「信頼されたいのに、いくら仕事を頑張っても信頼してもらえていない気がする……」
「いい雰囲気をつくりたくて同僚をほめたら、『お世辞に聞こえる』と言われてしまった。どうすれば不自然な印象を与えずにすむだろう……」
このような悩みがある方は、「信頼されよう、好感をもってもらおう」といろいろ頑張っていることでしょう。ですが、無理をする必要はありません。言葉選びに少し気を使うだけで、自然体で周囲に好印象を与えることは可能なのです。
今回の記事では、「まわりから自然に好かれる人」になるための口癖を3つご紹介します。職場の人間関係をよくしたいなら、ぜひご一読ください。
1.「ありがとう」がなにより大事
「成果を出せば信頼されるはず」と信じて業務に一生懸命になるあまり、ある大事なことを忘れていませんか? それは「ありがとう」の言葉です。
関西福祉科学大学教授でポジティブ心理学に詳しい島井哲志氏によると、人は「ありがとう」と言われると幸福感が高まるそう。また、感謝を伝えることは、相手との関係性を深めることにつながるとのこと。「ありがとう」の言葉によって、相手とのあいだに幸せな感情が生まれ、人間関係もよくなっていくのです。
京セラやKDDIの創業者である稲盛和夫氏も、「ありがとう」という言葉を大事にしているそうです。稲盛氏は、職場の人に感謝の気持ちをもつと信頼が生まれて、仕事そのものもうまくいくと説いています。これこそが、稲盛氏が人から好かれ、実業家として成功したベースなのかもしれません。
ただし「ありがとう」の伝え方によっては、感謝の気持ちが伝わりにくいこともあるようです。
コミュニケーション研究家の藤田尚弓氏によれば、親切にしてもらったタイミングで一度だけ言う「ありがとう」は、相手の心に届きにくい場合があるとのこと。以下の言葉を使って、あらためて感謝を述べれば、確実に気持ちを伝えられるそうです。
「プレゼン前にアドバイスをくれたチームメンバーへ、プレゼン終了後に感謝を伝える」という例で説明しましょう。
- 「おかげさまで」
例:「おかげさまで、無事に終わりました。アドバイスありがとうございました」 - 「その節は」
例:数日後に「その節はありがとうございました。あのときプレゼンがうまくいったのは、アドバイスのおかげだと思っています」
このように、「ありがとう」はその場で言うだけでなく、時間を空けて繰り返し伝えてみてください。感謝の気持ちが相手にしっかりと届き、あなたとのあいだによい関係が築かれるはず。
結果を出して信頼されよう、というのも悪くはないかもしれませんが、結果に目を向けるあまり周囲への感謝をおろそかにするのは考え物です。「ありがとう」の言葉、ぜひ何度も伝えたいですね。
2.「肯定表現」に徹しよう
「早めに進めないとダメだよ」「小さい声じゃお客さまに聞こえないんじゃない?」――仕事がうまく進むように、みんなのためになるようにという一心で、積極的に意見を述べているけれど、同僚との関係はいまひとつ……。
それはもしかすると、「~~ない」という否定表現が多いからかもしれません。肯定表現を口癖にしましょう。
伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏によれば、否定表現を使うと、相手から「高圧的な人だな」「上から目線で嫌だな」と思われてしまう恐れがあるのだそう。
一方、肯定表現を使えば、相手が協力的になってくれたり、好意を抱いてくれたりするメリットがあるとのこと。例を見ていきましょう。
- 否定表現の例
「相談せずに進めないでください」
「納期を来月へ持ち越さないようにしよう」
「小さい声でボソボソと話さないほうがいいよ」 - 肯定表現の例
「相談してから進めてください」
「今月中に完了してもらえると助かります」
「もう少し大きな声で話すといいよ」
コミュニケーション研修を数多く実施する太田章代氏も、山口氏と同様、肯定表現を使うことで良好な人間関係が築けると言います。
太田氏いわく、肯定表現を使うコツは、相手を尊重する気持ちをもって会話すること。「どう言えば、相手は嫌な気持ちがしないだろうか」と相手の立場で考えたり、相手を立てる気持ちをもったりすれば、自然と肯定的な表現が口から出てくるそうです。
意見を述べるときは、肯定表現と相手への尊重を忘れないでくださいね。
3.「○○ですね」と見たままをほめる
部下や後輩からの信頼を得ようと、事あるごとに「さすが」「すごい」といった言葉を乱発していませんか? せっかくのほめ言葉も、薄っぺらなものになってはもったいないもの。そこでまずは、「○○ですね」と目にした状況を口にして、相手をほめる糸口をつくりましょう。
前出の藤田氏によると、ほめ上手な人は人間関係を円滑にすることができるそう。ただし、ほめ方には注意が必要だとのこと。「いいですね」「さすがですね」といったフレーズは、口先だけのほめ言葉になりやすく、望ましくないようです。
藤田氏がすすめるのは、相手がほめてほしいであろうことを会話から見つけ、相手に同調するかたちでほめること。その3ステップがこちらです。
- 「○○ですね」「△△でしたね」と目にしたことを口にする
例:朝、会議の資料を準備している後輩に「これから会議があるんだね」 - 相手の返事に同調するかたちでほめる
例:「そうなんです。資料が多いので、今朝は早めに出社しました」と答えた後輩に「朝早くからの入念な準備、お疲れさま」 - すぐに質問を重ねて「ほめ」を深める
例:「早起きするの大変だったと思うんだけど、今朝は何時に起きたの?」
このように、自然な会話のなかから「ほめポイント」を見つけ、それに同調するのが藤田氏流。すぐさま質問を重ねて会話を前へ進めれば、相手を謙遜させることなく、さりげなくほめることができるそうです。
「さすが」や「すごい」を連発するようなほめ方ではわざとらしく聞こえそうですが、上記のように会話の流れを重視すれば、自然な印象でほめることができますよね。ほめられた相手は、あなたに対して好印象を抱くはずです。試してみてください。
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ご紹介した3つの口癖をマスターすれば、好かれようと力まなくても、自然に好印象をもたれることでしょう。ぜひ、実践してくださいね。
(参考)
STUDY HACKER|「職場で幸せになる」ための3つの秘訣。対人関係をよくする “最高の習慣” とは
島井哲志(2021),『科学的に幸福度を高める50の習慣』, 明日香出版社.
稲盛和夫 OFFICIAL SITE|感謝の気持ちをもつ
稲盛和夫 (2004), 『生き方』, サンマーク出版.
All About|「ありがとうございます」だけではダメ!? 職場での感謝フレーズ使い分け
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【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。