苦しみに襲われたときに、それを少しでもやわらげ」る働きがあるもので、「『ランナーズハイ』という現象を生み出す物質」として知られるそう。その危険性は、

苦しみを感じないのをいいことに、仕事や勉強をやり続けていると、脳と体は危険な状態になります。

過度に仕事をし過ぎて突然倒れる危険性が、このβエンドルフィンと関係していると考えられているのです。

(引用元:菅原洋平 (2020), 『ヤバい勉強脳 すぐやる、続ける、記憶する 科学的学習スタイル』, 飛鳥新社.)※太字による強調は編集部にて施した

と菅原氏が述べるほど。

つまり、「長時間集中できた!」という達成感があっても、それだけで「勉強できたぞ!」と満足したり、「波に乗ってるぞ!」とばかりに勉強し続けようとしたりしてはいけないのですね。

そこで菅原氏は、「15分に1回」「30分に1回」「90分に1回」ひと区切り入れて、過度な集中状態を避けることをすすめています。では、その具体的な方法をご説明しましょう。

「勉強ハイ」に振り回されないための脳科学的アプローチ3つ02

【1】15分に1回、教材から目をそらす

1つめのタイミングは「15分に1回」。菅原氏は、「15分に1回、画面や資料から目をそらす」ことをすすめます。「『焦点視』を『周辺視』に切り替える」ことで「脳の働きをうまく配分する」ためです。

焦点視・周辺視とは、目の使い方のこと。それぞれが関係する脳ネットワークには、次の違いがあるそうです。

  • 焦点視:人差し指の指先を見るときの目の使い方
    集中しているときに働く「セントラルエグゼクティブネットワーク」が使われる

  • 周辺視:人差し指の周辺を見るときの目の使い方
    ぼんやりしているときに働く「デフォルトモードネットワーク」が使われる
(※前出の菅原氏の著書よりまとめた)

私たちが教材やノートを見ながら勉強するときに使っているのは、前者の焦点視ですね。

その焦点視をし続けることで「セントラルエグゼクティブネットワークが限界まで使われ」ると、今度は「強制的にデフォルトモードネットワークが起動」するとのこと。その結果、「作業と関係ない考えばかりが頭に浮かぶ、マインドワンダリングという状態に陥ってしま」う可能性があるのだそうです。

つまり、ずっと勉強に集中し続けると脳のネットワークが勝手に切り替わり、気が散ってしまうようになるということ。

「16分に1回のペースで別のことを考えていた」というマインドワンダリングの研究があることから、菅原氏は「15分毎に画面や教材から目をそらして」みるようすすめています。

安定したパフォーマンスで勉強し続けるには、長時間の集中は避けたほうがよいのですね。焦点視の使いすぎに注意して、定期的に周辺視を使うようにしましょう。資料から目を離すついでに窓の外を眺めるなどすれば、目の休憩にも気分転換にもなりそうですね。

「勉強ハイ」に振り回されないための脳科学的アプローチ3つ03

【2】30分に1回、席を立つ

2つめのタイミングは「30分に1回」。菅原氏は、「30分に1回は立ち上がって少し歩いて」みることをすすめます。その理由は、ずっと座ったまま同じ姿勢でいて滞った血流を改善するため。「血流が滞ると、体と脳に蓄積する疲労物質が代謝されにくく」なってしまうと菅原氏は説明しています。

早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗氏いわく「座って5分もすると血流がたちまち悪化し、30分後には血流速度は70%も低下する」(「ダイヤモンド・オンライン|30分のデスクワークや運転でも血液ドロドロを招く座りすぎの恐怖」より)。

1~2時間勉強に集中できると達成感で嬉しくなるものですが、体のことを考えると、座り続けるのは危険であるよう。体の状態を整えて安定して勉強し続けるには、疲労物質をためないようにしたいものです。

なお、30分に1回立ち上がった際には、「軽く水分補給」をするとよいと菅原氏。また、早稲田大学スポーツ科学学術院非常勤講師の荒木邦子氏は、「できれば1分ほど動く」ことをすすめています。具体的な動作として、荒木氏が提案するもののなかから3つご紹介しましょう。

  • 両脚を腰幅に開きかかとを上げて背伸び
  • 片脚ずつ、ゆっくり横に上げ下ろし。左右4~6回
  • 片膝を曲げた状態で90度になるまで引き上げ下ろす。左右4~6回
(※「NIKKEI STYLE|日本の職場は座り過ぎ ちょい運動で血行を改善」より上記項目のみ引用)

これなら立ったその場で、机の横で実践できるはず。どれか1つでもいいのでやってみてください。

「勉強ハイ」に振り回されないための脳科学的アプローチ3つ04

【3】90分に1回、休憩をとる

3つめのタイミングは「90分に1回」です。菅原氏いわく「集中力の限界」となる時間がこの90分。そのタイミングで休憩をとろうというわけです。

では、90分に1回の休憩時には何をするとよいのでしょうか? 精神科医の樺沢紫苑が著書『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術 』ですすめている休憩の仕方をご紹介しましょう。

10分間の「運動」で集中力や学習効率を高める

樺沢氏によれば、運動は、次の90分間がよりエネルギーに満ち、集中力と学習効率が高まった状態にするのに効果的だとのこと。たった10分間の運動で、ドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなどの脳内物質のレベルが高まるそうです。

コンビニに買い物に行く、少し散歩する、建物内に階段があるなら階段の上り下りをするなどするといいかもしれませんね。休憩中は積極的に動いて、次の90分を迎えましょう。

5分間の「仮眠」で強い眠気をとる

猛烈な眠気に襲われているときであれば、仮眠もいいそうです。「人間の覚醒度は90分の周期」があり、「『猛烈な眠気』が出るのは(中略)覚醒度が最も低下しているとき」なのだそう。

5分の仮眠をとることで、覚醒度アップの波に乗る。次の90分を高い集中力で乗り切ることができるのです。

(引用元:樺沢紫苑 (2017), 『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術 』, 大和書房.)

たった5分で効果があるとは驚きですね。眠気をつい我慢してしまう人もいるかもしれませんが、次の90分間も続けて勉強をはかどらせるために、いさぎよく眠ってしまいましょう。

***
勉強の波に悩んでいる人は、「15分に1回」「30分に1回」「90分に1回」を目安にひと区切り入れるようにしましょう。勉強のランナーズハイ状態を防ぐことで、総合的なパフォーマンスを上げることができますよ。

(参考)
菅原洋平 (2020), 『ヤバい勉強脳 すぐやる、続ける、記憶する 科学的学習スタイル』, 飛鳥新社.
NIKKEI STYLE|日本の職場は座り過ぎ ちょい運動で血行を改善
ダイヤモンド・オンライン|30分のデスクワークや運転でも血液ドロドロを招く座りすぎの恐怖
樺沢紫苑 (2017), 『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術 』, 大和書房.
作業療法士 菅原洋平のブログ|90分サイクルでビジネスアスリートに!

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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