ゆでガエルの法則とは? 5年後まで生き残る3つの方法

ゆでガエルの法則とは1

「ゆでガエルの法則」とは、「状況の変化がゆるやかだと、迫りくる危機になかなか気づけない」ことを表す寓話(ぐうわ)。カエルが入っている冷たい水を火にかけ、水温を徐々に上げていくと、カエルは温度変化に気づかず逃げ出さないため、最後は熱湯でゆで上がって死んでしまう……という内容です。

この「ゆでガエル」の話は、個人や組織が陥りやすい失敗を的確に表現しています。人間は、基本的に現状維持を好み、環境変化を望まないもの。状況は刻々と変化しているにもかかわらず、「まだ大丈夫だろう」「もう少しいけるだろう」と「ぬるま湯気分」でいるうち、対応できなくなるほどに問題が悪化してしまうのです。

今回は、「ゆでガエル」がどのような状態なのを知り、「ゆでガエル現象」を避ける方法を学んでいきましょう。

「ゆでガエルの法則」とは

「ゆでガエルの法則」を、自分自身に当てはめて考えてみましょう。

全くの新人でもないかぎり、あなたはビジネスパーソンとして、ある程度は業務に必要なスキルを習得したり、仕事のスタイルを確立したりしているはず。仕事のスキルやスタイルをいったん身につけると、「本当にこのやり方は正しいのか」「もっといい方法はないのか」と疑うことは、あまりないのではありませんか?

しかし、社会の状況やテクノロジーは、変化・成長を続けています。変わらないままの人は置いていかれてしまうのです。

社会学者の鈴木謙介・准教授(関西学院大学)は2019年、本サイトのインタビューにおいて以下のように語りました。

これまでの日本社会や組織では、ある時期に覚えた知識やスキルがずっと通用したり、所属する組織のルールや社風に最適化したりすることが、出世コースのひとつのモデルとなり得ました。しかし、こうしたモデルは今後通用しなくなり、なにかしらの「学び直し」を続ける必要が出てきます。

(引用元:StudyHacker|週 “数千件” の情報収集を20年「学び続けることは最高の自己投資になる」

スキルは、「一度覚えたら一生使える」というものではありません。時代の変化に合わせて自分のスキルをどんどんバージョンアップしていかなければ、「ゆでガエル」状態に陥り、数年後の社会では通用しなくなってしまう恐れがあります。

関連して、「ゆでガエル世代」という言葉もあります。2016年、経済誌『日経ビジネス』が、1957~66年生まれを「ゆでガエル世代」と命名したのです。

同誌は「ゆでガエル世代」について、バブル崩壊やリーマンショックといった数々の危機を経験しても「このまま安泰に会社員生活を終えられる」と現実から目を背けつづけた、と解釈。55歳前後で管理職から追われる「役職定年制度」と、役職によって報酬が決まる「職務等級制度」の導入により、多くの50代男性が「こんなはずじゃなかった」と感じている、という説が唱えられました。

さらに、「ゆでガエル現象」を起こしかねないのは、個人だけではありません。個別の企業はもちろん、「日本経済」や「日本そのもの」という大きなスケールの話でも、「ゆでガエル」という言葉が使われています。『東洋経済』で日本経済を担当する記者の野村明弘氏は、2018年、政府の財政健全化の取り組みが不十分であり、国民の危機感も薄まっているとして、「ゆでガエル」「ぬるま湯」という言葉を用いました。

このように、「ゆでガエルの法則」は、現状維持に甘んじるべきではないと主張する際によく使われています。とはいえ、「水温を徐々に上げていくとカエルは気づかない」というのは、あくまでたとえ話。生物学者でオクラホマ大学名誉教授のヴィクター・ハッチソン氏によると、実験では、水温が上がっていくにつれてカエルの暴れ方が激しくなっていったそうです。

事実と異なるとしても、「ゆでガエルの法則」は優れた比喩です。自分への警句として、「ゆでガエルの法則」を覚えておきましょう。

ゆでガエルの法則とは2

「ゆでガエル現象」を避けるには

「ゆでガエル現象」に陥らないよう、私たちビジネスパーソンは何に気をつけるべきなのでしょうか? 大前提は、自分や周囲を常に客観的な視点で見ることです。

「今、水温は何度なのか?」「自分はこのまま水の中にいるべきなのか?」と客観的にカエルが考えていたなら、水が熱くなる前に脱出できたはず。私たちも「今、時代はどう変化しているのか?」「自分はこれからどうするべきなのか?」と常に現状を正確に把握しておくことで、「ゆでガエル」になるのを防げます。

客観的に自分を見るための方法を3つご紹介しましょう。

自問自答する

自分の現状を理解するための方法として、経営コンサルタントの広瀬一郎氏は、以下の4つ(5つ)の問いを挙げています。

  • 自分の組織は何のために存在するのか?
  • その目的を現在の組織は十分に果たせているのか?
  • 組織における自分の役割は何か?
  • 自分に欠けているものは何か? どうすればその欠落を埋められるか?

