重要な仕事は早めに手をつけるようにしているのに、毎日残業してばかり……。
緊急だと言われた仕事ばかりやっていて、普段のタスクがいつまでも終わらない……。
そんな人は、仕事の優先順位のつけ方を見直してみましょう。「重要度」や「緊急度」で決めるといういまのやり方を、よりよい方向にアップデートするときかもしれません。
今回は、仕事が前に進まないときに試してみるべき、タスクの優先順位のつけ方をご紹介します。
タスクは「重要かつ緊急なもの」からやるのがセオリー?
タスクは “重要かつ緊急なもの” からやるべきだ――そう聞いて実践している人はたくさんいるはず。たしかに、重要で緊急な仕事ほど、先にやらなくてはというプレッシャーを感じますよね。
しかし、実際の効率はどうでしょう。重要で緊急な仕事は、時間がかかることも多いもの。そうしたタスクに時間がとられてばかりで、ほかの仕事があと回しになってしまう……ということは起きがちではないでしょうか。
『時間最短化、成果最大化の法則』著者の木下勝寿氏は、仕事をあと回しにする問題点について、「後でやろうとすると記憶が薄れ、アイドルタイムが発生し、精度も下がる」と指摘します。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|頭よさげなのに実は考えが浅い人が知らない【優先順位のダブルマトリックス】の法則)
たとえばいま、次の3つのタスクを抱えているとしましょう。
- メール返信
所要時間5分、重要度「低」、緊急度「高」 - ミーティング議事録の作成
所要時間15分、重要度「高」、緊急度「低」 - 資料作成
所要時間2時間、重要度「高」、緊急度「高」
3つのうち、重要度&緊急度が高い資料作成から始めるとします。少なくとも2時間は、ほかのタスクのことをいったん忘れる必要がありますよね。
そして2時間後、資料作成が終わったので、次はミーティング議事録の作成に着手するとしましょう。すると「どんな内容だったっけ? ○○について述べていたのは誰だっただろう。次のアクションは、えーっと……」と、思い出すのに時間がかかるもの。本来なら15分で終わるはずが、思い出したり、ミーティングの別の参加者に聞いて回ったりして、30分かかるといった事態もありうるでしょう。そして、すぐに送るべきだったメール返信はさらにあと回しに……。仕事全体の効率は、当然悪くなります。
このような問題点が生じる可能性があるため、重要かつ緊急な仕事から取り組むことは、常に正解だとは限らないのです。
タスクは「すぐ終わるもの」からやるといい
上記のような問題を防ぐには、どうしたらよいのでしょう。木下氏は、「重要度・緊急度のどちらかが低くても、すぐ終わるものを先にやるほうが成果は上がる」と伝えています。その理由は「記憶が鮮明なうちに仕事が終わるので、短時間で漏れなく精度の高い仕事ができる」から。(カギカッコ内引用元:同上)
先ほどの例であれば、
- 重要度は低いけれど、5分で終わるメール返信
- 緊急度は低いけれど、15分で終わるミーティング議事録の作成
を先に終わらせるほうがいい、ということです。たしかにこれなら、「返信しようと思ってたメールはどれっだっけ」「ミーティングの内容はなんだったかな」と、わざわざ思い出す手間が省けますね。
加えて木下氏は、こうも説いています。
あなたの工程が終わらない限り、次の工程が始まらない場合、あなた単体でその案件が重要度も緊急度も高くないとしても、全体で見たら高い場合もある。
そんなときはさっさとあなたの工程をすませ、次工程にバトンを渡すことが重要だ。
(引用元:同上 ※太字は筆者が施した)
たとえば、前出の3つのタスクなら、相手がいて時間もかからないメール返信は真っ先にやるほうがいいわけです。相手からの用件にすばやく返信してあげれば、相手も仕事を前に進められます。
また、『SINGLE TASK 一点集中術』著者のデボラ・ザック氏も、かかる時間が「1分」「10分以内」「1時間以上」の順にタスクに着手する、「1×10×1」システムを取り入れることをすすめているそうです。「仕事が山盛りになってしまった場合に」有効なのだとか。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|生産性10倍に?!「シングルタスク」に切り替える方法)
重要度や緊急度は、状況によって変化する可能性があります。それよりも “すぐ終わるかどうか” のほうが、動かしようのない指標として信用できるはず。それに、これは重要かな、緊急かな……とタスク管理をする手間だって小さくはありません。すぐ終わる順にサクサクこなしていけば、それが一番シンプルなのです。
タスクを「すぐ終わるもの」から片づける方法
筆者も実際に、「重要度・緊急度が低くても “すぐ終わる” もの」からタスクを片づけることにしました。じつはもともと、このやり方で作業をするのが楽だと感じていた筆者。ただしこれまでは、特になんの気なしにタスクに取り組んでいたため、木下氏のメソッドを徹底することでどんな効果を得られるか、この機会に確認してみようと思ったのです。
今回は、1日のタスクを朝一番にリストアップして、想定所要時間が短い順に上から並び替えたあと、それぞれのタスクに取り組むことにしました。下の画像のように、スマートフォンのリマインダーアプリを使うと、タスクを容易に並び替えることができました。
重要度・緊急度が高い仕事から始めるとなると、筆者の場合は、STUDY HACKERの原稿レビューや編集が先になります。しかし、これらのタスクは、ほかのタスクと比較してかなり時間がかかるもの。今回は徹底的に所要時間の短さを意識し、上記の順番でタスクに取り組みました。
「すぐ終わるもの」から取り組んで感じたメリット
所要時間が短いものからタスクに取り組んでみた結果感じたことを、以下にまとめます。
1. モチベーションが上がる!
筆者はもともと、すぐ終わる仕事からやるのが楽だと感じていた――というのは先述のとおりですが、時には「間に合わないのはよくない」と考えて、時間がかかるタスクから先に取り組むこともあります。そうすると、「なかなか終わらない……。ほかにもやるべき仕事があるのに……」とモチベーションが落ちて苦労することがしばしば。
しかし今回、「重要度・緊急度のどちらかが低くても “すぐ終わる” もの」から始めるというのを徹底したことで、達成感を得やすく、時間がかかるほかの仕事にもモチベーションを維持しながら取り組むことができました。
筆者の場合、「メール返信」「企画書チェック」などを先に終わらせておくと、時間がかかる残りの作業に関しても調子よく進めることができました。
2. 仕事の効率が上がる!
そうしてモチベーションを維持できる時間が増えたおかげか、作業全体の効率も上がったように感じられました。タスクが短時間でどんどん片づくので、残りの作業へもより意欲的に取り組めるようになったのです。
「重要度」「緊急度」のような曖昧な指標を使わないだけで、分類の手間が省け、作業時間の増加、効率アップにつながることを実感できました。仕事がなかなか前に進まない……という悩む方に、ぜひこのやり方をおすすめしたいです。
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やるべきタスクをたくさん抱えていたり、残業が多かったりするなら、「すぐ終わるもの」をまずはひとつ完了させるところから、ぜひ取り組んでみてください。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|頭よさげなのに実は考えが浅い人が知らない【優先順位のダブルマトリックス】の法則
リクナビNEXTジャーナル|生産性10倍に?!「シングルタスク」に切り替える方法
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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