「量産型」とは、特定のグループに特有のファッションをしている人を指す言葉である。いわゆる「量産型ヲタク」や「量産型女子大生」とは、どのような髪型・服装をしているのだろうか。もはや「制服」とみなされることすらある定番スタイルのポイントを紹介する。
「量産型」とは
「量産型」とは、もともと「大量生産型」の略称である。自動車や家電製品などのように、大量に生産される工業製品に対して使用されてきた。
大量生産型の「大量に存在している」という意味が転じて、髪型・メイク・衣服・振る舞いなどが画一的であり、「どこにでもいそうな人」に対して、2014年頃から「量産型」という言葉が使用されはじめた。「量産型ファッション」という表現が一例である。若者のファッションについて研究する共立女子大学の渡辺明日香教授によれば、「量産型ファッション」が広がった背景には「周りの友だちから浮かないように、目立ちすぎず、みんなが着ているような衣服を着用し、空気を読んで行動をする人が増えてきたこと」があるという。
「量産型ファッション」の背景には、「ユニクロ」や「H&M」といったファストファッションの台頭も挙げられる。
流行の服を安価で全身分そろえられるようになったため、ファッションの流行に従おうとすると、結果的に「量産型ファッション」になってしまう場合があるといえる。
「量産型ヲタク」とは
「量産型ヲタク(オタク)」とは、特定のブランドの似たような服を着用し、同じようなグッズを持つ「オタク(ヲタク)」を指す。「量産型ヲタク」のファッションの最たるものは、「ジャニーズのオタク(ジャニヲタ)」がライブやイベントへ参加する際の服装(参戦服)である。「量産型ジャニヲタ」の特徴としては以下が挙げられる。
うちわ
コンサートに参加する際の「必須アイテム」が、うちわである。このうちわには、応援対象となるアイドルの顔写真や名前がプリントされている。公式サイトで販売されているうちわもあるが、自分で手作りする「ジャニヲタ」も多い。
ガーリーなファッション
「量産型ヲタク」は、リボンやフリルをあしらったワンピースや黒色のローファーなど、いわゆる「ガーリー」な服装をしている。「量産型オタク」に好まれるブランドとしては、以下をはじめとするものが挙げられる。
- Ank Rouge(アンクルージュ)
- MAJESTIC LEGON(マジェスティック レゴン)
- Samantha Vega(サマンサベガ) 等
「量産型女子」とは
「量産型女子」とは、大勢と同じような髪型・髪色・服装・メイクをした、若い女性を指す造語。「没個性的」というニュアンスを含み、否定的な意味合いで使われることもある。
2017年、都内の女子大学生175名・男子大学生78名を対象に、「量産型ファッション」に関するアンケート調査が渡辺教授によって行なわれた。「量産型ファッションとは、どのようなファッションのことを指すか」を自由記述で答えさせたところ、以下をはじめとする回答が得られたという。
- 「ZARAの刺繍(ししゅう)ブラウス」
- 「女子大生が花柄のワンピースを着ること」
- 「巻き髪、茶髪、サマンサのバッグ、花柄スカート、パンプス」
生活科学を研究する広島大学の今川真治教授も、2017年、広島大学に所属する女性学生230名を対象に「量産型ファッション」に関する調査を行なった。「量産型ファッションをしている人をどう思うか」という質問に対し、「(好印象とも悪印象とも)どちらとも言えない」という回答の割合は72.5%だったため、多くの学生は「量産型ファッション」をニュートラルに受け止めていたといえる。
また、今川教授の同調査において、自分の服装を「量産型」だと認識している学生が4割おり、うち約7割が「量産型」であることに「とても満足している」または「やや満足している」と答えた。満足している理由として最も多かったのが「自分の好きな服装ができているから」(50.9%)だったため、「量産型ファッション」はひとつの選択として受け入れられていることがうかがえる。
「量産型大学生」とは
女子大学生と同様、没個性的な服装をした男子大学生は「量産型大学生」と呼ばれることがある。「量産型大学生」は、安価でそろえられ、周囲から浮きづらいと思われる、以下のようなメンズファッションアイテムを身につけるとイメージされている。
- チェスターコート(背広を伸ばした形状のコート)
- 黒スキニー(脚にぴったりフィットするシルエットのズボン)
「量産型大学生」が生まれる理由は、ファッションへの無関心ではないと思われる。関東・関西・東海圏の高校生・大学生・20代社会人の男女3,000人を対象に株式会社電通が行なった「若者まるわかり調査2015」では、「今しかできないと思う趣味・好きなこと」の項目に対し、男子大学生の10.3%が「ファッション」と回答した。これは、「アニメ」(10.6%)に次いで2番目に大きい割合である。
さらに、電通若者研究部は2015年、大学生から「服装も髪形も、ちゃんと気にはしてます、必要だと思うし、身だしなみというか、当然というか。基本嫌われたくないんです(笑)」との言葉を得ていた。これらのことから、男子大学生が「感じの良い」服装を選択した結果、「量産型」のファッションができあがってしまった側面があると電通若者研究部は考察している。
コトバンク|量産型女子大生
渡辺明日香(2018), 「量産型ファッションの実態調査を基にした若者のファッション意識」, 共立女子短期大学生活科学科紀要, Vol. 61, pp. 1-14.
徳田真帆(2010), 「ジャニーズファンの思考」, くにたち人類学会, Vol. 5, pp. 21-46.
PR TIMES|フリマアプリ「ラクマ」、急成長するカテゴリーの要因をひも解くため、女子高校生の意識調査を実施
SHIBUYA109 lab.|SHIBUYA109 lab.×CCCマーケティング共同調査
今川真治(2018), 「女子大学生の量産型ファッションに対する意識と態度」, 広島大学大学院教育学研究科紀要, Vol. 67, pp. 279-287.
電通報|“正解”を着こなすイマドキ男子のファッション事情
電通ウェブサイト|電通総研「若者まるわかり調査 2015」を実施
EDWIN公式サイト|ハタラクロ
CamCam.jp|「チェスターコート」ってどんなコート?【意外と知らないファッション用語】
YouTube|量産型ジャニオタの参戦服を調査してみたら可愛すぎたwwww
村瀬裕一
早稲田大学大学院先進理工学研究科所属。松本深志高校出身。日々、細胞の微小管について研究をしている。趣味はゲーム・カメラ・旅行など。