はじめの2つの質問で、会社やチームなど、自分が所属する組織の目的と現状を確認します。そして、後半の2つ(3つ)の質問をとおし、自分が求められている役割や、今の自分に欠けているものを考えていくのです。「全体→個人」という順番で考えることで、高い視座から自分を客観視できます。

たとえば、「家電メーカーの企画開発職」なら、以下のように自己分析できるでしょう。

  • 自分の組織は何のために存在するのか?
    →便利な家電を提供し、消費者の暮らしを豊かにするため
  • その目的を現在の組織は十分に果たせているのか?
    →現代のニーズを満たすような、斬新な製品が足りない
  • 組織における自分の役割は何か?
    →消費者に求められるような、便利な家電を開発すること。
  • 自分に欠けているものは何か? どうすればその欠落を埋められるか?
    世の中の人はどんな家電を求めているのか、わからない部分が多い。今後は、自宅で自社の製品を実際に使ってみたり、家事に積極的に取り組んだりすることで、消費者のニーズを探ることを課題とする。

最も重要な質問は「どうすればその欠落を埋められるか」です。答えが出たら、ぜひ実行してください。

一人の時間をもつ

一人の時間をもつことも、現状を客観的に捉えるために必要です。「朝活手帳」で知られるコンサルタントの池田千恵氏によれば、一人きりの時間をつくると、組織から離れた「他人の目」で自分を見つめ直せるため、「ゆでガエル」状態を防止できるのだそう。

今の会社で「普通」とされているルール・文化のなかには、世間から「不合理」と捉えられるものが少なからずあるはず。しかし、会社を中心とした生活にどっぷり浸かっていると、その「おかしさ」に気づくことは困難です。

休日はいつも予定がビッシリで、冷静に自分を振り返る余裕がないという人は、少なくないはず。たまには、あえて一人で家にこもり、上で紹介した自問自答を試すなどし、自分と向き合ってみましょう。

仕事の優先順位を見直す

「自分の仕事の進め方は、これで正しいのかな?」という疑問について客観的に考えるには、仕事の「優先順位」がひとつの基準になります。池田氏によると、仕事の優先順位は、以下の2つで決まるそうです。

  • チームへの貢献度:そのタスクを行なうと、チームにどれくらい貢献できるか
  • 自分の担当度:そのタスクについて、どれくらい責任を負っているか

ゆでガエルを避けるために必要なこと。チームへの貢献度と自分の担当度を考慮し、タスクの優先度を判断する。

(画像は筆者が作成)

「チームへの貢献度」と「自分の担当度」の高/低によって、タスクを4通りに分類できます。たとえば、以下の2つのタスクを比べてみましょう。

  • チームのためになるが、自分の担当ではないタスク
    →貢献度:高/担当度:低
    優先度2
  • チームへの影響は少ないが、自分が担当しているタスク
    →貢献度:低/担当度:高
    優先度3

「貢献度」と「担当度」という尺度で考えると、「チームのためになるが、自分の担当ではないタスク」を優先してこなすべきだとわかります。優先度が高いタスクに多くの時間と労力を割き、優先度が低いタスクを手早く片づけることで、生産性や社内での評価を高められるはず。

「ゆでガエル」にならないよう、仕事のやり方を見直してみましょう。

***
「ゆでガエル」に陥ってしまう危険性は、誰もが等しくもっています。次の時代もビジネスパーソンとして通用できるよう、現状に甘んじず、常に自分を客観視するよう心がけましょう。

(参考)
Mike Dorcas and Whit Gibbons (2011), Frogs: The Animal Answer Guide, Baltimore, Johns Hopkins University Press.
広瀬一郎(2015),『自分の考えに自信が持てる本』, かんき出版.
池田千恵(2011),『「ひとり時間」で、すべてがうまく回りだす!』, マガジンハウス.
StudyHacker|週 “数千件” の情報収集を20年「学び続けることは最高の自己投資になる」
日経ビジネス電子版|特集 どうした50代! 君たちはゆでガエルだ
日経ビジネス電子版|悪いのは自分か それとも会社か
東洋経済オンライン|財政の「ゆでガエル状態」は、どれだけ危険か

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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