思考は現実化するからこそ「無理だ」と思うなかれ。“使う言葉” を変えれば人生はうまくいく

星渉さんインタビュー「『思考は現実化する』が脳科学的に正しい理由」01

新しいことに挑戦しようとしても、つい「自分には無理なんじゃないか」「失敗したらどうしよう」などと感じて思いきった行動を起こせない……そんな悩みを持っている人はいませんか? なかには「自分はメンタルが弱いのではないか……」と落ち込んでしまう人もいるかもしれませんね。

そこで、ベストセラー『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』『神トーーク 「伝え方しだい」で人生は思い通り』(ともにKADOKAWA)の著者で、作家・ビジネスコンサルタントの星渉(ほし・わたる)さんに、メンタルが持つパワー科学的メカニズム、そしてメンタルを高めて人生をポジティブに変化させていく方法を聞きました。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/辻本圭介 写真/塚原孝顕

星渉さんインタビュー「『思考は現実化する』が脳科学的に正しい理由」02

「思考は現実化する」が脳科学的に正しい理由

「思考は現実化する」という言葉を聞いたことがある人は少なくないはず。このメカニズムの説明として多くの方が実感できるものに、「カラーバス効果」が挙げられます。カラーバス効果とは、たとえば、自分のまわりにある「赤いもの」を5秒間で探せと言われたとき、そこにほかの色があったとしても、その5秒間はほぼ「赤いもの」しか目に入らなくなる現象のことです。

人間の脳は、五感を通じて1秒間に約2,000個の情報を感知しますが、認識できるのは8〜16個とされています。つまり、人間の脳は「見たいものしか見ない」わけです。そのため、「思考は現実化する」は、「頭で思っているものを見るようになる」「思い始めたから目につくようになる」というのが正確な表現とも言えるでしょう。

いま、あなたが起業を考えているとします。すると偶然にも、友だちのお兄さんが起業しているという情報が耳に入ってきた。でもそれは、あなた自身が起業を意識し始めたために、起業に関連する言葉を脳が拾うようになっただけに過ぎません。じつは、過去にもその話を聞いたことがあったのに、そのときは脳が重要な情報だと認識していなかったのでしょう。でも、起業を考えているいまは、それに関連する情報にとても敏感になっている。そうしていくうちに、起業した人と交流する機会などが得られ、いつしか結果として「思考が現実化」するのです。

要するに、チャンスや機会は世の中にあふれているということ。それが「見えていないだけ」なのです。だからこそ、まずは自分自身の「メンタル」を整えることが大切。必要な情報を拾ってきちんと実行できる「メンタル」がなければ、先の例のように「赤いもの」しか目に入らず、せっかくのいいチャンスを逃すことになりかねません。

星渉さんインタビュー「『思考は現実化する』が脳科学的に正しい理由」03

チャンスをものにできるかどうかは「メンタル」にかかっている

「メンタル」を、わかりやすく「自己評価」という言葉に置き換えましょう。

あなたが「なにかを成し遂げたい」と思っているとします。でも、同時に「私はみんなに好かれていない」という「自己評価」を持っていたら、いざやってきたチャンスを「私を陥れる罠」だと思うかもしれません。同じ出来事でも、「自己評価」によって捉え方がまったく変わるわけです。つまり、チャンスをものにできるかどうかは、それを「どう捉えるか」にかかっていて、そのベースとなるのが「自己評価」なのです。

かつてアメリカで、メンタルローテーション(※)に関する興味深い実験が行なわれました。これは一般的に男性のほうが得意とされているもので、実際の実験でも、男女の大学生に「男性のほうが得意なテストです」と伝え、解答用紙には性別も書かせました。すると、女子学生の正答率が、なんと男子学生の正答率に対して64%という結果になったそうです。これが意味するのは、女性は性別を書いた瞬間に「苦手」という自己評価をしたということ。

次に、2回目の実験では所属大学を書かせました。すると、彼らはエリート学生だったので、自己評価がポジティブに変わり、女子学生の正答率も男子学生の8割以上まで上がったのです。自分に対して持つ思い込みによって、パフォーマンスが変わることが証明されたのでした。

はなから「私なんか無理だ」と思っていたら、結局は低いパフォーマンスになり、それに見合った努力しかしなくなる。でも、たとえば勉強で「私は絶対にこの試験に受かる」と思っていたらどうでしょうか? 「試験に行く人はどんな勉強をするだろう?」と自然に考えるようになり、努力の量が変わります。

ここで言いたいのは、「自分のことをどう思っているか」ということ。これが、望む結果を出すうえでとても大切な要素なのです。

※メンタルローテーション:頭のなかで2次元または3次元の物体を回転させ、その物体を認識する能力

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悪い思い込みを捨てて行動できるようになるセルフトーク術

思い込みや「自己評価」のパワーは、科学的には「感情のメカニズム」として説明できます。

人間の感情というのは、「ワード→ピクチャ→エモーション」の順番で生じています。たとえば、口に出して「つらい」と発すれば、人の頭のなかには「つらい」に付随した映像が現れます。言葉には必ず個別の映像が付随しており、その映像を見て感情が生まれるのです。

