いつも仕事が遅い人は○○が見えていない。「とりあえず進める」はなぜ最悪なのか?

「仕事は絶対に後ろからやるべき理由」中尾隆一郎さんインタビュー01

ここ20年あまりでインターネットが完全に普及し、ビジネスに使うさまざまなツールが次々と生まれているいま、ビジネスパーソンひとりあたりの仕事量は右肩上がり。そのために、仕事の効率化が強く求められています。

そこでアドバイスをお願いしたのは、かつてリクルートグループで辣腕を発揮した中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)さん。現在は、事業執行・事業開発・マーケティング・人材採用・組織づくりなど、幅広いジャンルのスペシャリストとして活躍する、まさに多忙なビジネスパーソンです。

そんな中尾さんが提唱する効率的な仕事のやり方とは、「後ろからやる」というものでした。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

ゴールが見えていないと、次々に発生する問題の対処に追われる

「仕事の効率が悪い」要因というと、どうしても「作業のスピードが遅い」からと考えがちです。でも、仕事の効率が悪い要因というのは、それ以前に仕事を進めるにあたっての根本的な考え方そのものにある場合が多いのです。

その典型例というと、わたしが「前からやる」と呼んでいる仕事の進め方になります。これは、「この仕事は何のためにやるのか」というゴールを明確にしないまま、とりあえず始める仕事のやり方のこと。

ゴールがきちんと見えていないのですから、起こり得る問題も想定できていません。そうすると、手戻りやダブりが発生したり、肝心な業務の発注漏れがあったりと、さまざまな問題が発生し、その都度対処することになってしまう。それでは、仕事の効率はどんどん下がっていきます。

そして、この「前からやる」仕事の進め方が仕事の効率をより下げるのは、ひとりよりチームで行う仕事の場合です。そのチームも、メンバーが固定されていなくて流動的な場合には、その影響がさらに大きくなります。手戻り、ダブり、漏れに加えて、何をしていいかわからないメンバーの手待ち時間も発生するからです。

それらを避けるためにも、チームで仕事を行うには、それこそゴールを明確化し、それをメンバーと共有できている必要があります。

「仕事は絶対に後ろからやるべき理由」中尾隆一郎さんインタビュー02

目からうろこを落としてくれた、ある後輩の言葉

では、どうすれば仕事の効率を上げられるのでしょうか? それは、「前からやる」の逆、「後ろからやる」のです。つまり、先にお伝えした、ゴールを明確化するということ。このことに気づかせてくれたのは、わたしがまだリクルートに勤めていた頃の、ひとりの後輩でした。

当時のわたしは、あるチームのリーダーとして、役員会でさまざまな事業の提案を行なっていました。まだ「前からやる」タイプだったわたしは、役員会当日の朝まで提案書のリファインをするということもしょっちゅう。当時のわたしは、それが、自分なりに最高のプレゼンをする方法だと信じていたからです。それでうまくいくこともあれば、準備が足りなくてうまくいかないこともある。そして、後者の場合には、「もっとギリギリまで頑張ればいい」というふうに思っていました。

ところが、ある後輩にいわれたのです。どうして提案書作成の締め切りを1週間前にしないのですか?と。その言葉を聞いたときには、激務の日々を送っていましたし、できるわけがないと思いました。

でも、よくよく考えてみると、役員会まで1週間を切ったあとに見つけた事実やデータは、提案書のなかになかったのです。つまり、提案書作成の締め切りを役員会の1週間前に設定していても、提案書を十分に作成できていたことになります。

さらに、その後輩は続けました。この提案書をつくる目的って、いい提案書をつくることではないですよね?」「役員会でゴーサインをもらうことですよね?と。であるのならば、ギリギリまで提案書をつくるのではなく、プレゼンの練習もきっちりするべきです。場合によっては、事前に社長や役員に根回しをして役員会でのプレゼンはかたちだけにしてもいい。まさに目からうろこを落としてくれた言葉でした。

