「タスク管理」とひとことで言っても、そのやり方は人によって異なるものです。これまでに自分なりにタスク管理をしてみた結果、「あまり効果を感じられなかった……」という人もいるかもしれません。
そこで、著書『なぜか仕事が早く終わらない人のための 図解 超タスク管理術』(あさ出版)を上梓した心理学ジャーナリストの佐々木正悟(ささき・しょうご)さんに、タスク管理において重要な基本ステップを教えてもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
「いま」「ここ」に集中できなければ成果を挙げられない
私の著書『なぜか仕事が早く終わらない人のための 図解 超タスク管理術』(あさ出版)では、タスク管理の流れを8つのステップに分けて紹介しています。
しかし、ここではスペース上の問題もありますので、これまできちんとタスク管理をできていなかった人に向けて、特に重要な3つのステップについて解説しましょう。それは、以下の3ステップです。
【タスク管理における基本の3ステップ】
- 「いま」「ここ」に集中する
- 「約束」をリストアップする
- 「他人との約束」を厳守する
「いまはなにをするのがいいのか?」「次になにをするんだっけ?」といった迷いが生じてしまっては、効率的に仕事を進められません。だからこそ、仕事で成果を挙げるには、いまやるべきことをひとつ明白にし、それに集中することが重要です(『あなたもきっとしている「タスク管理の誤解」2つ。「予定」と「タスク」はまったくの別物だった』参照)。つまり、「『いま』『ここ』に集中する」ということです。
もし、「いま」「ここ」にふたつのものをもち込んだらどうなるでしょう? たとえばプロジェクトAに関するタスクを進めているときに、「いまはプロジェクトAではなく、プレゼンの準備をすべきでは?」と考えてしまうと、「いま」「ここ」にふたつのタスクを持ち込んでいることになります。結果的に、どちらにも集中できずに成果を挙げにくくなるでしょう。
タスク管理の目的は、「他人との約束」を厳守することにある
そして、「『いま』『ここ』に集中する」ためにも欠かせないのが、2つめのステップである「『約束』をリストアップする」というものです。
私が言う「約束」には、開始時刻が決まっている仕事などの「予定」と、開始時刻が決まっていない「タスク」のどちらも含まれます。
そして、この約束は、さらに「自分との約束」「他人との約束」のふたつに分けられます。「自分との約束」は、たとえば「筋トレをする」とか「英語の勉強をする」といった、他人が関わらないものです。
一方の「他人との約束」は、「病院に行く」といったプライベートのものに、「打ち合わせ」「提出物の締め切り」など仕事に関わるものもあります。いずれにせよ、他人がかかわる予定やタスクが「他人との約束」となります。
「自分との約束」と「他人との約束」のすべてをそれぞれリストアップしましょう。なぜなら、「『他人との約束』を確実に遂行する」ことが、タスク管理をする大きな目的のひとつだからです。
そうしてリストアップした約束のうち、「自分との約束」については、わざわざ管理をする必要はありません。自分に時間があるなら、いつ筋トレをしても英語の勉強をしてもかまわないからです。
「自分との約束」と「他人との約束」を混在させるのはNG
一方の「他人との約束」については、きちんと管理し、なによりも厳守すべきです。というのも、「『他人との約束』を厳守する」ことこそが、社会人としてなすべきことであり、かつ自分の信用を高めてくれるからです。
もっと言うと、「仕事とは『他人との約束』を厳守することにほかならない」とまで言っていいかもしれません。
取引先とのミーティング、上司に指示された報告書の作成など、仕事にまつわる予定やタスクには必ず他人が関わります。それら「他人との約束」をきっちりと守ってさえいれば、筋トレをしようがしまいが勉強をしようがしまいが、仕事における自分の信用や評価が失墜することはありません。
ですから、信用や評価を下げるような事態を招いてしまわないよう、ステップ2でリストアップした「自分との約束」「他人との約束」は混在させないように気をつけましょう。
手帳にせよデジタルカレンダーにせよ、まさに「自分との約束」「他人との約束」のどちらも同じツールに記入しているという人も多いでしょう。そうすると、パッと見たときに、確実に遂行すべき約束、つまり「他人との約束」がどれなのかがわかりにくくなってしまうのです。
「『いま』『ここ』に集中する」ことの重要性を認識し、「自分との約束」と「他人との約束」をわけ、「他人との約束」を厳守する——。これが、タスク管理の基本の考え方です。
【佐々木正悟さん ほかのインタビュー記事はこちら】
あなたもきっとしている「タスク管理の誤解」2つ。「予定」と「タスク」はまったくの別物だった
「優先順位」不要。「なる早」厳禁! 仕事が絶対はかどるタスク管理術「マニャーナの法則」って知ってる?
【プロフィール】
佐々木正悟(ささき・しょうご)
1973年生まれ、北海道出身。心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人のひとり。専門は認知心理学。1997年、獨協大学卒業後、ドコモサービスで派遣社員として働く。2001年、アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年にネバダ州立大学リノ校実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。帰国後は「効率化」と「心理学」をかけ合わせた「ライフハック心理学」を探求し、執筆や講演を行う。ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)の他、『最小の整理で100%役立つノートシステムを手に入れる!』(金風舎)、『つい顔色をうかがってしまう私を手放す方法』(技術評論社)など著書多数。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。