そもそも、人間という生き物が1日のなかで一番話している相手は、ほかでもない自分自身です。「暑いな」「急がなきゃ」というように、誰よりも自分と会話をしていて、そんな独り言にも「ワード→ピクチャ→エモーション」のメカニズムが働いています。

すると、仮に「今度の試験には受からないかも……」という言葉を使っていたらどうなるでしょうか? おそらくは落ち込んでいる映像が頭のなかに出てきて、ますます「落ちるかも」という気持ちになるはず。逆に、「私は合格した!」という言葉を使っていれば、まわりから祝福されている映像が浮かんできて、気持ちいい感情を味わいながら、行動(勉強)に移りやすくなります

つまるところ、「自己評価」とは、自分に対してどんなセルフトークをしているか。これが「アファメーション」(※)とも呼ばれる、自己言及のメカニズムです。肯定的な言葉を何度も自分に話すことによって、ふだん頭のなかに見えている映像を変えていく。そして、映像が変わると感情も変わるので、無理だと思っていたことにも「やってみようかな」と挑戦しやすくなるのです。

ちなみに、このセルフトークは「鏡のなかの自分」に話すとより効果的。なぜなら、脳は「鏡のなかの自分」を本質的に他者として認識するからです。他者から言われながら、かつ自分でも自己承認していることになり、より効果が高まるでしょう。

※アファメーション:自分自身に肯定的な言葉で宣言することで、感情や思考をコントロールする手法

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目標は忘れないように「完了形」で紙に書く

みなさんのなかには、目標を紙に書く方もいると思います。これも理にかなった方法で、なにより目標を「忘れない」という効果は計り知れません。

いま自分がなにを目指し、どんな自己評価を持つべきなのか。多くの人は、それを忘れてしまうために実現できません。たとえば、勉強中に友だちから遊びに誘われても、「絶対に次の試験で合格する」と心の底から思っている人は、遊びには行きませんよね。でも、「ちょっとくらいいいか」と思ってしまう人は、感情に隙間がある。

このような誘惑を止めるいい方法が、視覚映像を活用すること。たとえば、スマートフォンに遊びの誘いが入ってきても、眼の前に「絶対に次の試験に合格している」と紙に書いて貼ってあれば、「遊びに行ってはだめだ」と思い直すことができます。人間は情報処理の87%を視覚で処理しているため、視覚に訴えるのがなにより強力です。でも、紙に書いていなければ、視覚情報はスマートフォンの画面だけになり、「行ったら楽しそう」という気持ちへと揺らいでしまう……。感情はあくまで「ワード→ピクチャ→エモーション」で動くので、ある映像を克服するには、別の映像で感情を上書きするしかないのです。

2012年のロンドン・オリンピックで金メダルを取ったボクシングの村田諒太選手は、自宅の冷蔵庫に、「ロンドン・オリンピックで金メダルを取ることができました、応援ありがとうございました。」という紙を貼り、毎日眺めていたそう。このことが示すように、目標を「完了形」で書くのも大切です。なぜなら、「〜したい」と書くと、脳は「まだしていない」と認識してしまうから。でも、目標を完了形で見続けていると、「〜した自分ならどうするだろう?」と自然に考えるようになります。自らの言葉を変えることから、すべてが始まるのです。

星渉さんインタビュー「『思考は現実化する』が脳科学的に正しい理由」06

【星渉さん ほかのインタビュー記事はこちら】
負の感情を「消そうとする」のは間違い。やっぱり「紙に書き出す」が最強だった
「話を聞いてもらえず」「人を動かせない」人の残念すぎる特徴。“いつも否定ばかり” は圧倒的に損だ

【プロフィール】
星渉(ほし・わたる)
1983年生まれ、宮城県出身。株式会社Rising Star代表取締役。大手企業で働いていたが、東日本大震災を岩手県で被災。生死を問われる経験を経て「もう自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め2011年に独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学びはじめる。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」を中心に置いた独自のビジネス手法を構築。わずか5年間で、講演会、勉強会には7200人以上が参加し、手がけたビジネスプロデュース事例、育成した起業家は623人にのぼる。ゼロの状態から起業する経営者の月収を、半年以内に最低100万円以上にする成功確率は、日本ナンバーワンの91.3%。数千人規模の講演会を実施し、海外でも大規模なイベントを行うなど、グローバルに「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」ための活動をしている。著書には、『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』『神トーーク 「伝え方しだい」で人生は思い通り』(ともにKADOKAWA)などがある。

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