“月に20時間だけ働く” ために私が出した答え。「逆算思考」で生産性は劇的に上がる。

「生産性を大きく上げる逆算思考とは何か」中尾隆一郎さんインタビュー01

かつてリクルートグループで辣腕を発揮し、現在は事業執行・事業開発・マーケティング・人材採用・組織づくりなど、幅広いジャンルのスペシャリストとして活躍する中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)さんが、自らの働き方のベースとしているのは「逆算思考」だそうです。

この思考は、多忙を極めるビジネスパーソンが仕事を効率化するためというだけではなく、「あらゆる仕事からリターンを得るためにも重要」だと、中尾さんは語ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「ゴールを明確化」し、「因数分解」して「論点」を見つける

仕事を効率的に進めるため、わたしが提唱しているのは「後ろからやる」という方法です(『いつも仕事が遅い人は○○が見えていない。「とりあえず進める」はなぜ最悪なのか?』参照)。それは、言い換えれば「ゴールから逆算で考える」ということ。これを仕事にあてはめると、いくつかのステップに分けて考えることができます。ここでは、わたしが独立した直後のことを具体例として説明しましょう。

まず、何よりも最初にやるべきことは、「ゴールを明確化する」ことです。独立直後のわたしの場合、まず考えたのは「すごくすてきな人とだけ仕事をしたい」というもの。しかも、できれば「楽しいテーマで世の中の役に立つ仕事をしたい」。でも、サラリーマン時代のように月に200時間も働くのはちょっと避けたい……(笑)。そこで、理想として「月に20時間、すごくすてきな人と一緒に世の中の役に立つ楽しいテーマで仕事をしたい」というゴールを掲げました。

すると、今度はゴールに至るための方法を「因数分解」することで、重要な「論点」が見えてきます。たとえば、月に20時間しか働かないのであれば、「生活をするためには単価をいくらにしなければならない」といったものです。あるいは、「そんな単価を支払ってくれるすてきなお客さんを見つけなければならない」ということも大きな論点になります。

そうしていくつかの論点を見つけたら、続いてそれらのなかから最も重要な論点を選ぶ「ひとつに絞る」という作業をします。人間は、一度にいくつものことを深く考えたり、たくさんの作業をこなしたりすることはできません。わたしのケースなら、「すてきなお客さんが見つかるか」ということが最重要課題でした。

「生産性を大きく上げる逆算思考とは何か」中尾隆一郎さんインタビュー02

「論点」を「ひとつに絞り」、課題解決のための「仮説」を立てる

わたしはその課題を解決するための方法として、上場企業に絞って商談をすることにしました。小さい会社の場合、どうしても資金に限りがあります。一方、上場企業のような大企業であれば、資金は豊富にある。わたしにとってのたくさんのお金は、大企業にとっては相対的には小さい額です。わたしが提示する単価を支払ってくれる可能性も高いというわけです。

こうして、「ゴールを明確化」し、そのゴールに至るための方法を「因数分解」して「論点」を広げたら、そのなかから「ひとつに絞る」ことで、わたしがやるべきことは上場企業と商談をすることだと明白になったというわけです。

さらに、その先にはそのやるべきことを成し遂げるために「仮説」を立てることも大切です。いくら「上場企業に絞って商談をする」と決めたところで、わたし自身が知っている上場企業に勤めている人には限りがあります。では、どこにそういうすてきなお客さんがいるのか。わたしは、そういう「すてきな人はすてきな人の近くにいる」と仮説を立てたのです。そこで、Facebookを使って、わたしの身近なすてきな人たちに向けて「すてきな人を紹介してほしい」と呼びかけたわけです。

また、「月に20時間だけ働く」というゴールもありますから、それぞれの営業先から提案書をつくるようにお願いされるとゴールへの到達が危うくなります。そこで、逆に「わたしができること」という共通の提案書をつくって、顧客の解決したい課題と合致するものがあれば連絡をしてもらうようなストーリーにしたらどうかと考えました。

このようにして、結果的にFacebookを通じて多くのすてきなお客さんを紹介してもらい、ありがたいことに仕事をさせてもらっています。それは、逆算思考でやるべきことを明確にしたからできたことなのです。

「生産性を大きく上げる逆算思考とは何か」中尾隆一郎さんインタビュー03

やらされている仕事にも自ら「リターンをつくる」

わたしがゴールに掲げた「月に20時間だけ働く」というのはちょっと極端な例かもしれませんが、仕事をする以上、「リターンが大きい仕事をする」ということを心がけてほしいと思います。あるいは、場合によっては「リターンをつくる」といういい方にしてもいいかもしれません。

会社に勤めている人なら、「やる意味はわからないけどやらなければならない」というような仕事もあるものです。でも、上から指示されるままにその仕事をしてしまっては、そこから得られるものは何もありません。であるのなら、自分でリターンを得られるようにしてしまえばいいのです。

たとえば、「上からやれといわれているから」と、やる意味を感じないまま日報をつけているという新入社員もいるでしょう。そうではなくて、たとえば日々の業務中に困っていることを書いてみる。それで先輩や同僚が助けてくれたらラッキーですし、それこそリターンを得られることになります

あるいは、その日報の書き込みに誰からも何の反応もなかったら、今度は「どうすれば反応があるのか」と考えて、いろいろな書き方を試してみる。たかだか日報ですが、考え方と使い方次第では、人を動かすマネジメント能力の訓練にも使えるのです。

この日報の使い方はあくまで一例ですが、「リターンをつくる」という発想、つまり「この仕事は何のためにやるのか」という「ゴールを明確化する」ことは、どんな仕事をするにも重要な考え方なのです

「生産性を大きく上げる逆算思考とは何か」中尾隆一郎さんインタビュー04

【中尾隆一郎さん ほかのインタビュー記事はこちら】
いつも仕事が遅い人は○○が見えていない。「とりあえず進める」はなぜ最悪なのか?
「数字で考えられる人」が強いこれだけの理由。明日のランチから始められる数字習慣。

最速で課題を解決する 逆算思考

最速で課題を解決する 逆算思考

  • 作者:中尾 隆一郎
  • 秀和システム
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【プロフィール】
中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)
1964年5月15日生まれ、大阪府出身。株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長。株式会社旅工房取締役。1987年、大阪大学工学部卒業。1989年、同大学大学院修士課程修了。同年、株式会社リクルートに入社。主に住宅、人材、IT領域の業務に従事し、住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室室長時代には6年間で売上を30倍、店舗数を12倍、従業員数を5倍に拡大した立役者。リクルートテクノロジーズ社長時代には、リクルートが掲げる「ITで勝つ」を、優秀なIT人材の大量採用、早期活躍、低離職により実現。リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを歴任し、2018年3月まで29年間のリクルート勤務を経て独立。専門は事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織づくり、KPIマネジメント、中間管理職の育成、管理統計など。リクルート時代は、リクルートグループの社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を約11年間にわたって担当。著書に『最高の成果を生み出す ビジネススキル・プリンシプル』(フォレスト出版)、『「数字で考える」は武器になる』(かんき出版)、『最高の結果を出すKPIマネジメント』(フォレスト出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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