自信をもてるのは「完璧主義を捨てられる人」。9つのフレーズで自分の限界を認める勇気を

大仲千華さんインタビュー「自信につながる9つのフレーズ」01

謙虚であることがいいことだとされる傾向が強い日本社会では、その影響によるものか、「自分に自信がない人」も多いかもしれません。実際、大仲千華(おおなか・ちか)さんは、国連職員として海外各地で活躍していたときでさえもそう感じることがあったと言います。

でも、ビジネスパーソンなら、自分に自信がもてないばかりに仕事の大きなチャンスを逃してしまうということも考えられます。では、どうすれば「自信をもつこと」ができるのでしょうか。大仲さんは「9つのフレーズ」を使って、「自分の限界を認める」ことをすすめます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 大仲さん写真/石塚雅人

日本人の多くは完璧主義ゆえに自信をもてない

国連職員としてさまざまな国の人たちと接してきた経験から、「日本人には自信がない人が多い」というふうに私は感じています。その要因のひとつは、「日本人には完璧主義の人が多い」ということにあるように思います。

完璧なんて、世の中にはありえません。それなのに、完璧主義の人はそのありもしない完璧を求めてしまう。そうして、「自分にはこういう力が足りない……」「またこんなミスをしてしまった……」というふうに、たとえできることやできたことが10のうち9つあっても、ひとつのできないことやできなかったことに目を向けてしまい、自信を失ってしまうのです。

日本人における完璧主義の傾向の強さは、実際に数字にも表れています。オランダの社会学者であるヘールト・ホフステード博士が世界66カ国の11万6,000人を対象に行なった調査があります。その調査で示されたものに、完璧主義という言い方ではありませんが、成果主義の傾向の強弱を示すものがあります。

これは、「なんらかの成果を挙げられなければ、すべては無駄だ」と考える傾向の強弱を示す指標です。プロセスや生活の質、寛容さよりも、「強い者」「秀でた者」が支持される社会、欠点の修正を求める社会の傾向とも言えます。その成果主義の傾向の強弱を示す指標において、日本人の数値は世界66カ国中トップの強さを示しています。日本では、成果主義と完璧主義が相まって私たちの考え方や自信に影響を与えているのだと推測します。

大仲千華さんインタビュー「自信につながる9つのフレーズ」02

「減点法」の日本の教育が完璧主義を強めている要因

日本人に完璧主義の人が多い要因には、日本の教育が基本的に「減点法」ということもあるのでしょう。日本の学校のテストでは、まず100点満点が決まっていて、ミスをするごとに減点されていきます。それゆえに、「完璧でなければならない」というふうに日本人は考えるようになっていくのではないでしょうか。

私は日本の大学でも講義をしていますが、教壇に立っていても、日本の学生の完璧主義の強さやそれゆえの自信のなさを感じます。私は大学で英語のスピーチの授業を担当しています。学生たちのほとんどは、完璧に英語でスピーチをすることなどできませんから、最初はそれこそ自信なさそうにしていますし、まともに話すことなどできません。

ただ、ほんのひとことで変わるケースも見てきました。そのひとこととは、「この授業の課題には正解も間違いもありません。スピーチの内容が正しかったかどうかで評価することはありません」という言葉です。授業に取り組む姿勢などは成績に影響を及ぼします。同時に、答えはひとつではないこと、体験から自分が学んだことの意義を自分の言葉で伝えることに重点を置くこと、誰でも根源的に価値があることを繰り返し伝えます。それによって「正解や間違いはないんだ。なにをしゃべってもいいんだ!」というふうに認識すると、学生たちは、それこそ自信をもって生き生きと英語でスピーチをするようになっていきます。

大仲千華さんインタビュー「自信につながる9つのフレーズ」03

自分の限界を認めた先にあるのは成長だけ

この学生たちの例にも表れているように、私たちはあるひとつのマインドの変換で自信を得ることができます。そのマインドの変換とは、「答えはひとつではないこと。人の根源的な価値は、試験といったあるひとつの限定的な評価基準よりも計り知れないくらいに豊かで多様で、試験によりその根源的な価値が左右されることはない」という確証に立つことです。

この確証によって、人は「守りの姿勢」である完璧主義を解きやすくなるので、よりリラックスしたオープンな姿勢をもつことができます。

完璧主義に陥っている人は、「ひとりでなんでもできないといけない」「なんでも知っていなければならない」といった思考にとらわれています。だからこそ、できない、知らない自分を許せずに自信を失ってしまう。場合によっては、「完璧にできないからやらない」ことを選びがちです。その思考がなにかをもたらしてくれることはありません。

でも、「ひとりでなんでもかんでもできる必要はないし、わからなければ人に聞けばいい」と自分の限界を認めてみたらどうでしょうか? 「このことについてまだ自分はなにも知らない」「はじめての分野だからゼロからの出発」と考えると、「だったら、誰かに教えてもらおう!」「この先にあるのは成長だけだ!」というふうにポジティブに考えられるはずです。

現時点の自分をゼロからの新しい出発と考えれば、たとえその次の一歩が1にも満たない0.2とか0.5だったとしても、それはたしかな成長です。そこにはすがすがしい達成感があり、ゆっくりであっても確実に成長していることを自覚できる。そうして、自信を得ることができるのです。

そのように自分の限界を認め、結果的に自信を得ていくために有効なフレーズがあると私は考えています。

大仲千華さんインタビュー「自信につながる9つのフレーズ」04

これらの言葉は、完璧でありたい自分を手放すこと、そして、失敗ではなく成長に対して寛容にオープンに目を向けることを助けてくれます。

これらを日常的に使ってみてください。きっと、自身の大きな成長と、自分のなかに湧き上がる自信を感じることができるはずです。完璧主義にとらわれ、知ったかぶりをしたりまわりの援助を拒否したりすることほど自分にとって損なことはありません。自分に自信がないのだったら、それを逆手にとって素直にまわりを頼ればいい。そうできる人こそが、成長し、自信を得ることができるのです。

大仲千華さんインタビュー「自信につながる9つのフレーズ」05

【大仲千華さん ほかのインタビュー記事はこちら】
オックスフォード式「思考の3ステップ」。“答えがないこと” はこうして考える
勉強と学びはどう違う? 社会人に必要なのは「勉強マインド」から「学びマインド」へのシフト

 

【プロフィール】
大仲千華(おおなか・ちか)
国連の行政官(社会統合支援担当)として国連ニューヨーク本部、南スーダン等で和平合意の履行支援、元兵士の社会統合支援に約10年従事。80人強の多国籍チームのリーダーを務める。閣僚経験者も任命される政府要員向け国連PKO国際研修の教官。日本国・内閣府「平和維持・平和構築に関する研究会」委員。コーチングのプロとして自分の軸で生きる大切さを伝え、大学での講義を通じて次世代の育成にも注力している。オックスフォード大学修士課程修了。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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