「仕事は絶対に後ろからやるべき理由」中尾隆一郎さんインタビュー03

仕事以外ではあたりまえにできている「後ろからやる」

ただ、これまでの仕事のやり方を変えるというと、「ちょっとハードルが高い」なんて思う人もいるかもしれません。でも多くの人が、仕事以外ではあたりまえのように「後ろからやる」考え方で行動していることも多いものです。

たとえば、意中の人をデートに誘う、パートナーにプロポーズするという場合を考えてみてください。それらのゴールは、デートやプロポーズにOKをもらうことですよね? デートに誘ったりプロポーズできたりすればOKとは誰も考えません。そして、ゴールに到達するためにさまざまな準備や工夫をします。

あるいは、進学や資格取得のための試験を受ける場合でもそうでしょう。試験に出るはずもない内容を勉強する人はいません。試験科目や過去問、出題傾向を調べ、試験に合格するためにはどんな内容をどれくらい勉強すればいいのかと考える。試験に合格するというゴールが明確化できているからこそ、そう考えられます。

そういう考え方を、仕事にも持ち込めばいいだけの話なのです。

「仕事は絶対に後ろからやるべき理由」中尾隆一郎さんインタビュー04

自分の仕事の効率をチェックする方法とは?

最後に、現時点での自分の仕事にどれくらいの無駄があるのかを調べる方法をお伝えしておきましょう。まずは、2週間、自分が仕事で何をしたのかを事細かくスケジュール帳に書き込んでみてください。そして、それらを次の3種類に分類します

A:主要業務/絶対に外せない会議などとても重要な作業や時間
B:周辺業務/Aのための準備の作業時間
C:手待ち業務/それ以外の手待ちの時間などいわば使途不明時間

そうしたら、「A:B:C」の比率をチェックしてみてください。客が現れるのを待たなければならないタクシー運転手のようにCの時間が大きくなってしまう職種もありますが、一般的なビジネスパーソンの平均でいうと、その比率は「75:20:5」くらいになります。もし、Aの時間の割合が75%を大きく割っているようなら、仕事の中身に問題があるということ。意識的に改善しなければ、そのまま効率の悪い仕事の進め方を続けることになってしまいます。

会社に属している人間が、組織全体の仕事の進め方をいきなり大きく変えることは、難しいかもしれません。それでも、話がわかる上司や役員に改善を訴えることはできるでしょう。それでもまったく変化がないというなら、転職を視野に入れて、まずは副業をはじめるなどしてもいい。

「人生100年時代」といわれています。いまはひとつの会社にしがみつく、あるいはしがみつける時代ではありません。自分の今後のキャリアのためにも、限られた時間を有効に使えるように、「後ろからやる」仕事術を身につけることをおすすめします。

「仕事は絶対に後ろからやるべき理由」中尾隆一郎さんインタビュー05

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【プロフィール】
中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)
1964年5月15日生まれ、大阪府出身。株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長。株式会社旅工房取締役。1987年、大阪大学工学部卒業。1989年、同大学大学院修士課程修了。同年、株式会社リクルートに入社。主に住宅、人材、IT領域の業務に従事し、住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室室長時代には6年間で売上を30倍、店舗数を12倍、従業員数を5倍に拡大した立役者。リクルートテクノロジーズ社長時代には、リクルートが掲げる「ITで勝つ」を、優秀なIT人材の大量採用、早期活躍、低離職により実現。リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを歴任し、2018年3月まで29年間のリクルート勤務を経て独立。専門は事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織づくり、KPIマネジメント、中間管理職の育成、管理統計など。リクルート時代は、リクルートグループの社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を約11年間にわたって担当。著書に『最高の成果を生み出す ビジネススキル・プリンシプル』(フォレスト出版)、『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)、『最高の結果を出すKPIマネジメント』(フォレスト出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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